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腎・腎臓疾患について

はじめに

人間の体の中でどちらか一方を取っても生きていける臓器があります。それは腎臓です。
最近、臓器移植の話が話題になっていますが、腎臓疾患の患者さんにとって臓器移植は早くから関心のある話題の1つでしょう。なぜなら、角膜や腎臓移植は心臓や肺などより早めに行われ、成功率もよく耳にしますし、何より腎臓は生体からの移植も可能だからです。
ですから、従来、治らなかった腎臓疾患患者さんも臓器移植や人工透析などの成果で長生きできるようになってきました。そのため、患者さんの数は、年々増加傾向にあると言われています。
そこで今回は、泌尿器科と呼ばれる診療科の中でも特に治療することの多い病気や、腎臓のしくみについて学習をしていきましょう。

腎臓の仕組みって?

まず、泌尿器科でみる臓器にはどんなものがあるでしょう?
泌尿器と呼び名がある位ですから当然“おしっこを作る”ことに関与しています。1番の大元、尿を造る工場「腎臓」があります。
この「腎臓」で作られた尿は“尿管”という道を通って『膀胱』という倉庫に送られます。『膀胱』に送られた尿はある一定の量になるまで貯められて、その後トイレの中へ‘尿道’という道を流れて排出されます。
たった4つの臓器と器官で【排尿】というおしっこを作って体の外へ出す仕組みは成り立っています。

それでは、その中でも特に尿の生産工場である「腎臓」にスポットを当てて話を進めていきます。

腎臓は、両側腰部にあってそら豆の形をしていることは御存知と思います。大きさは人のこぶし大で約120~150gの重さです。そして、尿を作って出す排泄機能とホルモンを作る内分泌腺としての働きをします。では、腎臓の働きを少し勉強してみましょう。

腎臓で尿を造るには2つの大きな役割が必要になってきます。1つは、糸球体と呼ばれる所でのろ過、もう1つが尿細管で行われる再吸収および分泌です。この糸球体は腎臓の中に当然あります。
腎臓をまん中からまっぷたつに割ってみると指を広げたような形をしたものが存在します。指先に毛を生やしたようなフワフワしたものを髄質と呼び、この中に糸球体があります。この糸球体には1本の尿細管と呼ばれる穴の開いたようなろ過装置が付いていて、ここを流れる尿の素が通るうちどんどんろ過され体に必要なものを再び吸い上げていきます。
この糸球体と尿細管を合わせたものをネフロンと呼んでいます。実はこのネフロンが腎機能の単位になります。

健康成人では約、40~50mmHgのろ過圧で1分間に100~150ml がろ過されて糸球体ろ過液が作られます。
これは、24時間で100~150lになります。この量を具体的に言うと、お風呂場の浴槽、約1杯分に相当します。そのうち1日に出る尿の量はこの約1%で1000~2000mlですから、残り99%以上が尿細管で再吸収されることになります。
これが腎臓が行う体の浄化つまり、尿を作って体に不要となった物質を尿という形にして体の外へ排出する働きになります。
ところが、このネフロンで尿を再吸収するするメカニズムには浸透圧と呼ばれる圧が関係しているのです。血管の中の圧とネフロンの圧がお互い、引いたり押したりして、吸収する量を決めているのです。
ですから、どちらかの圧が変わるような状態になると、この働きがおかしくなります。
そこで、この圧を調節するために働くのがもう一つの働き、ホルモン分泌です。実はこのホルモン、体の中にある体液のバランスを保つために重要なものなのです。
汗をかいたり、吐いたりして体の中の水分やミネラルが減ったりすると自然にバランスよく調節するようになっています。ですから、例えば血圧の調節として働いたり、体内の水の量を調節したりするものとして存在しています。
こう学習すると本当に人間の体はよくできているんですね。

ではこのような大切な働きをする腎臓に病気という異常が起こったらどうなるのでしょう?
さぞかし苦しい辛い症状ができのでしょうか。いいえ。その逆です。以外と腎疾患は、一般に初期における自覚症状に乏しく、特異な病状を呈することも少ないため、排尿および尿の異常を知ることがまず1番のポイントになります。
そこでこれからその異常について少し学習していきましょう。

おしっこ(尿)の異常って?

排尿異常として、まず回数の異常があります。正常の膀胱容量は約400mlですから1日尿量1000~2000mlとすれば排尿回数は1日4~6回になります。このように考えると2回以下あるいは7~8回以上は排尿回数の異常であり、病的ということになります。
排尿回数が多くなることを頻尿といい、頻尿には1日尿量の増加(多尿)や、膀胱容量の減少、膀胱炎の刺激、残尿、神経性のものがあります。その中でも夜間に3回以上排尿があれば夜間頻尿といって夕方の多量の飲水・前立腺肥大・腎臓尿濃縮機能の低下などの原因でおこります。
宴会でアルコールを飲みすぎた晩や、年齢が高くなって尿が出にくくなって何回もトイレに行くなどはまさにこの症状になります。このような状態が続くと、膀胱の中に温かくて体に要らない尿が溜まったままになりますので、あまり良くありませんね。

次に尿失禁ですが、これは本人の意思に関係なく尿が漏れることです。括約筋の機能異常・腹圧・膀胱炎・膀胱内の容量オーバーなどの時にみられます。くしゃみをしたら尿が漏れたりするものこの中に含まれます。

また、尿は腎臓でちゃんと造られ、膀胱まで運ばれているのに貯まった尿が排尿できない状態、つまり尿道が閉塞するために起こるのを尿閉といいます。また、残尿感とは実際に尿が残っているとは限らないのですが、排尿し終わっても尿が残っている感じがすることをいいます。

今、いくつかの起こりやすい症状を挙げてみましたがこのような症状を経験したことがありますか?経験がない方!ちょっと気を付けてこれから御自分のおしっこをチェックしてみませんか?まずは、自分の健康状態をみるために。

体におこる症状って?

もう少し頑張って学習してみましょう。今度は尿の異常についてです。
1日の尿量は飲水量や食事の内容によって変化しますが、1日に生産される不要な代謝物を尿中に排泄するためには最低500ml/日以上は必要になります。では、尿の量が違うとどんなことになるのでしょう。
まず、言葉の使い方から始めましょう。尿の量が減ると2つの呼び名が、多くなると1つの呼び名が生まれます。

尿の量の変化

尿量が100ml以下になる場合を『無尿』、500ml以下を『乏尿』と呼びます。1日尿量が500ml以下になると血液中の尿素窒素という物質の値が上昇します、しかし、特徴的な症状を示すことは少ないといわれています。
しかし、尿量が低下するということは体内に余分な水分や老廃物が残ってしまうのでむくんだりすることがあります。

同じように、尿量が3000ml以上になることを『多尿』と呼んでいます。勿論、先程の尿閉も尿の量が減りますが、大きな違いは腎臓そのもので尿が作られているかないかという点です。体の外に多くの水分が出るわけですから、脱水に陥りやすくなるのは理解できますね。

尿の色や性状の変化

次に尿の性状ですが、一般に尿の中は無菌状態なので黄色~淡黄色をしており透んでいます。何らかの障害で腎臓のろ過機能が低下したり、腎臓や膀胱内に炎症があると、この性状に異常が生じます。
例えば、皆さんが体験される性状の異なった症状に、尿の濁った状態(混濁尿)があります。白く濁ったり、中にはふわふわとした白い綿のようなものが混ざっている時がそうですね。
手軽なチェック方法は、透明なコップに尿を入れ、底がきれいに見えなければまず、混濁尿でしょう。これは、腎臓や膀胱の中に血液や膿、細菌などが存在し、尿中に含まれる現象です。この原因疾患としてよく耳にするのが膀胱炎や尿路結石があります。
『血尿』は、腎臓から尿道口までの間に何らかの原因で出血がおこり、尿の中に血液が混じった状態をいいます。この血尿には程度があり、ハッキリと見た目でわかるものと顕微鏡のように精密な機械で発見するものとがあります。ですから色も真っ赤に染まるものや、少し色の変わったレンガ色のものもあります。
また、「出血しているから痛みがある」とも限らず、「あれ?どうも無いのになぜ血が?」と思うことも多いようです。しかし、尿の中に血が混ざっているわけですから当然見た瞬間驚きますし、また怖いなど不安になる症状の1つでしょう。

からだがむくむ

さて、先ほど尿量が減少するとむくみが出ると学びました。これからそのむくみについて学習していきましょう。
皆さんがむくみを感じるときはどんな時でしょうか。
朝起きて鏡を見たら眼が腫れていた。とか、夕方足がパンパンに腫れてつま先がジンジンと痛い。指輪がきついと感じたり、こぶしが握りにくいなど、体のいたるところでむくみは出没しています。
このむくみは通称『浮腫』と呼ばれており、その原因は様々です。
炎症による浮腫・静脈の中の静脈量が増えて体内の水が血液中に入ってくる浮腫・体内のたんぱく質の量が減ったことで起こる浮腫・腎臓そのものの機能低下によって生じたろ過不足によって生じる浮腫などがあります。

では、腎臓が原因で出没するむくみにはどんな特徴があるのでしょうか。まぶたに出るむくみは糸球体腎炎に起こりやすいものです。その他は下半身に出やすいと言われています。
腎臓疾患の患者さんが夕方靴がきつくなりやすかったり、足が重くなるというのはまさにその特徴でしょう。このような症状の他に皆さんにもできるチェックの方法を1つ御紹介しましょう。
御自分の向う脛のあたりを指で押してみて下さい。指をはずしても足にその指の形が残っていたらむくみの出ている証拠です。

このようなむくみは体重のだいたい10%以上の水(体重1kg当り50ml以上)が体内に残っている場合に現れます。特に強く症状のあらわれる病名にネフローゼ症候群があります。

痛みと発熱

さあ、もうそろそろラストスパートです。最後に皆さんが1番気になるであろう痛みと熱について学びを深めていきましょう。

痛みはあまり感じたくないものですが、腎臓に関係する痛みというのもあります。腎臓はだいたい腰のあたりにありますが、どちらかというと背中の方によっています。従って腎臓に関連した痛みは、背中の方に響く、しかも連続して起こるという特徴があります。
それは切り傷のように鋭い痛みとは異なり、横腹から腰への重苦しい鈍い痛みです。そして、腎臓は2つありますので、病気や炎症のある方に限られています。もう1つの特徴は叩くと響くということです。このような特徴をもつ痛みは、腎盂腎炎や腎結石などで見られます。
また、尿の流れる腎臓と膀胱を結ぶ尿管が詰まったりすると、とても強い痛みが起こります。冷や汗や吐き気、息が荒く速くなり、脈も速いといったひどい痛みは石が詰まったときに起こります。しかし、このような痛みはあまり経験したくないものです。

さて同じ痛みでも、身近によく体験されることが多いのは膀胱炎などでおこる排尿時の痛みです。やけるような鋭い痛みが排尿の度に起こりますから、たまったものではありません。これらは膀胱から尿道までの間におこりやすい痛みの特徴です。中には先程と同じく押さえると痛みの強くなる場合もあります。

痛みと来れば、次は皆さんがよく体験する発熱。腎臓疾患でも熱は上がります。しかし、あまり多くは伴ないません。
特徴としては、やはり感染症を伴なうと高熱がでます。急性腎盂炎や腎盂腎炎など尿路感染症を起こすと寒気や震えを起こし、39.0℃以上の熱が出る場合もあります。このような発熱はやはり体力を萎えさせますし、とてもきつい症状の1つですね。
この発熱、全身に大きな影響を与えることが周知のことでしょう。腎臓にとってもそうです。なぜなら、熱を下げようとする体のメカニズムが働き、体内からの水分がたくさん出ていくからです。時に汗で、時には荒い呼吸のたびにその水分は失われていきます。血液も水分を失って濃くなりますから、尿の量も減ってしまうのです。ですから、是が非でも痛みや熱の上がる病気にはなりたくないものです。


さて、もうそろそろ、眼も疲れてきたことでしょうから、今回の学習はこれ位にしておきましょう。
次回は皆さん、関心のある腎臓と膀胱の病気とその症状、検査や治療について特集を組みたいと思っています。
健康な生活が出来ますように、最後は日常生活の過ごし方、心得について勉強していきたいと思います。
では、次回のシリーズまで、ごきげんよう。

引用・参考文献
  • 境 章:目でみるからだのメカニズム.医学書院.1998.4.1
  • 紫芝良昌:新版看護学全書第21巻成人看護学6.メヂカルフレンド社.1998.12.15