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家庭でできるリハビリテーション 5 ~腰痛の方のためのプログラム~

今回は家庭で出来る腰痛体操・日常生活上の注意について紹介します。

Ⅰ.腰痛について

いわゆる腰痛とは、骨・関節・神経・筋・内臓の病気などの原因による腰の痛みであるが原因が特定できない場合もあります。このような場合に『腰痛症』と診断されていることが多く、腰痛の80%が腰痛症とも言われています。
また腰痛は色々な原因が重なっている事も多く首や股関節などの問題から痛みを生じている場合も多いです。
そこで今回は、簡単な検査を行いそれに沿ったプログラムを紹介したいと思います。

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Ⅱ.痛みの検査

それぞれ ①前屈 ②後屈 ③側屈 を行なっていただき痛みが生じた場合を陽性としたいと思います。
その際、痛みが出た範囲が床から指先がどれ位の高さなのかをしっかり覚えておく事が大切です。

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Ⅲ.各種プログラム

A.痛みの各検査別エクササイズ

① 前屈で痛みが出た方

その1

その2

② 後屈で痛みが出た方

その1

その2

両脚を抱えおへそをのぞき込むようにして背中を丸め伸張する。

③ 側屈で痛みが出た方

④ 他にも…胸郭の伸張法

背中に枕やタオルなどを敷き胸を伸ばす。余裕があれば両手をゆっくり挙げる。

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B.座位で出来るエクササイズ

① 骨盤の前後運動

息を吐きながら5秒かけて骨盤を前方へ起こしながら背筋を正していく。
その際に一緒に顎が引けてくるかを確認する。

② 背中の伸張と筋力増強練習~その1~

壁を背もたれに出来るように椅子を置く。
顎を引き息を吸いながら7~10秒背中で壁を押し付ける。
その後、息を吐きながらゆっくりと背中を丸めていく。

③ 背中の伸張と筋力増強練習~その2~

その1の方法に加えてタオルを用います。
背中で壁を押す際に両脚を外に開こうとし、それをタオルを締め付ける事で止めます。
その後、タオルと脚を緩めて同じように息を吐きながら背中を丸めていきます。

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C.応用編

その1

まず四つ這いとなり頭と背中を床と平行にします。
腹筋を意識しながら頭とお尻が引っ張りあうように背中を伸張します。
右図のように背中が曲がったり、顔が上がらないように注意する。

その2

その1の方法に腕と脚が加わっています。
左右対角線上に腕と脚を挙げて保持します。
腕や脚が頭や背中よりも上がらないように注意します。
腰が反ってしまう場合はその1までに留める。または片腕、片脚から始めて下さい。

  • 今回紹介したエクササイズの後には必ず同じく紹介した「痛みの検査」をして下さい。
    その際には、床と指先までの距離が近づいたか、痛みは軽減したかを確認し効果のあった場合継続して実施してみて下さい。

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Ⅳ.日常生活上の注意

ⅰ 就寝

一般的にですが腰痛の方は硬めのベッドがよいとされています。柔らかいベッドでは体の重い部分(特に胸とお尻)が沈み込み腰が反る形となりあまり良い姿勢とはいえません。

ⅱ 座位

座っている際、腰が真っ直ぐの状態を0%とし、1番腰を曲げた状態を100%と考えた場合。各座り方での腰の曲がり具合を表すとあぐらが64,4%と曲がりが強く、椅子座位が42,4%、正座が-2,4%となっており正座が最も真っ直ぐに近い状態とされています。また腰の曲がりが強いほどヘルニアなどの原因となる椎間板への負荷は強いとされています。

椅子座位の場合、坐面角度と背もたれ角度によって腰にかかる負担は変わってきます。

これらをもとにみると、作業中は坐面角度5°、背もたれ角度105°が適切である。休息時には坐面角度15~20°、背もたれ角度110~115°がよく、背もたれも大きく、肘掛けの付いたものが良いとされています。しかし、どのような座位においても長時間の座位保持は腰痛の原因となるので最低1時間に1回は他の姿勢・運動を行うようにする。仮に席を外せなくても今回紹介した骨盤の前後運動を行うようにしたほうが良いでしょう。

ⅲ 立位

立位姿勢においては①背中を常にまっすぐにする②腹筋の収縮を意識する③お尻の収縮を意識する④膝を軽く曲げるなど意識することが大切です。長時間の立位姿勢が続く場合は片脚を踏み台の上に交互に乗せて作業したり、合間にしゃがむ運動を挿むなどし同じ姿勢を続けない工夫も必要です。

ⅳ 物の持ち上げ方

一般的には体を前傾させた持ち上げ方ではなく、体を前傾させずに一度しゃがみ込み膝を曲げた持ち上げ方が薦められています。加えてできるだけ足をそろえた方法ではなく、どちらかの足を一歩前に踏み出した持ち上げ方が良いでしょう。

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Ⅴ.まとめ

今回の講座では簡単に出来る腰痛検査とそれらに対するエクササイズを紹介しました。
はじめに記載したとおり腰痛の原因は多種多様で今回紹介しただけでは不十分な点も多いのが実状です。
最も重要なことは痛みが重症化・長期化する前に未然に予防することが重要です。
早期に専門医の診察やリハビリによる運動療法など指導を受ける事をお勧めします。
また今講座だけでなく前講座で紹介した「あし」「からだ」の運動も加えて参考にして頂けると幸いです。

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以上で今回のリハビリテーション講座を終了します。

次回は『家庭で出来るリハビリテーション⑥~肩こりの方のためのプログラム』を紹介する予定です。

(参考・引用文献)

  • 奈良勲:理学療法のとらえかたClinicalReasoning.文光堂
  • 伊藤俊一他:体幹に対する筋力トレーニング:セルフエクササイズ.理学療法vol23No.11:p1492-1497,メディカルプレス2006
  • 川瀬真史:腰痛に対する運動療法と生活指導.PTジャーナvol.41No.2:p123-130, 医学書店2007
  • 佐々木和広他:腰痛に対するセルフエクササイズ.理学療法vol.25No.7:p1031-1037,メディカルプレス2008