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動作介助の仕方 10~車いすの操作・介助・シーティング~
今回は、「車いすの操作・介助・シーティング」について紹介します。
では、基本的な車いすの操作方法について説明していきます。まずは段差と坂道の介助方法についてです。
- 段差を降りる
- 上り坂
車いすの後ろから少し体を前に倒すようにしてグリップを押す。
- 下り坂
下り坂では後ろ向きにゆっくりと下る。
※急な下り坂ではブレーキを軽くかけながら下りる。
次に、姿勢を整える際の介助方法について述べていきます。
下記のように、おしりが前にずれて、車いすに浅く座ってしまう事があります。正しい姿勢に座り直す際の介助方法について説明します。
- 一人で介助
- 対象者に腕を組んでもらい、介助者が後ろから両腕を握る。
- 介助者の方に引き寄せるようにしておしりの位置を直す。
- 二人で介助
- 対象者に腕を組んでもらい、後方介助者は後ろから両腕を握る。前方介助者は対象者の太ももを抱える。
- 後方介助者は上体を持ち上げ、前方介助者が太ももを持ち上げおしりの位置を直す。
次は、シーティングについて紹介して行きます。
- シーティングとは?
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シーティングとは、対象者の体にあうよう車いすを適合調整する事をいいます。
?シーティングがなぜ必要か?
車いすが適合していないと写真(下記図)のようにおしりが滑ったり、体が倒れてきます。そのほかにも
- 一定の場所に強い圧力が生じると、痛みや床ずれの原因になる
- 長時間乗り続けていると肩や腰にも障害がおこりやすくなる
- 悪い姿勢を助長し、変形を強めやすくなる
などがあります。
※対象者の体に合わせて調整できる車椅子もありますが、調整不能な車いすの場合でも、工夫により調整することは可能です。
では、片マヒを例にあげてシーティングの方法を紹介します。
- 調整前
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調整前の写真を見ると、車いすの左右の背もたれ部分に空きスペースがあり、体が傾きやすくなります。この場合、体の傾きを直して滑り座りを直します。
今回は、タオルやクッションを用いた調整方法を紹介します。
- ●使用したもの●
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- 円柱状にしたタオルを背もたれに固定し、体が傾かないようにサポートする。
- 三角形のクッションを座面の前方に固定し、おしりのずれを予防する。
- 調整後
このように調整することで、骨盤も安定し、体の傾きを直す事が出来ます。
車いすの問題は殆どが座面と背もたれの不適合により発生します。原因はたくさんありますが、工夫により解決する場合と車いすの変更が必要になる場合があります。解決が難しい場合はリハビリスタッフや車いす業者等に相談される事をお勧めします。
以上で、今回のリハビリテーション講座を終わります。
次回は、~ADLとは~について紹介して行きます。
(参考・引用文献)
- 木村哲彦:イラストによる安全な動作介助の手引き.医歯薬出版,2001,p95-97. (社)日本理学療法士協会編:家庭でできるリハビリテーション.アイペック,2001,p52-55.58.59
- 野尻晋一:リハビリテーションからみた介護技術.中央法規出版株式会社,2006,p181.101-105