トップページ > 家庭の医学シリーズ > 精神科 > 神経症(ノイローゼ)について
ノイロ-ゼ(神経症)の概要
はじめに
心の病気の中で、神経症、いわゆるノイロ-ゼは、比較的よく聞く言葉です。
しかし、実際には病気そのものをきちんと理解した上で、その言葉が使用される事は、非常に少ないように思えます。
「うちの子は、赤ん坊の時にすごく手がかかったから、私は一時ノイロ-ゼになった」、「Aさんは、受験ノイロ-ゼで入院をしたらしい」などと、もしかすると躁うつ病や分裂病であるかも知れない精神障害全般が、「ノイロ-ゼ」の一言でかたづけられる傾向にあります。
つまり神経症そのものの概念が、一般的にはかなり不明瞭であるといえます。
しかし、このような表現には、その人の優しさが隠されているのかも分かりません。
状況次第で誰にでも起きうる神経症(ノイロ-ゼ)
神経症は、ドイツ語でノイロ-ゼ(Neurose)、英語でニュ-ロシス(neurosis)と言います。
前述のように、一般にノイロ-ゼは、心の病気を総称する言葉のように考えられていますが、そうではありません。
ノイロ-ゼとは、神経症のことを指します。その原因は、主としてわれわれが受けるストレスにあると言われておりますが、全ての動物は、生きている間中、なんらかのストレスを受けていると言っても過言ではないでしょう。
もしかしたら、植物もかなりのストレスを、特に人類から蒙っているやも知れません。
都会の汚れた空気の中に、無理に植えられた植物たちの悲鳴が聞こえてはきませんか。
わが国に限らず、特に現代社会は、過大で数えきれないほどのストレスを吐き出しています。
民族紛争や宗教戦争などによる悲惨な生活を強いられる人々、環境汚染から生じる病気の数々、原子力への怯え、人口の増加、人間関係の複雑化、個人対組織・国家、不況、就職難、家庭内暴力などなど、その要素をあげれば文字通りきりがありません。
マクロ的に言うならば、世界総神経症時代と表現してもおかしくないわけです。そして、その傾向は増えこそすれ、減ることはないでしょう。まさに、われわれはこのような状況下に生きているわけです。
つまりは、その人の心のキャパシティ(許容量)次第では、容易に神経症に捕らわれることになるでしょう。
「不安」が神経症の発生源
神経症の概念が混乱しているのは、専門家の間でも時代や国によって、神経症の概念がまちまちであること、あるいは、その原因や症状が心身両面にわたって実に複雑であることなどが関わっています。ただ、その原因や症状が複雑で多彩であるといっても、その現われ方に幾つかの共通点があり、その共通点によって神経症は、幾つかの種類に分けられています。
このように、神経症には幾つかの共通点がありますが、最も大きな共通点は、その症状の中心が「不安」であるという事でしょう。
どんな人でも、状況によっては、不安な気持ちを持つのは当然のことです。例えば試験を翌日に控えている時とか、大勢の前でスピ-チをしなければいけない時などには、不安や緊張のために眠れない、胸がドキドキするといった経験は、誰にでもあると思います。
これは、対象がある不安で「現実不安」とよばれています。「不安は、危険を知らせる信号」(フロイト)と言われるように、現実に危機が目の前で起こりそうな場合に、不安というものが全くなければ、私たちは命を守る事すらできなくなります。
しかし、不安を感じるだけで、神経症の症状になるわけではありません。神経症の場合には、この不安が本人にとって非常に苦しいものであり、時には耐えがたいほどの苦痛を伴うものなのです。更には、社会的にも職業的にも、その苦痛のために、何らかの支障が起こってくるようなレベルの不安なのです。しかも、その不安が、ある程度の期間以上、続いているというのも特徴です。
例えば、不安のために、電車やバスにも乗れなくなって、家から殆ど出られなくなってしまったり、何度手を洗っても、汚れが落ちない気がして、1日の大半を手を洗って過ごし、勉強や家事もろくにできなくなってしまった、といったような具合です。
また、不安があっても、いつもそれを自覚できるわけではありません。その不安を自覚していないで身体に症状が現れる場合もあります。
そういう点から、前述の試験前やスピ-チの前に多少眠れなかったり、胸がドキドキするといったレベルとは、全く違うという事がおわかりいただけると思います。
逆に神経症は、内因性の分裂病や躁うつ病などとも違います。素人には、判別することが非常に難しいものですが、専門医がきちんと総合的に診察すれば診断がつきます。
神経症には必ず原因がある
神経症には、幾つかの特徴があります。まず神経症が、原因がはっきりしない内因性の分裂病や躁うつ病などと違って、必ず精神的な悩み、それも悩みぬいた葛藤のようなものが原因となって引き起こされる事です。
神経症は、ある出来事や人間関係など、本人にとってかなり精神的に葛藤を引き起こすようなことがあって、それがもととなって引き起こされる病気です。ですから、もしその出来事がなければ、当然その神経症は起こらなかっただろうと、他の人も納得できるような原因があるものなのです。
例えば、夫婦関係や嫁・姑の問題、病気、近親者の死、受験、仕事上の悩み、学校でのいじめ、災害、環境の変化など、その原因は人によって様々です。
逆にいうと、その原因が解消すれば、自然と神経症も治まることが多いのです。
神経症は体に異常はない
パニック障害(panic disorder、エピソード性発作性不安)という神経症があります。
これは、比較的新しい障害で、突然、発作的に大きな不安が生じる病気です。同時に頻脈や動悸が起こったり、息が詰まったり、めまい感、しびれ感、発汗などを伴い、時には、「このまま死んでしまうのではないか」というくらいの恐怖感に襲われます。
救急車で病院にかけつける人も少なくありません。ところが、病院でいくら検査しても、身体的には全く異常がありません。
身体的に全く問題がないのに、身体症状までも訴えられるというのも神経症の特徴です。
神経症になりやすい性格とは?
神経症には、原因があるといいましたが、同じ出来事が起こっても、神経症になる人とならない人がいます。つまり、その出来事を受け取る側の人によって、不安の度合いが違い、それが病気の発症につながっていくわけです。その受け取る側の人の違いというのは、本人の性格が元になって表れるといわれています。
では、どんなタイプの人が神経症になりやすいのでしょうか?。ひと口に言うと偏った性格になりますが、ここでいくつかそのタイプをあげてみたいとおもいます。
- 神経質な人
- 感じやすくて傷つきやすい人
- 心配性な人
- 完全主義の人
- 自分に自信のない人
- 少しの汚れも気になる潔癖症の人
- 戸締まりなど何度も確認しなければ気のすまない確認癖のある人
- 依存的な人
- 引っ込み思案の人
- 内気で小心な人
- 融通のきかない人
- すぐ感情的になりやすい人
- 自己中心的な人
主な神経症の種類
種 類 | 症 状 |
---|---|
パニック障害 | 理由もなく激しい不安に襲われ(不安発作、パニック)、動悸や頻脈など身体の反応も伴う |
全般性不安障害 | 何となく漠然とした不安に常にとりつかれている状態 |
抑うつ神経症 | 何となく気分がふさぐ、重苦しい、悲観的といった気分がずっと続く |
心気症 | 自分の体に常に注意を払って、実際には病気でないのに、病気であると思い込む |
解離性障害 転換性障害(ヒステリ-) |
本人自身が気づかない心のゆがみによって、運動や感覚機能、意識などに障害が起こる |
強迫神経症 | 自分では不必要、不合理であるとわかっていながら、ある考えやイメ-ジを打ち消したり、衝動、行為などをやめる事ができない |
- 参考文献
- 「心の病、その精神病理 大原健士郎 編」
- 「専門医が語るよくわかるこころの病気 遠藤俊吉、森隆夫 編」
- 「心の病の治療ポイント 平井孝男 編」
- 「精神病 笠原嘉 編」
- 「心理学キ-ワ-ド 田島信元 編」
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