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精神機能の障害に対する援助法 その1 ~注意障害のリハビリテーションと対応法~
前回、「精神機能の障害の理解」という内容でお話しいたしました。そこで今回は、「精神機能障害に対する援助法」ということで、何回かに分けて、勉強していきたいと思います。
前回、お話しました注意機能(感度、転導性、多方向性、選択性、持続性)に障害がおよんでしまうと、以下のような症状が日常生活で観察されるようになります。
日常生活で観察される注意障害の症状 1) 4)
- 集中せず、落ち着くがなく、言われないと何事も続けられない。
- 1つのことに集中出来ず、すぐに中断し、長続きしない。
- 細かいことが抜け、ミスが多く、能率が上がらない。
- 他のことに気が散り、目的に沿った言動が出来ない。
- 複数の事柄を、同時に進行出来ない。
- 周囲の声や他者の動きに注意がそれやすい。注意散漫。
- 周囲の状況に応じて、修正・転換が出来ない。
- ぼんやりして、先に進まない。眠そうで、活力に欠けて見える。すぐに疲れてしまう。
- 頭脳的・心理的作業が遅く、緩慢でてきぱきと物事が処理出来ない。
- 頭がボーッとして、頭の切り替えが上手くいかない。
- 動作がのろく、言葉での反応が遅い。
一般的に、注意障害のリハビリテーションとして、以下のようなものがあげられます。しかし、効果には個別性があり、全ての人に効果があるとは限りません。
注意障害のリハビリテーション 2) 3) 4) 5)
- 機能適応訓練
- 直接的アプローチ
着衣や食事といった日常生活行動を直接的に訓練する方法。- 自己教示法
覚醒水準を保つように適度な睡眠を効果的に取る。環境の刺激を減らし注意を集中させる。一度に多くのことをせず、時間を決めて行うなど。- 環境支援
環境設計を行う。ラベリングして組織化する。スケジュール帳、服薬管理ボードなどの利用。- 心理社会的支援
治療的傾聴、リラクゼーション、心理療法など。- 認知機能訓練
- 直接刺激法
反復刺激。訓練の繰り返し、フィードバックを行う。- 行動的条件付け法
誤字における集中力の低下の改善を目的として報告などがある。- 戦略的置換法
チェックリストなどの外的な代償戦略や自己教示などの内的な代償方法が試みられる。
家庭でも行える、注意障害への一般的な対応法としては、以下のものがあげられます。
注意障害への対処法 1)
- 本人に注意障害があることを自覚してもらう。
- 指導や修正は1つずつ行う。同時に2つ以上のことは行わない。
- 指導は短時間で、ポイントを押さえ、ゆっくり丁寧に反復して行う。
- 注意や集中を促すように、手順等、声を出しながら行ってもらう。
- 注意や集中力を促すために、家の中の整理整頓を行う。
以上で今回のリハビリテーション講座を終わります。
次回は、記憶障害の方に対するリハビリテーションと対応法をおおくりしたいと思います。
(参考・引用文献)
- 1)鹿児島高次脳機能研究会:市民のための高次納期脳障害. 2005.
- 2)江藤文夫、他:高次脳機能障害のリハビリテーションVer.2,20ー25,医歯薬出版,2004.
- 3)米本恭三、他:実践リハ処方.医歯薬出版,65ー71,1996.
- 4)加藤元一郎:注意障害,PTジャーナル33:575ー581,1999
- 5)種村留美、種村純:注意・集中力障害 検査法と訓練,総合リハ30:1291ー1296,2002