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ADLの介助の仕方7~入浴について~
今回は、「入浴の介助」について紹介していきます。
入浴の動作は浴室が滑りやすいなどのため、転倒の危険性を伴う、難しい動作の1つです。より安全に行うためには、環境の調整が重要になります。
まずは、洗体・洗髪について紹介します。
からだを洗う(右片マヒの場合)
壁に固定出来るシャワーを利用すると片手での洗髪が可能になります。
洗体、洗髪は背もたれ付きの安定した椅子や台に座って洗うことで安全に行なえます。
—背中および健側の手が洗いにくい場合—
タオルの一端にループをつけた、ループ付きタオルまたは長柄ブラシを使用するとよいでしょう。
- ループ付きタオル
- マヒ側の手に引っ掛けてタオルを背部にまわし、よい方の手で他端を握る。健側上方へ引っ張る事により背中を洗うことが出来る。
- 長柄ブラシ
- 柄が長いため、片手で背中を洗うことが出来る。
次に、浴槽の出入りの方法について説明します。
浴室について
立ってまたぐより、腰かけに座って移動する方が安全に行なえます。
浴槽の外に浴槽の縁と同じ高さの椅子あるいはシャワーチェアーを備えることで、浴槽の出入りが容易になる。
椅子の向きは浴槽内に入った状態で壁側によい方がくるようにするとよい。
浴槽のタイプはいろいろありますが、ここでは一般的な半埋込み式の浴槽の出入りについて紹介します。
浴槽の入り方(右片マヒの場合)
- 浴槽外の椅子(シャワーチェアー)に腰掛け、健側の足を湯船に入れる。
- マヒ側の足をよい方の手で持ち上げて湯船に入れる。
- 椅子(シャワーチェアー)から槽の縁まで殿部をずらす。
- 浴槽の底に足がついたら手すりを握り立ち上がる。
- 手すりを下方に持ちかえて、ゆっくり腰をおろし、湯船にはいる。
浴槽の出方(右片マヒの場合)
- 健側の足を深くまげ、手すりを支えに腰を浮かせ、立ち上がる。
- 浴槽の縁に腰かける。
- 健側の手でマヒ側の足を持ち上げ湯船から出す。
- 健側の足を湯船から出す。
- 殿部を浴槽の縁から椅子の上にずらす。
- 浴槽内からの立ち上がりが困難な場合
- 立ち上がりが困難な場合には、あらかじめ浴槽内に低い台などを置いておくと立ち上がりが容易になります。
続いて、介助の方法について紹介します。
介助の場合
介助者はマヒ側に立ち、上記の過程で出来ない部分を手助けします。立ち座りの際は、腰またはわきを支える、もしくは腰に紐を巻きそれを持つなどして介助を行うと良いでしょう。
入浴動作は手すりの設置や補高椅子の利用など環境改善を行い入浴する事が望ましいです。片マヒ者の入浴は最も大変な動作であり、かつ危険も伴うため、できれば介助がつく方が安全に行なえます。自宅での入浴が難しい場合、デイサービスや訪問入浴などの利用を検討することをお勧めします。
以上で、今回のリハビリテーション講座を終わります。
次回は『~コミュニケーションⅠ(言語面)~』を紹介する予定です。
(参考・引用文献)
- 一般社団法人日本作業療法士協会監修:作業療法全書第10巻作業療法技術論2「日常生活活動」,㈱共同医書出版社,2005,p193.
- 土屋弘吉,今田拓,大川嗣雄:日常生活活動(動作)—評価と訓練の実際—,医歯薬出版株式会社,2003,p166.
- 主婦と生活社:大活字版絵で見る介護,㈱主婦と生活社,2000,p48‐51.
- 藤田勉:脳卒中最前線-急性期の診断からリハビリテーションまで-第2版,医歯薬出版,2002,p197-199
- 野尻晋一:リハビリテーションからみた介護技術,中央法規出版株式会社,2006,p145‐148