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糖尿病 ~序論とインスリン分泌促進薬~

1.糖尿病について

糖尿病は、食生活の欧米化・運動不足・ストレスなどにより、膵臓でインスリンが作られなくなったり、インスリンが効きにくくなったりすることや、糖尿病になりやすい遺伝的体質をもつことで血糖値があがる病気です。

血糖値が高い状態が長く続くと、糖尿病の三大合併症である糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症・糖尿病性神経障害がおこってきます。また、動脈硬化をおこし、比較的太い血管がある心臓や脳の血管が障害されて、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こすこともあります。

平成19年の国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる人が約890万人、糖尿病の可能性が否定できない人が約1320万人、合わせて2210万人と推定されており、年々増加傾向にある生活習慣病の一つです。

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2.糖尿病の種類について

日本糖尿病学会編集の糖尿病治療ガイド(2008-2009)では、次の4つに分類されています。

  • ① Ⅰ型糖尿病
  • ② Ⅱ型糖尿病
  • ③ その他の特定の機序・疾患によるもの
  • ④ 妊娠糖尿病

Ⅰ型糖尿病は、ウィルスなどに感染したときに、体の中の免疫細胞がインスリンを作る膵臓もウィルスとともに破壊することによって、膵臓がインスリンを作れなくなることが原因で起こります。よって、子供や若い人に多くみられますが、大人や高齢者にもみられる場合もあります。
Ⅱ型糖尿病は、インスリンの量が低下したり、インスリンの量は十分でも肥満などが原因でインスリンの効きが悪くなることによって起こります。主に40代以降で多くみられ、日本人の糖尿病患者の95%がⅡ型糖尿病だといわれています。
その他の特定の機序・疾患による糖尿病は、遺伝子に異常があっておこるものと肝疾患や感染症、薬の副作用などによるものとの2つに分類されます。
妊娠糖尿病は、糖尿病と診断されていない女性が、妊娠後に糖の代謝異常が起こることです。これは、妊娠が成立してから分泌される女性ホルモンなどが関与していると考えられています。

ここで、インスリンの作用についてお話します。
体の中の細胞は、主にブドウ糖をエネルギー源として動いています。細胞がブドウ糖を使うときに必要なのがインスリンです。インスリンは膵臓のβ細胞で作られているホルモンで、血液中の糖の濃度が高くなると血液中に出でてきて、細胞に「ブドウ糖を使えるよ!」というサインをだします。なんらかの原因で、インスリンが膵臓で作られなくなったり、インスリンが細胞にサインを出しにくくなると、細胞がブドウ糖を使うことができず、血糖値はあがってしまうのです。

インスリンの分泌は2種類に分類されます。インスリンは食事をとらなくても常に分泌されており、血糖値は一定範囲内に保たれています。このときのインスリンの分泌を「基礎分泌」と呼んでいます。食事をして食べ物がブドウ糖やアミノ酸になって吸収されるときに、一時的に血糖値があがります。このとき、インスリンの基礎分泌では足りないので、インスリンがさらに追加で分泌されます。この分泌のことを「追加分泌」と呼んでいます。

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3.糖尿病の症状について

血糖が高くなったからといって、すぐに明らかな症状が現れるわけではなく、高血糖状態が長く続くことで症状は現れます。症状としては、以下のようなものがあります。

  • 糖が尿中にでてくる
  • トイレに行く回数が増える
  • 喉が渇く
  • 水分の摂取量が増える
  • 体重が減少する
  • 疲れやすくなる
  • 眼がかすむ・視力が低下する
  • 手足がヒリヒリする            など

しかし発症初期にはこのような症状に気づきにくく、糖尿病が進行し合併症を引き起こしてから自分の症状の変化に気づくということが少なくないようです。よって、健康診断で「糖尿病の疑いあり」と言われたら、早めに病院に行って診察を受けることをお奨めします。

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4.糖尿病の診断について

糖尿病の判定基準は次の通りです。

① 朝空腹時血糖値 126mg/dl以上
② 75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値 200mg/dl以上
③ 随時血糖値 200mg/dl以上

血糖値は、検査前日の食事の内容によっても左右されるため、再度別の日に血糖値を測定し、上記の①~③のいずれかであれば、糖尿病と診断されます。ただし、1回目の検査時に、下記のア~エのいずれかが確認された場合は、1回目の検査で糖尿病と診断されることもあります。

  • (ア) 口渇、多飲、多尿、体重減少など、糖尿病の典型的な症状がある場合
  • (イ) 同時に測定したHbA1c値が6.5%以上の場合
  • (ウ) 確実な糖尿病網膜症が認められた場合
  • (エ) 過去に糖尿病型を示した検査データがある場合

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5.血糖コントロールの指標

血糖コントロールの指標は、HbA1cの値を重視します。HbA1c値は、患者の過去1~2ヶ月間の血糖値の平均を示す値です。よって、定期的にHbA1c値を測定すれば、患者の過去の血糖コントロールを評価することができるというわけです。HbA1c値の指標と評価は、次の通りです。

表1 血糖コントロールの指標と評価

指標 不可
不十分 不良
HbA1c値(%) 5.8未満 5.8~6.5未満 6.5~7.0未満 7.0~8.0未満 8.0以上
空腹時血糖値(mg/dl) 80~110未満 110~130未満 130~160未満 160以上
食後2時間血糖値(mg/dl) 80~140未満 140~180未満 180~220未満 220以上

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6.糖尿病の治療について

日本人の糖尿病患者の95%がⅡ型糖尿病であること、Ⅰ型糖尿病患者はインスリン療法が必須であることから、ここでは、Ⅱ型糖尿病の治療についてお話します。

糖尿病は様々な疾患と関連していることから、糖尿病の治療では、血糖・血圧・血清脂質・体重をうまくコントロールすることが重要です。

Ⅱ型糖尿病の治療では、まず適切な食事療法と運動療法によって血糖コントロールを行います。これらを2~3ヶ月続けても血糖のコントロールがうまくいかない場合は、経口血糖降下薬(飲み薬)またはインスリン注射をプラスして治療を行います。血糖コントロールの指標であるHbA1cは、表1の血糖コントロールの指標と評価の「優」または「良」になるようにコントロールしていかなくてはなりません。

経口血糖降下薬には以下のものがあります。

  • インスリン分泌促進薬
  • インスリン抵抗性改善薬
  • α-グルコシダーゼ阻害薬
  • DPP-4阻害薬

ここで、経口血糖降下薬の中でも“インスリン分泌促進薬”についてお話します。

インスリンの分泌を促進させる薬には、スルホニル尿素薬(SU剤)と速効型インスリン分泌促進薬の2種類があります。

スルホニル尿素薬は、膵臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を促進し、血糖値を下げるお薬です。スルホニル尿素薬で現在よく使われているのが、表2の第二・第三世代のグリクラジド(グリミクロン®など)やグリペンクラミド(オイグルコン®など)、グリメピリド(アマリール®)などです。スルホニル尿素薬は、インスリンの分泌量を増やすことで、血糖値を下げる薬です。日本人のⅡ型糖尿病患者さんの7~8割は、インスリン分泌が低下していると言われており、スルホニル尿素薬は、現在最もよく使われています。

表2 スルホニル尿素(SU)薬

商品名 成分名 用法 特徴 副作用
第一世代 ヘキストラスチノン錠など トルブタミト 1日1回朝食前または後、または1日2回朝夕食前または後
(※は1日1回朝食前または後)
インスリン基礎分泌量と追加分泌量↑ 低血糖
肝障害
腎障害
無顆粒球症
など
デアメリンS錠 グリクロピラピド
ジメリン錠 アセトヘキサミド
アベマイド錠※ クロルプロパミド
第二世代 グリミクロン錠
グリミクロンHA錠 など
グリクラジド
オイグルコン錠
ダオニール錠
パミルコン錠 など
グリベンクラミド
第三世代 アマリール錠 グリメピリド

速効型インスリン分泌促進薬は、スルホニル尿素薬と同様に、膵臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を促進し、血糖値を下げるお薬です。食事の前に飲むと速やかに吸収される薬で、その効果は、薬を飲んで15分以内に現れますが、薬効持続時間も非常に短いです。このように、ミチグリニド(グルファスト®)やナテグリニド(ファスティック®など)は食直前(食事の5~10分前)に服用することにより、インスリンの追加分泌量を増やして、食後の高血糖を抑えるお薬です。食直前(食事の5~10分前)に服用しないと効果がありませんが、食事の30分以上前など早い時間に服用してしまうと、低血糖をおこすことがあるため、服用方法はきちんと守りましょう。

表3 即効性インスリン分泌促進薬

商品名 成分名 用法 特徴 副作用
ファスティック錠 ナテグリニド 1日3回
 毎食直前
インスリン追加分泌量↑ 低血糖
肝障害
体重増加
心筋梗塞
など
スターシス錠
グルファスト錠 ミチグリド

インスリン分泌促進薬の副作用として特に注意しておかなければならないのが、低血糖です。
低血糖の症状としては、次のようなものがあります。

  • 力が抜けた感じ
  • 冷や汗
  • 動悸
  • 急激な空腹感
  • 目のちらつき
  • イライラ感     など

これらの症状に気づいたら、ブドウ糖(5~15g)又は10~30gの砂糖の入ったジュースやキャンディなどを服用しましょう。血圧の薬の種類によっては、この低血糖症状を隠蔽してしまうこともがあるため、自分が服用しているお薬は、診察をしてもらう医師もしくは薬剤師に提示してください。

他に注意する副作用として、表3の速効型インスリン分泌促進薬においては、発症頻度は非常に低いですが、心筋梗塞の発症も報告されています。狭心症など心臓に疾患をもっていらっしゃる方は体調に注意しながら薬を服用しましょう。また、インスリン分泌促進薬の服用中は、食欲が亢進することがあるため、体重の測定を定期的に行い、体重増加に注意しましょう。

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以上で、今回の薬剤講座を終了します。

次回は、『糖尿病のお薬~α-グルコシダーゼ阻害薬とインスリン抵抗性改善薬~』について予定しています。

(参考文献)