高齢者の身体的特徴
さて第3回となりました今回は、「高齢者の身体的特性」について、以下の内容で皆様と一緒に勉強してみたいと思います。
- 1.脳の細胞
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成人150億
20歳以降10万/日減少・50歳以降20万/日減少
- 2.知的能力
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50歳で最高
80歳でも創造力・洞察力・計画性は維持
推理・判断・創造力は低下。ものにこだわりやすくなる
- 3.記 憶
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60歳代で20歳代の記憶力の1/3
ただし、昔の記憶は良く覚えている
- 4.前頭葉
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全体的に脳血流は低下。前頭葉にて著明
- 5.視 覚
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動体視力:60歳以上で0.6~0.1(成人:0.7~0.8)
コントラスト認識:約30%低下
暗順応:60歳以後低下。白内障は60歳で60%。
- 6.聴 力
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75歳を過ぎると多くの人が聴力の不自由を意識
75~80歳で大半の人が生活上不自由となる
高温が聞こえず、聞こえても言葉が不明瞭
- 7.感 覚
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手足等の皮膚表面の感覚を感じる部分の機能低下
伝達路や脳の中の感覚を判断する部分の機能低下
- 8.平衡性
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閉眼片足立ちの時間:65歳で20歳代の約1/4
70歳代後半からさらに低下
- 9.筋 力
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30歳代より低下し、握力は70歳で20歳代の約3/4
- 10.循環器系
心拍出量:軽作業で最大。若年者に比べ20~30%低下
- 11.呼吸器系
呼吸筋の筋力低下:70歳で最盛期の40%低下
- 12.尿路系
前立腺肥大は70歳で100%
- 13.水 分
老年者は細胞数が減少する分、水分も減少
外傷・火傷・褥瘡などにより細胞内の水分も動員されショックを起こしやすくなる
- 14.心身の不一致
自分が体得した最高の能力を意識して行動しているが現実には身体的に機能が低下しており、生活場面では心と体が一致しない状態で、事故につながる可能性大
- 15.身体構成成分の変化
① 脂肪以外の身体構成成分の減少
② 身体構成成分の脂肪の比率増
③ 血漿アルブミン量の減少
- 16.心血管系
① 心:心拍出量低下、ストレスに対する反応の低下
② 循環:動脈硬化による血管弾性の低下、血管壁肥厚、末梢血管抵抗の増加、腎・肝・脳・筋肉の血流減少
- 17.腎機能
① 機能的ネフロンの減少
② 糸球体濾過率および腎血流量の減少
③ 血清クレアチニン不変、クレアチニン・クリアランス低下
- 18.消化器系
① 唾液、胃液の分泌低下
② 消化管の蠕動運動低下、便秘の増加
- 19.呼吸器系
① 機能的残器量、死腔の増加、肺弾性力の低下
② 気管:気管支繊毛の数の減少、運動の低下
- 20.内分泌系
① 性ホルモン分泌量の減少
② ゴナドトピン、膵性ポリペプチドの増加
③ 甲状腺刺激ホルモン、コルチゾールに対する反応性低下
- 21.免疫系
① 細胞免疫・体液性免疫ともに低下
② 体内異物の排除処理能力低下
③ 自己抗体の形成の増加
以上で今回のリハビリテーション講座は終わりです。
次回は、『リスク管理・二次的合併症の予防や治療』を予定しております。
(参考・引用文献)
- 1)星文彦:「高齢者の加齢変化と転倒要因」,PTジャーナル36:307-314,2002