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リハビリテーションの考え方・専門職の役割と活動の実際
今回より始まりましたリハビリテーション講座では、知っているようで知らないリハビリテーションについて、皆さんと一緒に勉強していきたいと思います。
今回は、リハビリテーションの考え方と専門職の役割、活動の内容について簡単に紹介したいと思います。
Ⅰ.リハビリテーションとは?
- 1.Rehabilitation(リハビリテーション)?
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言葉の意味は、中世ヨーロッパでは『教会からの破門の取り消し』、近世では『人間回復・社会復帰・人権回復』という意味1)に変わり、現在では『全人間的復権』といったところでしょうか。
- 2.概念
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今まで、リハビリテーションと言えば「手すりを使って歩く練習をさせる」とか、「職場に復帰するための訓練」などのいわゆる『機能訓練』を思い浮かべる方が多いと思いますが、それだけがリハビリテーションの内容ではありません。
世界保健機構(WHO)によると、
リハビリテーションとは、能力障害あるいは社会的不利を起こす諸条件の悪影響を減少させ、障害者の社会統合を実現することを目指すあらゆる手段を含むものである。リハビリテーションは障害者を訓練してその環境に適応させるだけでなく、障害者の直接的環境および社会全体に介入して社会統合を容易にすることを目的とする。障害者自身、その家族、そして彼らが住む地域社会は、リハビリテーションに関係する諸種のサービスの計画と実施に関与しなければならない。
(1981年 世界保健機構より)
と定義されています。
このことからもわかるように、病院の中だけでの『医学的リハビリテーション』だけではなく、職業訓練等の『職業リハビリテーション』、心身障害児の療育等の『教育的リハビリテーション』、障害者に適した町づくり等の『社会的リハビリテーション』などがあります1)。
- 3.リハビリテーションの諸領域
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リハビリテーションの諸領域は以下のものがあります1)
1)医学的リハビリテーション
①患者の心身機能の向上と維持を目的としている
②疾病の治療と並行して、機能障害の回復、能力低下の予防と再獲得を促す。 -
2)職業リハビリテーション
①障害のために職を失ったものが再び職を得ることを援助。
②職業能力の評価、職業指導、職業訓練、職業斡旋、保護雇用、追跡指導など。 -
3)教育的リハビリテーション
①心身に障害のある児童に対して知的教育、人間全体の総合教育を行う。
②自立活動、職業指導など。 -
4)社会的リハビリテーション
①医学的・職業的・教育的リハビリテーションの全過程が円滑に進むように経済的、
社会的条件を調整するためのサービスである。
②更生施設・生活施設などの整備、障害者に適した町づくり、
障害者の生活を援助する制度の確立、地域社会における障害者に対する支援の促進。
- 4.リハビリテーションの対応
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リハビリテーションの対応としては以下のもの1)があります
1)障害予防
廃用症候群(筋萎縮・関節が硬くなる拘縮等)・誤用症候群(杖や装具の不適切な使用による炎症等)・過用症候群(筋肉痛・関節炎等)の予防 -
2)機能再建・強化
機能回復治療(筋力強化・バランストレーニング等)・物理療法(温熱療法・電気治療等)・神経生理学的アプローチ(PNF等) -
3)機能代償
利き手交換、ジェスチャーや絵カードによる意思交流、 義肢・装具、車椅子、自助具 -
4)障害受容
インフォームドコンセント・情報提供・価値観の転換 、仲間との交流・視野の拡大・自己実現・QOL(生活の質)向上 -
5)環境整備
福祉用具・福祉機器・住宅改修・住宅改造、コンピュータ環境制御システム 6)社会支援システム(福祉)
Ⅱ.リハビリテーションチームにおける専門職の役割
- 1.リハビリテーションチームの構成
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リハビリテーションチームの構成は以下とおりです。
リハビリテーションの内容は、障害者の社会統合を実現することを目指すあらゆる手段を含むものであるため『チーム医療』は欠かせません。
今回は、リハビリテーションチームの中でも、リハビリテーション医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の紹介をさせて頂きます。
- 2.専門職の役割
専門職の役割は以下とおりです。
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リハビリテーション専門医
①医学的な診断、治療、評価、予後予測
②各専門職チームのまとめを行い、リハチームのリーダ -
作業療法士
①日常生活動作(食事、排泄、入浴等)や応用動作(家事、買い物、車の運転等)能力、職業能力などの測定と評価
②日常生活動作の治療から職業前トレーニング、家事動作トレーニング
③片麻痺患者の利き手交換や上肢切断者の義肢治療
④家屋環境を評価し、家屋の改造に関する指導 -
理学療法士
①関節可動域、筋力、感覚、反射、姿勢、歩行などの運動・動作機能の測定と評価
②運動療法や物理療法を用いた機能治療を行い動作能力の回復をはかる
③基本動作(寝返る・起き上がる・立つ・歩く等)の治療・日常生活動作(食事、排泄、入浴等)の治療 -
言語聴覚士
①音声言語機能・聴覚障害者や嚥下障害等の評価、治療
②障害者の家族に対する援助や指導
③言語的あるいは非言語的(ジェスチャー・文字盤等)コミュニケーションの指導
以上で今回のリハビリテーション講座は終わりです。
次回は、『脳卒中の臨床症状と障害像』を予定しております。
(参考・引用文献)
- 鹿児島大学医学部リハビリテーション医学講座鹿児島大学医学部付属病院霧島リハビリテーションセンター編集:「あなたにも出来る老人のケアとリハビリテーション」,2000.4