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家庭でできるリハビリテーション 4 ~関節の運動「嚥下体操と口腔ケア」~

今回は家庭で出来る嚥下体操・口腔ケアについて説明します。

Ⅰ.口腔ケア

1.口腔ケアについて

食事を口から食べていないと、唾液分泌が著しく少なくなり、自浄作用が低下して口腔内は劣悪な状態になっていきます。この時期こそ口腔ケアが必要です。
口腔ケアは摂食・嚥下訓練の第一歩としても位置づけされています。意識や口腔の知覚への刺激にもなり、注1)誤嚥性肺炎の予防にもなります。
経口摂取していない患者様は口腔内がひどく乾燥していることがあります。口腔内を清潔に保つとともに、口腔内をガーゼで湿らせるなどして、常に潤わせておくことが重要です。

注1).誤嚥性肺炎とは、通常食道へと送られる食物が、気管に入りおこる肺炎のことをいいます。

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2.手技
① 用具の準備
  • 歯ブラシ ⇒ 歯磨きに使用
  • 補助用具(スポンジブラシ、歯間ブラシ、舌ブラシ、ガーゼ等)
    ⇒ 歯の隙間や舌の上、口の中の粘膜を磨いたり、拭いたりすることに使用
  • コップ(水、お茶など)⇒ ブラシなどを洗ったり、ガーゼを湿らせる為に使用
  • ペンライト ⇒ 口の中を正確に見るために使用
  • エプロンやタオル ⇒ 汚れを防ぐ為に使用
  • 吸引チューブ
    ⇒ うがいなど出来ない人の口を洗う際に使用したり、痰の多い方のために使用

② 声掛け・覚醒を促す

胃や食道からの逆流を誘発しやすいので、口腔ケアは経管栄養注入中と終了から30分間は避けてください。

③ 体位を整える
  • 座位(車椅子・ベッド上)
  • 側臥位(ベッドアップができない場合)
    ⇒ 麻痺側は上にして、背中や足にクッションを使用します。
  • ベッドアップ30度
    ⇒ 頭部だけでも横向きにするといいです。
    状態がよくなれば、角度を徐々に上げていきます。
④ 食事用のエプロンをあてる
⑤ 緊張を解くためのリラクゼーションを心がける

口の中の感覚が過敏で、少しの刺激で口を閉じてしまう方などには、段階的な口腔ケアが必要です(指→綿棒→歯ブラシ)。

⑥ 口腔内の観察

ペンライトやデンタルミラーを使用し、より正確に観察できます。
義歯の具合も同時に観察します(適合具合、食べかすの付着具合)。

⑦ 実施
  • 義歯を使用している場合は、まず義歯を取り出す。
  • 口腔洗浄(状態がよければ、注2)誤嚥に十分注意してブクブクうがいまでする)。
    うがいができない場合、ガーゼやスポンジブラシなどで、口腔内全体をぬぐい、口腔内湿潤をさせると共に、大きな食物残渣をぬぐいとります。
  • ブラッシング(力は入れ過ぎず、内側部まで磨きます)。
  • 唾液などはこまめに取り除きます(スポンジブラシや吸引など使用)。
  • ムセや状態の悪化がないか確認する。
注2).誤嚥とは、通常食道へと送られる食べ物が、気管に入ることをいいます。

⑧ 口腔内洗浄
  • うがいができる方はブクブクうがいを行います。
  • うがいができない方は原則、麻痺側から健側に向かって水を流し、健側から吸引を行います。
  • 口腔内に残った水は、スポンジブラシ・ガーゼなどでぬぐいます。

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3.まとめ
  1. どのような心身状態にあっても、安全安楽に行いましょう。
  2. 本人の残存能力・機能最大限にいかしましょう。
  3. うがいに始まり、うがいに終わります。
  4. 歯のある人、ない人とわず歯ブラシや補助具を使用しましょう。
  5. 食前・食後の口腔ケアは、摂食・嚥下訓練の大前提です。

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Ⅱ.嚥下体操

1.嚥下体操について

食べる前の嚥下(飲み込み)準備になり、リラクゼーションの効果があります。また、食事開始直後のムセを軽減させます。
この体操は、摂食・嚥下障害の患者さま、全員が対象となります。

2.準備

あらかじめリラックスできる姿勢を整えます(座位・ベッドアップ)。また、パンフレットなど用意するとより分かりやすくなります。

3.方法
① 深呼吸をします。鼻から大きく息を吸って、口からゆっくり息を吐きます。
② 首の体操(前後・左右・回旋それぞれ10回程度)

③ 肩の体操(10回程度)

④ 体の体操(10回程度)

⑤ 口の体操(開閉・突出-引きそれぞれ10回程度)

⑥ 頬の体操(膨らまし-へこましそれぞれ10回程度)

⑦ 舌の体操(出入れ・左右・上下・回旋それぞれ10回程度)

4.まとめ
  1. 本人の状態に合わせて運動の負荷を考えてください。
  2. 呼吸、発話、嚥下に関わる器官を動かしていきます。
  3. 本人のやる気をおこすように配慮してください。

もしもお困りのことがありましたら、一度医師へ相談するか、リハビリスタッフへの相談をお勧めします。

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以上で今回のリハビリテーション講座はおわりです。
次回は、家庭でできるリハビリテーション⑤~腰痛の方のためのプログラム~について紹介する予定です。

(参考・引用文献)

  • 聖隷三方原病院嚥下チーム:嚥下障害ポケットマニュアル,医歯薬出版株式会社,2004,p64.145~152
  • 藤島一郎、柴本勇:動画でわかる 摂食・嚥下リハビリテーション,株式会社,中山書店,2005,p39.40