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転倒予防シリーズ④ 転倒に関する要因~その4:環境~

今回も前回に引き続き転倒予防シリーズ転倒に関する要因について紹介したいと思います。

転倒の要因1)

視力の低下やコントラスト感度の低下、あるいは視野の狭搾などの視機能の低下は、転倒・転落のリスクとなります。
視力は重要な問題で、日常生活における主観的な見えにくさ、たとえば、新聞の見出しが見えにくい、会話相手の顔がよく見えないなどの訴えがある場合を、リスクがあるとみなしてよいでしょう。
また、見えにくさの問題は環境が原因となっている場合もあります。
生活する上で使用する場所を証明を消したまま薄暗い環境で生活している高齢者は少なくありません。
実際に視機能が低下している方の問題と同様に、照度不足による見えにくさがある環境についても、転倒・転落事故のリスクとみなしてよいと思われます。
下の写真が『暗い部屋』と『明るい部屋』のものを比べたものですが、暗い部屋では物が見えにくく、段差や下に置いてあるものにつまづくなど転倒するリスクが高くなります。

『暗い部屋』
『明るい部屋』

転倒事故の発生場所とその原因2)

転倒事故に関するアンケートから住宅内での転倒事故の実態を知ることができます。転倒事故が多いのは階段、居間、寝室などですが、年代別にみると、玄関や浴室といった段差のはっきりとわかる場所では「65~74歳」の事故が多く、逆に「85歳以上」になると、寝室などの目立った段差が少ない場所でも事故が多くなっています。

こうした転倒事故の原因はさまざまですが、動作の原因については、後期高齢者(75歳以上)で「つまづいた」とか「ふらついた」ことによって事故が多く起こっています。
また、人的な原因については、「不注意だった」は年代を問わず多いですが、後期高齢者では、「急いでいた」、「他に気を取られていた」、「浮かれていた」という回答が目立っています。
普段は無意識に注意している場所であっても、急な出来事などがあると注意しきれなくなり、さらに高齢に伴う機能低下によりバランスを崩しやすくなっているため事故が起きたと考えられます。これは後期高齢者ほど注意が必要な点であります。

下の写真のように小さな段差やコードなど普段なんとも思わないところでつまづき転倒することがあります。転倒してからでは遅いです。転倒する前に注意しましょう。

また、転倒を防ぐ環境設定についても今後紹介していきます。

以上で、今回のリハビリテーション講座を終了します。

次回は、『次回は『転倒予防シリーズ⑤転倒に関する評価~その1:認知~』を紹介する予定です。

(参考・引用文献)

  • 1)泉キヨ子:エビデンスに基づく転倒・転落予防:中山書店2005 P6~P6
  • 2)泉キヨ子:エビデンスに基づく転倒・転落予防:中山書店2005 P56~P59
  • 3)奈良勲:理学療法のとらえかたClinical Reasoning:文光堂2002 P302~P318