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転倒予防シリーズ⑪ 転倒予防に対する改善法~その5:道具~
前回に引き続き転倒予防に対する改善法を紹介します。
今回で、転倒予防シリーズは最後となります。内容としましても「道具」ということで、毎日使用する靴の選び方を紹介し、履物が歩く際に与える影響を説明します。加えて、「転ばぬ先の杖」としまして補助具である「杖」の種類と選び方も紹介していきます。
○ 正しい靴の選び方
- 1. サイズの計測
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適切な靴を選ぶ際には最も基本的なことは足の寸法を正しく測ることにあります。
市販の靴は足長(サイズ)と足囲(ウィズ)を基に大きさが決められています。- サイズ(size):立った際に、踵の後ろとつま先の先までの長さ
⇒靴下を履かない状態のサイズより1cm程長いものを選ぶと良いです。 - ウィズ(width):立った際に、親指と小指を取り巻く長さ
⇒偏平足の方などは、足を両側から圧迫して足の真ん中にアーチを描くようにして測ると良いです。
- サイズ(size):立った際に、踵の後ろとつま先の先までの長さ
- 2. 靴底の曲がる位置
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- 靴底の曲がる位置は蹴りだしの補助や体重の支えに重要とされています。
- 通常は指の関節の付け根の関節部分で曲がるものが良いとされています。補強が無いものでは靴底の中央部で曲がってしまい歪を生じてしまいます。
- 確認の仕方としましては、踵の部分に手でげんこつをつくりヒールのように当てます。その際に、靴の履き口から指で押して確認すると良いです。
- 3. カウンター(月形芯)の有無
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- カウンターは靴の踵の部分に入っている芯のことを指します
- 役割として、踵部分の保護と過剰な動きを止めてしっかりと支える働きがあります
- 確認の仕方としましては親指と人差し指で挟んで確認することが出来ます。簡単に曲がるようなものはお勧めできません
- カウンターが弱いと外反母趾や偏平足など足の歪みの原因にもなるといわれています
- 4. 甲の押さえ
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- 前述した靴の機能を発揮するために重要な役割を果たす構造物として甲の押さえは必要です
- 甲の押さえは、靴と足を密着することで脚を振り出す際に、前述したカウンターを補助し、足を靴に固定する機能があります
- 靴紐の場合は靴紐をしっかりと結ぶことで「甲の押さえ」の機能を発揮させることに繋がります。逆に、流行のミュールなどでは接地する部分が少なく転んでしまった経験がある方も多いと思います
*以上のことを参考に自分の足にあった靴を選んでみてください
○ 杖について
- A. 杖の効果
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- 支える点の増加
- 支える面の拡大
- 荷重の軽減(骨折や痛みに対する下肢の保護)
- 歩行のための補助
- バランスを崩したときのとっさの支え
- 探索機能(視覚障害のある方)
- 心理的安心感
- 他者へのアピール
- 行動範囲の拡大
- B. 杖の種類と特徴
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■T字杖
最も一般的な杖である。握りの形状やデザインの違いによってフィット感がことなる。使用者が握ってみて適合性がよいものを選んで支障はない。 -
■ロフストランド杖
腕の筋力や握力が弱く杖の支持方向のコントロールが難しい場合に適合される。平坦な道での使用に有効だが、階段や坂道では腕の突き上げが生じて支持方向が混乱してしまうので注意が必要。 -
■松葉杖
わきの下から握りまでの長さで杖の指示方向をコントロールするので、骨折や両下肢麻痺などにより強い支持性を必要とする場合に適用される。また、骨折後の免荷や、1/2荷重、1/3荷重などの部分荷重の制御に適している。
- C. 杖の合わせ方
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靴を履いて立ち、つま先から前15cm、外15cmの位置に杖先をついて握り、肘が30°程度曲がる長さが最適だといわれています。
今回を持ちまして「転倒予防シリーズ」は全て終了となります。
次回からは新シリーズ「小児リハビリテーションについて」を紹介していく予定です。
(参考資料)
- 奈良勲:理学療法のとらえかたClinicalReasoning.文光堂
- 濱中康治他:履物・衣服と歩行:理学療法:Vol.26 No.1:P66-72.メディカルプレイス2009