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ADLの介助の仕方8~コミュニケーションⅠ(言語面)~
今回はコミュニケーションの障害とコミュニケーション方法について説明します。
1.言語障害について
言語障害とは、言語の適切な理解、表出が困難な状態をいいます。言語障害が起こる原因としては、脳卒中など頭の病気によるもの、喉の使いすぎによるもの、心因性によるもの、生まれつきの難聴や自閉症などによる言葉の発達が遅れたことによるものなど多々あります。
今回はその中でも、脳卒中によっておこる言語障害、失語症と運動障害性構音障害について説明します。
今回はコミュニケーションの障害とコミュニケーション方法について説明します。
2.失語症と運動障害性構音障害について
私達は、話す内容は言語中枢で考えますが、話すときには、呼吸筋や口を動かす運動中枢を使います。言語中枢と運動中枢の連絡、さらに運動中枢から体の各部分へ連絡がうまくいって初めて、言葉を口にすることが出来ます。
失語症も構音障害も症状としては「言葉がでにくい」ことが多いため、見た目だけではどちらか判断することはなかなかできません。しかし、失語症では言語中枢がダメージを受けているために言葉を理解すること、話すこと、読むこと、書くこと全てに支障があります。
それに対して、構音障害は言語中枢はダメージを受けておらず、運動中枢の障害による麻痺により、(1)~(5)の発声・発語に必要な器官がうまく動かすことが出来ず、言葉が出にくい状態になっています。
このため、構音障害の方は人の言葉を理解できるため、対応法は全く異なります。
失語症 | 運動障害性構音障害 |
---|---|
言葉が分からない国に放り出されたようなもので、 (1)相手のいう言葉が理解できない (2)相手に伝えたいことがあるのに話せない (3)文字が読めない (4)書けない (5)計算が出来ない というような状態になる。 |
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3.コミュニケーションについて
コミュニケーションという語は、さまざまな領域や立場で用いられ、一般に「意思や概念、感情といったものの伝達と相互理解」を意味します。
実際に相手に何か伝える場合を考えると、伝達様式としては、
- ことば(音声・文字)
- 身振り
- 目や表情
- 行動
- 絵に描く
などいくつか方法が考えられます。
1のようにことばを用いる方法をバーバルコミュニケーション、2~5のようにことばを用いない方法をノンバーバルコミュニケーションといい、この両方でコミュニケーションは成り立っています。
4.失語症の方へのコミュニケーション方法について
失語症の治療はことばの回復という目的はもちろんですが、コミュニケーション方法を豊かにすることがもっと大きな目標です。
失語症の人にとって、何よりも大切なのは、言語訓練の成果を生活で活かすことです。
コミュニケーションの最も基本的な場所は自宅です。
具体的なコミュニケーション方法は、患者さんやその回復過程によって異なりますので、ST(言語聴覚士)に相談してみてください。
5.構音障害の方へのコミュニケーション方法について
発症直後は発話が最も不明瞭な時期です。コミュニケーション手段の獲得は重要ですが、この時期は特に、心理面からも意志の疎通を図ることが重要です。
6.まとめ
失語症、運動障害性構音障害も含め、言語障害が起こると、言葉を理解したり、表出したりする能力に制限が残る場合が多いですが、残された能力でよりよいコミュニケーションをとる工夫をすることは非常に重要です。
本人の努力や工夫もありますが、周囲がコミュニケーションの上手な相手であるかという点も大きな要因になっています。
病気や患者さんによってコミュニケーションのとり方は異なるので、もしもお困りのことがありましたら、一度医師へ相談するか、リハビリスタッフへの相談をお勧めします。
以上で、今回のリハビリテーション講座を終わります。
次回は『コミュニケーションⅡ~環境・機器』を紹介する予定です。
(参考・引用文献)
- 加藤正弘、小嶋知幸監修:失語症の全てがわかる本,株式会社講談社,p18.19.48.49.59~79
- 日本言語聴覚士協会編著:言語聴覚療法臨床マニュアル,共同医書出版社2002,p6.7
- 倉内紀子編著:言語聴覚障害総論Ⅰ,建泉社,p18.19
- 廣瀬肇、柴田貞雄、白坂康俊著:言語聴覚士のための運動障害性構音障害学,医歯薬出版株式会社,301~304