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統合失調症のお薬について

統合失調症は『人格の病』と言われています。思考、自我、感情、人格などの特徴的な障害を主徴とし、多くは憎悪期とか寛解期を繰り返しながら慢性的に経過する疾病です。
ドイツの精神科医 E.クレッチマー(1888-1964)による性格の三分類によると分裂気質の者に多くみられ、この疾病の発病には遺伝的素因が関係しているようですが、原因は不明となっています。

クレッチマーによる性格の三分類

分裂気味 循環気味 粘着気質
(てんかん気質)
  • やせ型体型が多い
  • 非社交的、内気、神経質、従順である一方、無頓着、自己中心的、独善的
  • 統合失調症と関係が深い
  • 肥満体型に多い
  • 陽気、活発、社交的、現実的、実際的で環境に順応しやすい
  • 躁うつ病と関係が深い
  • 闘士型体型が多い
  • 鈍重で繊細さを欠き、感情の変化が少なく、一つのことに執着する
  • 躁うつ病と関係が深い

今回は、統合失調症のお薬についてお話します。

1.統合失調症の症状

統合失調症の症状は多彩で、病型、発病後の次期などで大きく異なっています。

1-1.症状
① 思考の異常:妄想気分,思考滅裂,強迫観念
② 知覚の異常:幻覚(特に幻聴と体感幻聴)
③ 自我意識の異常:させられ体験、二重人格
④ 感情の異常:鈍麻と敏感が同時に存在
⑤ 意欲の異常:能動性の低下、自発性の低下、行動障害(独語・空笑)
1-2.病型と特徴
① 妄想型:妄想・幻覚が主体となる病態
② 破瓜型:まとまりの思考や行動が主体となる病態
③ 緊張型:興奮・昏迷などの症状を有する病態
④ その他の病型:接枝型、パラノイア
1.妄想型統合失調症
  • 発病は30歳前後。
  • 妄想や幻想を主症状とし、意欲低下、感情鈍麻などの障害は少ない。
  • 軽度の痴呆を招く。
2.破爪型統合失調症
  • 思春期に発病。
  • 発病は緩除。初期は学力低下、職務能力低下、理由不明な欠席・欠勤。妄想や幻覚は少ない。感情の鈍麻、自閉傾向が目立つ。
  • 重度の痴呆を招き、予後が不良。
3.緊張型統合失調症
  • 20歳前後に急激に発症。
  • 意欲・行動の異常。興奮と混迷の両極端があり、興奮時には衝動行動、暴発的行動がみられ、不安、幻覚、妄想にとらわれている。
  • 寛解と憎悪を繰り返す。重篤な感情・意欲障害を残すことが少ない。
4.その他の病型
  • 接技統合失調症:軽度の精神遅滞に発症した、統合失調症。
  • パラノイア:偏執狂的・独断的性格の持ち主が何かを契機に、段三者にもある程度了解可能な妄想を形成する。感情の鈍麻、人格障害などは生じない。

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2.病態生理

統合失調症は遺伝学的研究、病理形態学的研究、神経画像解析、神経化学的研究など数多くの研究が行われていますが、未だに原因は不明となっています。
しかし、陽性症状を主とする病態に抗ドパミン作用を有するお薬の効果が高いことから、脳内のドパミン過剰が原因とした『ドパミン過剰説』や陰性症状を主とし、難治性の慢性病像にいたる病態には、脳内の神経伝達を司るシナプスに多く存在するグルタミン酸受容体へのグルタミン酸の濃度の低下が原因とした『グルタミン酸低活動説』が提唱されていますが、確定的な病因とはなっていません。

※陽性症状:急性興奮、奇異行動、妄想、幻覚など
※陰性症状:抑うつ気分、無為、自閉、感情鈍麻など

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3.治療と予防

統合失調症の治療には薬物療法と精神療法が中心となります。特殊な療法としては電気ショック療法を行う場合があります。
精神療法は主にカウンセリングが中心となって患者の内面をサポートしていく療法です。薬物療法は患者の症状、特に治療の目標にする症状に対して行います。

現在の統合失調症の薬物療法は、ドパミン作動性神経の過剰興奮の抑制、セロトニン(5-HT)受容体遮断が中心となっています。
更に、治療薬には定型抗精神病薬(第1世代、第2世代)と非定型抗精神病薬(第3世代)に大別されています。

統合失調症治療薬の特徴と副作用


薬 剤 特 徴
定型抗精神病薬 フェノチアジン系
  • ドパミン受容体遮断による抗精神病作用
  • 統合失調症における興奮状態を抑制
ブチロフェノン系
  • ドパミン受容体、セロトニン受容体遮断による抗精神病作用
  • 精神運動興奮や幻覚に有効
ベンズアミド系
  • 中等量では抗うつ作用、大量で抗精神病作用
  • 副作用の少ない緩和な抗精神病薬
非定型抗精神病薬 セロトニン・ドパミン遮断薬
  • セロトニン受容体遮断、ドパミン受容体遮断作用
  • 幻覚、妄想などの陽性症状や感情的引きこもり、情動鈍麻などの陰性症状に有効
MARTA
(多元受容体標的化抗精神病薬)
  • セロトニン、ドパミンアドレナリン、ヒスタミン受容体に同程度の拮抗作用
  • 陰性、陽性症状、不安症状、うつ状態等の多様な精神症状に効果を有す
薬 剤 副作用
定型抗精神病薬 フェノチアジン系
  • 重大:悪性症候群、麻痺性イレウス、遅発性ジスキネジア、SIDAH、SLE様症状
  • その他:血圧降下、縮瞳など
ブチロフェノン系
  • 重大:麻痺性イレウス、遅発性ジスキネジア、SIDAH、悪性症候群
  • その他:血圧降下、頻脈、錐体外路症状など
ベンズアミド系
  • 重大:悪性症候群、遅発性ジスキネジア
  • その他:パーキンソン症候群、発疹、ジスキネジア、アカンジア、乳汁分泌・月経異常など
非定型抗精神病薬 セロトニン・ドパミン遮断薬
  • 重大:悪性症候群、遅発性ジスキネジア,麻痺性イレウス、SIDAH
  • その他:パーキンソン症候群、ジスキネジア、月経異常、高プロラクチン血症など
MARTA
(多元受容体標的化抗精神病薬)
  • 重大:高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、悪性症候群、遅発性ジスキネジア
  • その他:体重増加、アカンジア、プロラクチン上昇など

SIDAH:抗利尿ホルモン分泌異常症候群 ※SLE:全身性エリテマトーデス

以上のように統合失調症には薬物治療が不可欠となっています。ただし、治療薬の服用を中止したことで再発を招く危険性があります。
従って、寛解の方向ヘ向かうにはきちんとした薬物療法を基本にカウンセリングや作業療法、リハビリテーションを含めた治療法を取り組むことが、早期の社会復帰や自立につながっていくと考えられます。

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以上で、今回の薬剤講座を終了します。

次回は、『神経因性膀胱のお薬』について予定しています。

(参考・引用文献)

  • スキルアップのための 服薬指導サブノート 改訂2版 山田 浩一 南山堂
  • 今日の治療薬 2008
  • 薬理学 疾病の成り立ちと回復の促進 中嶋敏勝 編著 医歯薬出版