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抗悪性腫瘍薬~各論②~

前回紹介した「抗悪性腫瘍薬~序論~」の2.抗がん剤の種類の中から、今回は ④抗がん性抗生物質 ④微小管阻害薬 ④トポイソメラーゼ阻害薬 について詳しく紹介します。

1.抗がん性抗生物質

抗がん性抗生物質とは、微生物によって産生される化学物質をもとに合成された薬剤であり、がん細胞の細胞膜を破壊したり、DNAやRNAの合成を阻害することで抗腫瘍効果を示します。細胞周期のG2期に作用し、濃度依存性です。アントラサイクリン系とそれ以外に分類されます。

○アントラサイクリン系薬
DNAを合成する際に働く、トポイソメラーゼⅡという酵素を阻害することで抗腫瘍効果を示します。注意すべき副作用として、骨髄抑制の他、うっ血性心不全や心筋梗塞などの心毒性がみられます。各薬剤の総投与量が心毒性の限界(500mg/㎡まで)を超えないよう注意が必要です。

表1.抗がん性構成物質

一般名 商品名 適応
ドキソルビシン アドリアシン® 悪性リンパ腫、肺がん、消化器がん、乳がん、膀胱がん、骨肉種、尿路上皮がん

※代表的な治療法
●悪性リンパ腫 : CHOP療法/ABVD療法/ACVBP療法
●乳がん : AC療法/ACF療法
●尿路上皮がん : M-VAC療法

※吐き気、嘔吐の発生頻度がシスプラチンに次いで高いです。

リポソーマルドキソルビシン ドキシル® エイズ関連カポシ肉腫、再発した卵巣がん

※2009年4月に「再発した卵巣がん」が追加適応として承認されました。

※リポソームという微小カプセルの中にドキソルビシンが閉じ込められた造りになっており、マクロファージに捕食されることなくがん細胞へ到達するため、作用時間が長く副作用も少ないです。ただし、ドキソルビシンの代わりとしては使用できません。

表2.抗がん性抗生物質(アントラサイクリン系2)

一般名 商品名 適応
ダウノルビシン ダウノマイシン® 急性白血病
ピラルビシン テラルビシン®
ビノルビン®
悪性リンパ腫、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、急性白血病、胃がん、尿路上皮がん
エピルビシン ファモルビシン®
ファモルビシンRTU®
エピルビシン塩酸塩®
急性白血病、悪性リンパ腫、乳がん、卵巣がん、胃がん、肝がん、尿路上皮がん

※ドキソルビシンと似た性質を持つため、ドキソルビシンに替えて用いられることが多くあります。ドキソルビシンより心毒性は弱いです。

※代表的な治療法
●乳がん : CEF療法/EC療法(CAF療法、AC療法のドキソルビシンエピルビシンに変えたもの)

イダルビシン イダマイシン® 急性骨髄性白血病
アクラルビシン アクラシノン® 急性白血病、悪性リンパ腫、胃がん、肺がん、乳がん、卵巣がん
アムルビシン カルセド® 非小細胞肺がん、小細胞肺がん

※完全合成で造られた医薬品です。

ミトキサトロン ノバントロン® 急性白血病、悪性リンパ腫、乳がん、肺がん
○その他の抗がん性抗生物質
マイトマイシンCは、アルキル化剤と同じようにDNAの分裂を阻止したり、活性酸素によりDNA鎖を切断します。また、ブレオマイシン、ベプロマイシンは、がん細胞の中で鉄と結びつき酸素を活性化させ、DNA鎖を切断します。抗腫瘍性抗生物質のなかでは唯一、時間依存性の薬剤です。他の抗がん剤と異なり、間質性肺炎や肺繊維症など肺障害が起こりやすいのが特徴です。また、ジノスタチンスチマラーは、肝動脈塞栓療法などの局所化学療法に使用されます。

表3.その他の抗がん性抗生物質1

一般名 商品名 適応
マイトマイシンC マイトマイシンC® 消化器がん、肺がん、子宮がん、乳がん など

※骨髄抑制が特におこりやすいです。

※代表的な治療法
●胃がん、膵がん : FAM療法/MFC療法

アクチノマイシンD コスメゲン® ウイルムス腫瘍、ユーイング肉腫、絨毛上皮がん、破壊性胞状奇胎

※小児の固形がん治療に欠かせない薬剤です。

※水痘、帯状疱疹の患者には使用できません。

ブレオマイシン ブレオ® 皮膚がん、頭頸部がん、肺がん、食道がん、悪性リンパ腫、子宮頸がん、神経膠腫、甲状腺がん、胚細胞腫がん

※他の抗がん剤にみられる骨髄抑制はあまりみられませんが、肺障害が起こりやすく注意が必要です。肺障害の症状として、呼吸困難や乾性咳嗽がみられます。

※代表的な治療法
●ホジキンリンパ腫 : ABDV療法 ●胚細胞腫瘍 : BEP療法

表4.その他の抗がん性抗生物質2

一般名 商品名 適応
ベプロマイシン ベプレオ® 皮膚がん、頭頸部がん、肺がん、前立腺がん、悪性リンパ腫

※ブレオマイシンの欠点である肺毒性を軽減した製剤です。しかし、胚毒性が起こらないわけではないため注意が必要です。

ジノスタチンスチマー スマンクス® 肝細胞がん

※冠動脈塞栓療法に適応を持つ薬剤は国内ではこの薬剤のみです。

※懸濁液がヨード化合物のため、ヨード系の薬剤を服用している患者には注意が必要です。

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2.微小管阻害薬

この薬は、強い毒性のある植物成分を応用して作られた抗がん剤です。微小管は細胞分裂の際に紡錘体を形成し、染色体に結合し、染色体の移動に関与しています。この微小管の働きを阻害することで抗腫瘍効果を示します。微小管阻害薬には、ビンカアルカロイドとタキサン系に分類されます。

○ビンカアルカロイド
キョウチクトウ科のニチニチソウに含まれる成分から合成された薬剤です。細胞周期のM期に作用し、時間依存性です。副作用としては、骨髄抑制の他、手足のしびれ、刺痛などの末梢神経障害が多く見られます。

表5.微小管阻害薬(ビンカアルカロイド)

一般名 商品名 適応
ビンクリスチン オンコビン® 白血病、悪性リンパ腫、小児腫瘍、多発性骨髄腫、悪性星細胞腫、神経膠腫

※特に小児がんでは最もよく使用されます。

※末梢神経障害の発現頻度が高いです。

ビンブラスチン エクザール® 悪性リンパ腫、絨毛性疾患、胚細胞腫瘍
ビンデシン フィルデシン® 急性白血病、悪性リンパ腫、肺がん、食道がん
ビノレルビン ナベルビンン® 非小細胞肺がん

※他の3つより、末梢神経障害が少ないです。

○タキサン系
イチイ属に含まれる成分から合成された薬剤です。細胞周期のG2~M期に作用し、時間依存性です。骨髄抑制や末梢神経障害などの副作用が見られます。

表6.微小管阻害薬(タキサン系)

一般名 商品名 適応
パクリタキセル タキソール®
※アブラキサン®
卵巣がん、乳がん、胃がん、非小細胞肺がん

※タキソール®は、溶媒のポリオキシエチレンヒマシ油による過敏性を防ぐため、ステロイドの前投薬が行われます。しかし、2010年7月に承認されたアブラキサン®は、アルブミンに主薬を結合した作りになっており、ポリオキシエチレンヒマシ油は含まれていないため、ステロイドの前投薬は不要です。

※タキソール®は、溶媒にアルコールを含んでいるため、車の運転は控えてください。

ドセタキセル タキソテール® 乳がん、非小細胞肺がん、胃がん、頭頸部がん、卵巣がん

※特徴的な副作用として浮腫があります。

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3.トポイソメラーゼ阻害薬

トポイソメラーゼとは、DNAの複製の際にDNAに一時的に切れ目を入れる酵素であり、トポイソメラーゼⅠは環状DNAの片方の鎖に切れ目を入れるのに対し、トポイソメラーゼⅡは環状DNAの両方の鎖に切れ目を入れます。細胞周期のS期~G2期に作用し、時間依存性です。

○トポイソメラーゼⅠ阻害薬
中国原産の喜樹から抽出されたビンカアルカロイドであるカンプトテシン類があります。注意すべき副作用として、骨髄抑制や高度の下痢があります。イリノテカンはプロドラッグであり、体内でSN38という物質に変換されて効果を発揮しますが、ノギテカンは代謝を経ずに効果を発揮します。

表7.トポイソメラーゼⅠ阻害薬

一般名 商品名 適応
イリノテカン トポテプシン®
カンプト®
肺がん、子宮頚がん、卵巣がん、胃がん、大腸がん、乳がん、悪性リンパ腫 など

※高度の下痢に注意が必要です。投与直後に現れる場合と日を置いて現れる場合があります。

※代表的な治療法
●大腸がん : FOLFILI療法
●胃がん、非小細胞肺がん : CPT-11+CDDP療法

ノギテカン ハイカムチン® 小細胞肺がん

※イリノテカンの発現頻度と重傷度を軽減した製剤です。

○トポイソメラーゼⅡ阻害薬
前述したアントラサイクリン系抗生物質と、北米原産のアメリカミヤオソウの根茎に含まれるポドフィロトキシン誘導体があります。骨髄抑制などの副作用がみられます。エトポシドは注射剤以外にカプセル剤があり、ゾブゾキサンは細粒のみです。

表8.トポイソメラーゼⅡ阻害薬

一般名 商品名 適応
エトポシド ラステッド®
ベプシド®
小細胞肺がん、悪性リンパ腫、子宮頚がん、急性白血病、胚細胞腫瘍 など

※代表的な治療法
●胚細胞腫瘍 : BEP療法

ゾブゾキサシン ベラゾリン® 悪性リンパ腫、成人T細胞白血病リンパ腫

※イリノテカンの発現頻度と重傷度を軽減した製剤です。

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以上で、今回の薬剤講座を終了します。
次回は「抗悪性腫瘍薬~ホルモン製剤・白金製剤~」を予定しています。

(参考文献)

  • 今日の治療薬2011年
  • まちがいのない抗癌剤の使い方 第2版 増補版
  • がん化学療法ベストプラクティス
  • 抗悪性腫瘍薬と薬理学(県立宮崎病院院内がんセミナー)