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転倒予防シリーズ⑤ 転倒に関する評価~その1:認知面~

前回、認知機能の低下が「転倒・転落のリスクの1つとなりうる」ことを述べました。
今回は認知機能面の評価について述べていきます。

観 察1)

① 物忘れ
約束、予約、伝言や大切なもの(財布・鍵など)を置いた場所を忘れる。何度も同じこと聞く。今朝の食事メニュー、昨日の来客を忘れる。
② 道 順
道に迷う。
③ 家庭生活
以前は行えていた日課・役割ができなくなる。火の不始末や金銭管理が困難になる。身だしなみなどの身辺処理が行えなくなる。
④ 判断・思考
状況に応じた適切な判断ができない。
⑤ 人 格
人柄が以前と変わっている。(怒りっぽく抑制できない、落ち着きがない、非社会的な行動・発言など)

検 査

認知機能を評価するには様々な検査方法がありますが、スクリーニングテストとして長谷川簡易知能評価スケール(HDS-R)やMini-Mental State Examination(MMSE)が代表的です。これらは、見当識・記憶・注意集中力・計算などを知る事が可能です。

【改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)】1)2)
  • 最高得点は30点
  • 得点で20点以下を認知症、21点以上を非認知症とした場合に最も高い弁別性を示す
  • HDS-Rによる重症度分類は行わないが、各重症度別の平均得点は以下の通りである
非認知症 24.27±3.91
軽度 19.10±5.04
中程度 15.43±3.68
やや高度 10.73±5.40
非常に高 4.04±2.62
【MMSE】1)3)
  • 見当識・記銘力・計算・逆唱に加え、動作の指示・読み書き・図形模写など動作性・視覚性の要素も加わっている
  • 30点満点で、23点以下では認知症が疑われる

これで、今回の認知面の評価については終わります。

(参考・引用文献)

  • 1)高次脳機能障害学:石合純夫、医歯薬出版株式会社、p185~187
  • 2)国試の達人 作業療法編 第5版:アイペック、p185
  • 3)標準理学療法・作業療法学 精神医学第2版:上野武治、医学書院、p56