トップページ  > 家庭の医学シリーズ  > 精神科 > ストレスについて

ストレス

現代社会には様々なストレスが存在しています。ストレスを引き起こす原因(ストレッサー)もまた多岐にわたり、その感じ方も人によって大きく変わります。

しかしストレスを放置すると、神経失調、機能失調、心身症など身体の病気として発現し、生活や仕事(学業)に支障をきたすことがあります。

ストレスを解消し快適な生活を送るためには、その原因を知りその解決方法を見つけることが大切です。今回はストレスについて解説します。

ストレスとは・・・

ストレス(Stress)とは、もともと重圧、圧迫、圧力、歪み、(精神的・感情的な)緊張を意味しています。
とくに医学的には「何らかの刺激が体に加わった結果、体が示すゆがみや変調」と表現することができるでしょう。
現代社会はストレス社会ともいわれており、総理府の調査によれば、全体の55%の人が「精神的疲労やストレスを感じている」との報告もあります。

生活とストレス(ライフイベント)

順位 日常の出来事 ストレス強度 順位 日常の出来事 ストレス強度
配偶者の死 100 22 仕事上の地位の変化 29
離婚 73 23 子女の結婚 29
夫婦別居 65 24 親戚関係でのトラブル 29
刑務所への収容 63 25 個人的な成功 28
近親者の死亡 63 26 妻の就職・退職 26
本人の大きなけがや病気 53 27 進学・卒業 26
結婚 50 28 生活環境の変化 25
失業 47 29 個人的習慣の変更 24
夫婦の和解 45 30 上司とのトラブル 23
10 退職・引退 45 31 労働時間や労働条件の変化 20
11 家族の健康の変化 44 32 転居 20
12 妊娠 40 33 転校 20
13 性生活の困難 39 34 レクリエーションの変化 19
14 新しい家族メンバーの加入 39 35 社会活動の変化 19
15 仕事上の変化 39 36 宗教活動の変化 18
16 家族上の変化 38 37 一万ドル以下の借金 17
17 親友の死 37 38 睡眠習慣の変化 16
18 配置転換・転勤 35 39 家族の数の変化 15
19 夫婦ゲンカの回数の変化 35 40 食生活の変化 15
20 一万ドル以上の借金 31 41 長期休暇 13
21 借金やローンの抵当流れ 30 42 クリスマス 12

上記の表は、1968年にアメリカの精神科医Thomas Holmes と Richard Raheによって発表された 「Holmes and Rahe stress scale」に基づいています<Holmes TH, Rahe RH.J Psychosom Res. 1967 Aug;11(2):213-8>。
多くの場面で取り上げられていますが、現在では社会環境も変化し、それに伴って個人が感じるストレス状況にも違いが生じでいるはずです。
また、同じようなストレス状況であっても、その方の性格やこれまでの体験、その人を支えてくれる人がいる、いないなどによっても、個々の受け取り方は随分違ったものになることでしょう。
他にも、一見ある人にとって好ましい出来事も他の人にとってはストレスと感じることがあります。
以上のようなことを念頭に置いて、この尺度は自分のストレスを考える上での一つのヒント、大まかな目安としてご参考にして下さい。

ストレスを引き起こす原因(ストレッサー)

ストレッサーは、主に次の4つに分けることができます。

  1. 物理的ストレッサー/温度による刺激、騒音などによる刺激など
  2. 化学的ストレッサー/酸素の欠乏・過多、薬害、栄養の不足など
  3. 生物的ストレッサー/病原菌などによる病気によるもの
  4. 精神的ストレッサー/人間関係のトラブル、精神的な苦痛、怒り、不安、憎しみ、緊張など

このうち「ストレスがたまる」と感じ人を悩ませている原因のほとんどは 4.精神的ストレッサーによるものです。
では、この精神的ストレッサーをもう少し詳しくみてみましょう。

精神的ストレッサー

(1)人間関係の問題
1.親子、夫婦、親族、職場の上司と部下、同僚間の葛藤や問題
2.友達関係(いじめの問題)、生徒と教師との関係
3.死別、別離など対象を失うことによる悲しみ
(2)役割上の問題
1.家庭/父、母、夫、妻としての役割の負担や欠如による苦痛や空虚感
2.職場/能力に適応しない仕事の内容(今の仕事が能力以上または能力以下)、適性の問題、過重労働など
3.学校/学業や進学の問題
4.失業、退職、子どもの自立などによる役割の喪失
(3)欲求の阻害の問題
1.安全や健康への欲求の阻害
2.所有欲、支配欲、権力欲などの阻害
3.倫理観の阻害

ストレスによる生体の反応

そもそも人間には、刻々と変化する外界の環境に対して生体を安定した状態に保とうとする働きがあります。これをホメオスタシス(生体の恒常性)と呼んでいます。

ホメオスタシスは、サイトカイン(免疫細胞のあいだで情報伝達を担うタンパク質の総称)、ホルモン、神経伝達物質が相互に作用し、神経、免疫、内分泌を常に正常に保とうとしています。

ところが過剰なストレスが引き起こされると、大脳にある視床下部という部位が刺激され、本来ストレッサーの攻撃に対して体を防御するカテコールアミンやコルチゾールなどのホルモンが過剰に分泌され、脳下垂体を刺激しさまざまなストレス疾患の原因となります。

ストレスによる体の変化

初  期 進行期
感 情 緊張、不安、イライラ、焦燥感 抑うつ、無気力
思 考 初期は解決思考 集中力、判断力の低下
意 欲 亢進状態または普通 気分、根気の低下
心身状態 無症状、自律神経症、睡眠障害、不安障害(神経症)
心身症(高血圧、潰瘍、じんま疹)
睡眠障害、不安障害(神経症)
うつ病、心身症(症状固定、増悪)

■さまざまな「心の病」症候群
現代のストレス社会においては、さまざまな「心の病」症候群が増加しています。ここでは、そのうちのいくつかを紹介します。

燃え尽き症候群(バーンアウト・シンドローム)
それまで一つの物事に没頭していた人が身体的、情緒的な極度の疲労により、無気力や自己嫌悪、仕事拒否になること。活動的で理想が高く、仕事に全力で取り組む猛烈社員などに多くみられ、ある時突然燃え尽きたように働く意欲を失い、職場に適応できなくなる。
ピーターパン・シンドローム
情報化社会の中ではより専門化・高度化した知識・情報を必要としているため、既成社会の適応に対して常に不安を持ち、「大人」になかなかなろうとせず、また、「大人」になることを拒否する行動をとる。
空の巣症候群
夫婦と子どもで営んでいたはずの「愛の巣」が夫は仕事で留守がちとなり、子どもたちも思春期を迎えたり独り立ちするようになると、巣には主婦一人だけが残されるという虚ろな体験をする。抑うつ感や動悸などの身体症状がみられることもある。
無気力症候群
無関心、無気力、目標の喪失を自覚しながら治療を求めることは少ない。学業や仕事といった本分から逃避するが、それ以外では活発に活動する事例がみられる。厚生白書(平成9年)

ストレスによって起こる病気

神   経 血管性頭痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症、脳血管障害と後遺症、パーキンソン症候群など
精   神 不安神経症、ヒステリー、強迫神経症、心気症、うつ病、アルコール依存症、不眠症など
循環器 高血圧症、狭心症、心筋梗塞、不整脈、神経循環無力症など
心身状態 胃・十二指腸潰瘍、慢性胃炎、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、神経性無食欲症(拒食症)、多食症、神経性嘔吐症など
呼 吸 器 気管支喘息、慢性気管支炎、過換気症候群、神経性咳嗽など
泌尿器科 インポテンツ、夜尿症、過敏性膀胱など
内 分 泌 肥満症、糖尿病、心因性多尿症、頻尿症、神経因性膀胱など
整形外科 全身性筋痛症、痙性斜頸、書痙、チックなど
皮 膚 科 神経性皮膚炎、慢性蕁麻疹、円形脱毛症、多汗症、湿疹など
産婦人科 月経障害、更年期障害、不感症、不妊症など
小 児 科 登校拒否、チック、視覚障害、食行動異常、抜毛症、学習障害、自閉症など
耳鼻咽喉科 メニエル症候群、耳鳴り、嗄声、失声など

ストレス解消の一般的な方法

ストレスの原因 ストレス反応の例 解消方法
欲求不満
目標達成が妨げられている
精神的、情動的な反応
集中困難、記憶喪失、不安、恐怖、パニック、怒り、葛藤、攻撃的
認知療法的な解決方法
気づき・とらわれからの解放、自尊心・怒りの制御方法を学ぶ
葛藤
不安な状況、決断を迫られる状況
行動的な反応
喫煙、飲酒、過食、A型行動、社会的な引きこもり
行動療法的な解決方法
自己主張、社会的支援、柔軟性のある行動を学ぶ
重圧
時間的な重圧、精神的な重圧
生理学的な反応
不規則な呼吸、筋緊張、疼痛、倦怠感、動悸、発汗、口渇、消化不良、アレルギー、高血圧、抑うつ
生理学的な解決方法
呼吸法、気分転換、視覚化、瞑想、バイオフィードバック
用語解説
A型行動
  1. 自分の定めた目標を、達成しようとする持続的な強い推進力
  2. 競争を好に追求する傾向
  3. 永続的な功名心
  4. 時間に追われながらの多方面にわたる活動
  5. 具体的精神的速度を常に早めようとする習癖
  6. 身体的精神的な著しい過敏性
バイオフィードバック

行動科学に基づいて、問題行動を治すことを目的とした治療法の総称
条件づけ療法または学習療法とも呼ばれる

その他、ストレスの解消方法としては、十分な睡眠をとること、リラックスできる時間を持つことも大切です。
入浴(半身浴、温泉浴などが有効であると言われています)、音楽鑑賞、アロマテラビーなども有用になる場合もあります。
ただし過度のストレスにより心の余裕を持つことができなくなった場合など、一人で考え込まずに身近な人に相談することも一つの助けとなる場合もあります。

一人では解決できないストレスへの対応

ストレスに対する心理的なアプローチ

  1. 1対1の言葉による治療
  2. 家族との交流による治療
  3. 運動や作業による治療
  4. ソーシャルサポート
  5. 生活指導

ストレスに対する薬物治療

  1. セロトニン1Aアゴニスト
  2. SSRI : 選択的セロトニン再取り込み阻害剤
  3. SNRI : セロトニン・ノルアドレナリの再取り込み阻害剤
  4. ベンゾジアゼピン系抗不安剤
  5. 睡眠導入剤
  6. ベータ遮断剤

ストレスは放置すると大きな病気になりかねません。
ストレスが大きな病気になる前に、ストレスによる体の変化が気になるようでしたら、心療内科、精神科、内科など医療機関に気楽に相談することも大切です。

詳しいことは下記の病院にお問い合わせ下さい。

一般社団法人藤元メディカルシステム 藤元病院 医療相談室
〒885-0055 宮崎県都城市早鈴町17-4
電話:0986-25-1315 FAX :0986-25-2473