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糖尿病 ~α-グルコシダーゼ阻害薬とインスリン抵抗性改善薬~

今回は、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)と、インスリン抵抗性改善薬として、チアゾリジン誘導体とビグアナイド類の3種類についてお話しします。

1.α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

食事により摂取された炭水化物(デンプン)は、小腸においてαアミラーゼにより二糖類に分解され、さらに小腸粘膜上皮細胞の刷子縁に存在する二糖類分解酵素(α-グルコシダーゼ)により単糖類にまで分解されて吸収されます。α-GIは、このニ糖類分解酵素であるα-グルコシダーゼの作用を競合的に阻害することで、糖の分解・吸収を遅らせます。

また、糖尿病の患者はインスリン分泌のタイミングが遅れているため、α-GIにより血糖上昇とインスリン分泌のタイミングが合うようになり食後の高血糖を抑制します。よって、空腹時血糖はさほど高くなく、食後に高血糖になるようなインスリン非依存状態を示す症例に使用されます。単独では弱いため、他の糖尿病治療薬と併用されることが多いです。

α-グルコシダーゼ阻害薬の種類

一般名 商品名 規格
アカルボース グルコバイなど 50mg,100mg
ボグリボース ベイスン
ベイスンODなど
0.2mg,0.3mg
ミグリトール セイブル 25mg,50mg,75mg
<使用上の注意>

α-GIが効果を発揮するためには、糖類と薬が小腸内に同時に存在する必要があるため、食直前に服用する必要があります。万一、飲み忘れた場合は食事中でしたらすぐに飲んでもかまいません。食後では効果がありません。

副作用としては、腹部膨満感、放屁の増加、下痢などの消化器症状が多くみられます。これは、分解されずに残った二糖類が大腸まで運ばれ、腸内細菌によって消化・発酵され、腸内にガスがたまってしまうためです。高齢者や腹部手術歴のある患者では、腸閉塞様の症状をおこすことがあるため注意が必要です。また、頻度的には非常に稀ですが、重篤な肝障害が報告されており、定期的な肝機能検査が必要になります。

α-GIの単独の服用では、低血糖の心配はほとんどありませんが、他の糖尿病治療薬を併用している場合は注意が必要です。低血糖を起こした場合は直ちにブドウ糖を補給してください。砂糖は二糖類なので効果がすぐに現れません。

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2.チアゾリジン誘導体

2型糖尿病の原因の多くは、脂肪細胞の肥大化によりインスリン抵抗性の状態になります。脂肪細胞は、前駆細胞が核内レセプターPPAR(パーオキシソーム増殖剤応答性受容体)γなどの転写因子により刺激されて成熟脂肪細胞になります。高カロリーや運動不足などの生活習慣の変化により、脂肪細胞はしだいに肥大化していきます。脂肪細胞が肥大化するとインスリン受容体の感受性を低下させる様々な物質(遊離脂肪酸、TNFα、レジスチン)が分泌されます。

アクトスは核内レセプターPPAR(パーオキシソーム増殖剤応答性受容体)γへ結合し、活性化させることで、インスリン抵抗性を惹起させるホルモン様物質(遊離脂肪酸、TNFα、レジスチン)を分泌する大型の古い脂肪細胞に細胞死をもたらせ、インスリン抵抗性を低下させるホルモン様物質(アディポネクチン)を分泌する小型の脂肪細胞への分化を促進します。

これにより、インスリンに対する体の感受性が高まり、血糖値が下がります。

チアゾリジン誘導体の種類

一般名 商品名 規格
ピオグリタゾン アクトス 15mg,30mg
<使用上の注意>

副作用としては、浮腫、貧血、血清LDH、CKの上昇などがみられます。アクトスにはナトリウムの再吸収を促進する作用があり、これが浮腫の原因ではないかと考えられています。肥満を伴った患者さんに有効とされている薬剤で、動脈硬化の予防にも有効であると言われていますが、体重増加を起こしやすい薬剤ですので、体重管理をしっかり行いながら服用していかなくてはなりません。心不全の患者および心不全既往歴の患者は、浮腫を起こし症状を悪化させるおそれがあるため使用できません。また、妊婦や授乳婦にも使用できません。

アクトスには、インスリン分泌促進作用はないため、単独では低血糖の心配はほとんどあ りませんが、他の糖尿病治療薬を併用している場合は注意が必要です。

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3.ビグアナイド類

ビグアナイド類は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化させることで糖・脂質代謝に多様な効果をもたらします。肝臓からの糖放出抑制や末梢での糖取り込みの促進、消化管からの糖吸収抑制により血糖を降下させます。また、インスリン抵抗性を改善する作用もあります。

特にインスリン抵抗性の強い過体重の患者さんや肥満の患者さんに有効とされています。以前は、SU剤が効果不十分、または使用不適当な場合に使用が限られていましたが、現在では使用制限もなくなり単独使用が可能となりました。

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ビグアナイド類の種類

一般名 商品名 規格
メトホルミン グリコランなど 250mg
ブホルミン ジベトスなど 50mg
<使用上の注意>

副作用としては、非常にまれですが、乳酸アシドーシスがあり、高齢者や肝臓、腎臓、心機能に障害のある患者、アルコール多飲の患者には使用できません。また、服用中に下痢や嘔吐など脱水をきたす危険がある場合は休薬が必要です。また、ヨード造影剤を用いて検査を行う場合、検査前は本剤の投与を一時的に中止し、造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しないで下さい。

以上で、今回の薬剤講座を終了します。

次回は、『糖尿病~インクレチン~』について予定しています。

(参考文献)

  • 今日の治療薬(2010年版) 南光堂
  • 糖尿病治療ガイド(日本糖尿病学会編 2008-2009) 文光堂
  • やさしい糖尿病教室