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転倒予防シリーズ① 転倒に関する要因~その1:身体~

今回からは転倒予防シリーズとしまして転倒に関する「要因」「評価」「改善法」について、11回シリーズでお伝えします。シリーズ第1回としまして「転倒に対する要因~身体~」を紹介したいと思います。

1. はじめに

高齢者が日常生活において介護が必要となる要因として脳卒中に代表される脳血管障害についで高齢による衰弱・転倒・骨折・認知症などがある。
その為に、転倒を未然に予防することは介護状態を左右する上で極めて重要な問題点の一つと考えられます。

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2. 転倒とは

「転倒とは、自分の意思からではなく、地面またはより低い場所に、肘や手などが接触すること、階段、台、自転車からの転落も含む」とされています。

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3. 転倒の要因

今回は要因の中でも加齢に伴う身体変化よる状態を以下の三つ簡単に紹介します。

A. サルコペニア
B. 更年期障害
C. 自律神経-血管不安定状態
A. サルコペニア

サルコペニアとは一見聞きなれない用語ですが、主に老化に伴って発生する筋量の低下とそれに伴う筋力や運動機能の低下を指す概念のことです。
原因に関しては様々な事が言われていますが「長期間身体活動が一定」ということが条件であります。
すなわち、日々の生活の中で徐々に体が衰えていくことを指すと考えられます。
またその体力の衰えが日々の活動・活力を低下させるというマイナスの悪循環を生んでしまいます。

○予防と対策

対策としては運動療法による効果が高いという報告が数多くの研究から出されています。本講座としても今後、ご紹介しようと考えています。まず大切なことは日々の日常生活の中にウォーキングや軽い運動などを継続的に続けていくことです。

B. 骨粗鬆症

骨粗鬆症とは石灰化の異常を伴わない骨量の現象によって骨の脆弱性が増大した状態。すなわち骨の密度が薄くなることで骨折がしやすい状態のことを指します。
骨粗鬆症は大きく二種類に分別されます。

老人性骨粗鬆症
70歳以上の年配の方に多い。
骨折場所として背骨や太ももの付け根に多い。

閉経後骨粗鬆症
女性の閉経後のエストロゲン(女性ホルモンの1つ)の減少によって起こる。
骨折場所として背骨の圧迫骨折や手首付近に多い。

○予防と対策

現在、骨の量がいったん減り始めると増加させる方法がないため予防が重要です。予防法としては喫煙・飲酒などの危険因子となる生活の見直しや投薬によるエストロゲンやビタミンDの投与などが上げられています。

C. 自律神経・血管不安定状態

自律神経・血管不安定状態の代表的な症状は失神です。
これは「脳血流量の低下による意識と姿勢緊張の消失」と定義されていていわゆる「立ちくらみ」などもこれらのひとつになります。

そもそも自律神経とは?
自律神経は植物神経ともいわれており自分の意思や意図で調整できない神経です。自律神経は交感神経と副交感神経に分けられています。

  • 交感神経
  • 主に活動や興奮、緊張を調整する役割がある。驚いた時などの血圧が上昇や心拍数の増加、汗や瞳を見開くなどはこれが刺激されている状態です。
  • 副交感神経
  • 休養やリラックスしているなどに主に働きます。血圧を下げたり、心拍数を穏やかにする働きがあります。

高齢になるとどうして自律神経・血管不安定状態になりやすいの?

  1. 心臓のリズムを調節するペースメーカの働きが弱って脈が遅くなる。
  2. 血管が硬くなる動脈硬化が起こり血液を送るポンプ機能が下がる。
  3. 首の周りにある血圧を感知するセンサーが弱ってしまう。

これらの影響で十分に脳への血液が行き渡らない際に立ちくらみや失神が起こり転倒へ繋がる例が多いとされています。

○日常生活で注意するには!

  • 寝起きの際に急に起き上がらずに軽く手足を運動して起き上がるなど一呼吸置いた動作を心がけることが大切です。

  • 食後は消化の為に内臓へ血液が集まり、脳への血液量が低下しやすいため急な姿勢の変化に気をつけましょう。

  • 他にも排泄や長時間の入浴後などは自律神経のバランスが崩れやすいので注意しましょう。

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以上で今回のリハビリテーション講座を終了します。

次回は『転倒予防シリーズ② 転倒に関する要因~その2 運動器~』を紹介する予定です。

(参考・引用文献)

  • 泉キヨ子:エビデンスに基づく転倒・転落予防:中山書店2005
  • 新野直明他:転倒予防:総合リハビリテーション:Vol.34 No.11:p1035-1039,医学書院2006
  • 古名丈人:サルコペ二アに対するセルフエクササイズ:理学療法:Vol.25 No.7:p1073-1079,メディカルプレス2008