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転倒予防シリーズ⑩ 転倒予防に対する改善法~その4:環境~

前回に引き続き転倒予防に対する改善法を紹介します。

○ 在宅で起こしやすい転倒事故

  1. 前期高齢者 ⇒屋外移動時に多い
  2. 後期高齢者 ⇒屋内(特に寝室)が多い
  3. 個々でみると⇒決まった場所での転倒が多い

○ 在宅で転倒しやすい動作

  1. 方向転換
  2. 移乗動作
  3. 床からの立ち上がり
  4. 段差の乗り越え
  5. 階段昇降
  6. 脱衣動作
  7. 浴室への出入り動作

○ 在宅で転倒しやすい場所

最も多いのは寝室で、他では段差のある階段、水場である台所、浴室、またドアの開閉時などがほぼ同等である。

○ 生活環境整備

A. 寝室(ベッド周囲)
ベッドの高さはADL(日常生活動作)の自立、介護負担の軽減に大きく影響する。人それぞれ能力の違いはあるが、日本人の体型であれば35~40cmが適当である。基本的には、ベッド端に腰掛けた際に足が床にしっかりと接地すれば良い*。
また、夜間のトイレ移動の際には、足元の明るさも重要です。枕元には照明器具を設置して明かりをつけて移動する習慣をつける。
* 介助量が多い場合には介護者の負担を考慮して高めに設定すると良い。
B. 手すり
手すりは廊下の両側に設置したほうが便利に感じますが、一般的な日本家屋の場合は狭いので帰って不便になることもあるので注意する。
廊下幅が75cm確保出来なければ片側手すりにすると良い。
高さは体重支持を目的とする場合は杖と同じ程度、バランスをとる位で良ければ杖の高さに10cm加えた高さが基準となります。おおよそヘソの高さが1つの目安となります。
C. 段差
段差に関しては、国土交通省が長寿社会対応住宅設計指針を打ち出していますので紹介します。
  1. くつずりと玄関外側の高低差は2cm以下、くつずりと玄関土間の高低差は5cm以下。
  2. 玄関の上がりかまちの段差は、集合住宅については11cm以下、土建住宅については18cm以下とし、やむをえない場合は式台を設置するか、設置できるスペースを設け、土間と式台と上がりかまちの段差を各18cm以下。
  3. 玄関の上がりかまち及び式台は、段差がわかりやすいよう出来るかぎり材質、色などで変化をもたせる。
D. トイレ
最近の住宅では、洋式トイレが一般的ですが、和式の場合であれば簡易洋式化にすれば利便性は向上します。

トイレの問題点としては、介護者のスペースをいかに確保するかにあります。介助が必要な場合は側方のスペースの有無が大きく影響します。広さとしては幅・奥行きともに1.35m以上が望ましいとされています。手すりは、立ち上がりのための縦型と移動のための横型を備えたL字型が有効です。ドアは、引き戸式のほうがスペースを有効に使えます。
E. 浴室
浴室の広さは、腰掛け台などを設置しても入浴行為に支障のない広さとして、幅・奥行きともに1.4m以上かつ広さ2.5㎡以上が良いとされています。出入り口は段差なしが理想ですが2cm以下の単純段差ならば大きな問題にならないことが多いです。それ以上の場合は、手すりの設置、スノコ板による段差解消の工夫が必要です。
浴槽の縁は、腰掛けて浴槽にできる形状として、浴槽の縁の高さは35~45cm程度が出入りしやすい。浴室のドアは、トイレ同様に引戸あるいは折れ戸が出入りに便利である。

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(参考資料)

  • 高塚博他:在宅での転倒事故予防:JOURNAL OF REHABIRITATION:vol.10 No.11.2001.11 P974-981
  • 奈良勲:理学療法のとらえかたClinicalReasoning.文光堂