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ストレス(第6回)…ストレスへの対応(サポート・家族支援)

Ⅰ.サポート

1.職場の仲間に落ち込んだ人がいるときにできること

最も大切なことは、その人のつらさを理解してあげることです。そして、その人の心身の負担を減らすために、できることがいくつかあります。

「疲れているように見えるけれど、無理していない?」「仕事、大変そうだね」などと声をかけ、まず、ゆっくりと相手の話を聞きましょう。
心が疲れているときには、誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちの負担は軽くなることがあります。無理にアドバイスしようとはせずに、「あなたをサポートしたい」という気持ちが伝わるようにすることが大切です。
よく、「お酒でも飲みながら」と誘う人がいますが、疲れているときには、騒がしい場所に行くこと自体が負担になるものです。落ち着いて話が聞ける場所を選びましょう。

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2.専門家への相談をすすめる

「サポートしたい」という気持ちは大切ですが、自分だけで受け止めようとする必要はありません。状況を把握して、専門の相談機関にバトンタッチするほうが適切です。
相談を勧めても、本人の気が進まないような場合には、「体調が悪そうで心配だから」「病気でなければ、自分が安心できるから」などと、相手のプライドを傷つけないように、自分の気遣いを伝えてみましょう。
社内に産業医や保健師、カウンセラーなど専門家がいる職場であれば、心配な人がいることを伝えて、自分がどのように対応すればよいかを相談するとよいでしょう。

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3.休養できるようにサポートする

心身が疲れ切っているときは、頑張ろうと思っていても仕事の効率は上がりません。また、仕事そのものがストレスになっている場合もあります。仕事の負担を減らして、休養できるようなサポート体制が必要になります。
しかし、本人がそれを心苦しく思うようだと、かえって状態を悪化させてしまいます。「今の君には無理だろう?」「あなたがいなくても大丈夫だから」などの言葉は、「みんなに迷惑をかけている」「自分は無力だ」と感じさせてしまうでしょう。
「今は疲れをとることが一番だ。その間は自分たちが君の頑張りに応えたい」と、職場の仲間として支援していることを伝えて、ゆっくりと休めるように配慮しましょう。

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4.相談されたときの話の聞き方・答え方

相談された時には、その人のつらさを理解したいと思っていること、また、サポートしたいと思っている気持ちが伝わるような話の聞き方、答え方をしましょう。そのためには、次のような点に気をつけてください。

相手の気持ちを受け入れる

まず、自分が話すよりも、相手の話を聞くことに重点を置きましょう。
相手の状況や気持ちを理解しようとする態度で話を聞きます。
共感していることが伝わるようにあいづちを打ち、「そうは思わないな」「努力が足りないんじゃないの」など、否定的な言葉や批判的な言葉は控えましょう。

理由や原因を問い詰めない

相手の状況や気持ちをよく理解するための質問は必要ですが、「なぜそんなことをしたの」などと、問い詰めるような口調にならないように気をつけます。
とくに、理由や原因について根ほり葉ほりは質問せず、「そのことをどう考えたの」「そのときどんな気持ちがしたの」など、相手の考えや思いについて聞くほうがよいでしょう。

アドバイスを急がない

相談されたのだからと、役に立つことをいってあげたいかもしれませんが、相手は自分のつらい気持ちを聞いてほしいだけかもしれません。
「たいしたことじゃないよ」「もっと頑張れよ」などと励ましたり、「気分転換でもしたら」「趣味を持てよ」などの安易なアドバイスは、「自分のつらさはわかってもらえないのだ」と、かえって逆効果の場合があります。

言葉の表面的な意味にとらわれない

相手に共感することは大切ですが、言葉の真意を考えることも必要です。
例えば「会社を辞めたい」という言葉には、「そんなにつらかったんだね」「会社にとって大事な人だ」などといってほしいという気持ちが込められているかもしれません。
また、悲観的になって極端な考えに陥っているかもしれないので、「元気になってから決めたほうがいいよ」と、重大な決定は急がせないようにしましょう。

他言しないことを約束する

相手から相談されたということは、それだけ信頼されているということです。
また、相談内容によっては、第三者が聞いたら誤解を招きそうなことや当人の不利になるようなこともあるでしょう。
「誰にもいわない」と約束し、上司に相談したほうがよいと思われる場合にも、相手の了解をとった上で話すようにしましょう。

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Ⅱ.家族の対応

家族にできること

一番つらい思いをしているのは本人です。
その気持ちを理解して温かく見守り、安心して休養できる環境を整えましょう。
とくに「心の病」に陥っている場合では、回復には家族の協力が不可欠です。

1.辛抱強く見守る
休養は本人のペースを尊重しましょう。
意欲や気力がなくなっているのに運動や気分転換をすすめても、本人にとっては苦痛なだけです。
また、「頑張って」という励ましも本人を追い詰めることになります。
いろいろと口を出したいことはあるかもしれませんが、静かに見守る勇気が必要です。
2.受診のすすめは慎重に
治療が必要と思われる場合も、受診のすすめ方には配慮しましょう。
「病気なのだから早く治療を受けないと」など、ストレートにいい過ぎて自尊心を傷つけたり、無理に連れていくことは避けましょう。
かかりつけ医や本人が信頼している先輩や友達から話してもらうと、受け入れやすいこともあります。
3.過剰な気遣いは控える
本人を責めるような言動をしてはいけないと思うあまり、対応に悩むかもしれませんが、過剰な気遣いは禁物です。
かえって「それほど深刻な状況なのか」と、不安にさせてしまいます。
おおらかな気持ちで今の状況を受け入れる態度を示すことで、本人も安心して休養に専念できるようになるでしょう。
4.重大な決定を急がせない
心が弱っているときには、悲観的になりがちです。
そのため、退職や離婚などを口にするかもしれませんが、回復すれば考えが変わることもあり得ます。
「元気になってから考えましょう」と、重大な決定は先に延ばすように促してください。
5.回復や復帰をあせらない
休業しているような場合、職場に迷惑をかけているという自責の念から、十分に回復していないのに復帰をあせりがちです。
そのようなときに家族が「もうよくなったんじゃないの」「まだ治らないの」などというと、さらに追い打ちをかけることになります。
気長に療養できる環境づくりに心がけましょう。1)

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(参考文献)

  1. http://www.jbkenpo.com/stress/pages/around/family.html