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内面的な問題や課題について
はじめに
前回の分裂病のシリ-ズでは、主な症状、診断基準、病型についての説明をさせて頂きましたが、今回は分裂病の方々についての、社会生活していく上での困難、家族の葛藤、病気とのつきあい、接し方、など、内面的な問題や課題をご説明させて頂きますので、どうぞお付き合い下さい。
病気への理解
人間には、生活していくうえで様々な災いが生じます。
例えば、災害、事故、火事、等の災難ですが、これらのことは友達や親族からの共感、協力を得られれば生きていけるものです。人々は互いに救いの手を差し伸べ、気持ちに共感し、大きな安らぎを与え、助けが必要な時に支えになれるものです。
しかし、分裂病の人々の内的世界については、なかなか理解しづらいものがあり、共感が乏しくならざるを得ません。
病気そのものが、殆どの人には不気味でなじみがなく、また恐いものだと思われがちです。
患者は奇抜な行動をとったり、奇妙なことを言ったり、他人と接触を避けたり、人に危害を加えようとすることもあるため、患者がなぜそのような行動をとるのか、何を考えているのか理解されず、恐怖と不信感、先入観、偏見の目で見られるなど、理解されにくい状況でもあります。
そのため、就職や住居を探すうえで、また地域で生活するうえで困難さを増し、病気を隠して生活している人々も大勢いることも否定できません。
共感が得られない分裂病の人々は、孤独で、出口の見えない暗闇に閉ざされています。
また、家族を結び付けるもの、心の痛手を癒すものがなく、家族全体の苦悩ともいえます。
そのため、本人は勿論、身近にいる家族や友達が、この病気はどのようなものなのか、内面にどのようなことが起こっているのか、どのようなことを体験しているのかなど、できるだけ多くのことを知る必要があります。
また、本人の体験・言葉に耳を傾け、本人の気持ちになり、どれだけつらい思いをしているのか、目に見えない声に感情をコントロ-ルできない苛立ち、家族・友達・周囲の人々に理解されない苦しさなど、共感することができれば、これまでの苦悩は次第に形を変え、周囲の者にとっても患者自身にとっても、大きな変化をもたらすものと思われます。
家族と分裂病
第二次世界大戦後、母親の悪い養育が分裂病の原因であるという学説は、家族全体が問題であるという方向へ拡大していきました。
また、分裂病の母親のおよそ半数が、「風変わりで、精神病に近い状態であるか、明らかに分裂病であった」と結論し、父親も「きわめて有害で、病的な影響を家族や患者に及ぼしている」といった家族の相互作用によって、分裂病が発生すると提唱する者も現れましたが、現在では、それらのことが立証されず、家族相互作用理論は廃れています。
患者の親達から、「しっかり育ててきたのにどうして…」「育てかたが悪かったのでは…」等と自分達を責める言葉をしばしば耳にしますが、一人の子供が分裂病を発病しても、その他の兄弟は健康であるというケ-スでも分かるように、養育が関係しているのではないのです。
つまり、その子は、分裂病の気質を持っており、それが何らかの刺激によって発病したと考える方が正しいでしょう。
しかし、最も身近にいる家族の接し方により、精神が不安定となったり、再発を繰り返したりすることも否定できません。
そのため、家族はどのような態度で接するべきかをよく学び、実践することが大切です。
- 家族の接し方
- 病気のことを理解し、共感します。
「警察が見張っている」「殺される」など、妄想様の発言をしたならば、それを最初から拒否するような発言は避け、「警察が見張っていると信じているのね。でも私には見えないし、いるとも思えない」というように、同意できないことをはっきりと言いいます。 - 同様の返答で「ああ、警察が見張っているね。でも大丈夫。私たちは何も悪い事をしていないのだから殺されることはないよ。もし、あなたが私の言う事をきかなかったら、きっと殺されるでしょうね」といった発言は、かえって混乱を招きます。その上、妄想的確信を強め、現実と自分の中でつくられている世界との区別をつけにくくしてしまいます。
- 自分の部屋に閉じこもったり、他の人々と接触を避ける行為がみられる時は、無理をして社会と関係を持つように働きかけるよりも、そっと見守り、必要な時にいつでも手を貸し、会話の相手をしてあげられるように、準備をしておくことが大切です。
無理に外へ連れ出しても刺激過剰になり、ストレスや混乱を招くことにもなりかねません。 - 楽しいと感じられる余暇活動を見つける為に、ストレスにならない程度にいろいろなことに挑戦させることも大切です。
家庭内でのお手伝いにしても、ストレスを高め、再発を招くのではないかという心配から、時に仕事を与える事をためらいがちです。
本人が怠け者であると、家族のほうは余計に再発を懸念して、仕事があっても病気を口実に自立の可能性を遠ざけてしまいがちです。
余暇活動や日常の簡単な仕事など、本人が自立の枠を拡げられるどうかをみるうえで大変有効なものですので、再発を恐れずに出来る範囲で見守るようにしましょう。 - 本人の望ましくない行動すべてを、病気のせいにすることはやめましょう。
人間はすべて些細な欠点をいろいろ持っていること、そして、世の中には、完璧な人などいないのだといういうことを改めて思いおこす必要があります。
どんな人でも失敗はつきものです。人々が時にしくじるのはあたりまえだと思われているように、本人もたまに過ちを犯すものだと、受けとめてあげることが必要です。 - 本人の許されない行動とはなにかを知ることも大切です。
攻撃的な、またはベッドでタバコを吸う様な危険行為は、決して許してはいけんません。
そういった行為をした場合にどうするかは、事前に明確に決めておく必要があります。
そして、家族は必要があれば、決めた通りに実行する心つくりをもたなくてはいけません。 - 家族が本人に引き込まれないようにすることも重要なことです。
家族は本人の言動に敏感に反応し、自分の生活全てをそれにつぎ込んでしまいがちですし、また、そのような状況では自立の可能性を阻害しかねません。家族自身にも息抜きが必要です。
たまには外出したり、趣味を見つけたり、同じような病気をもつ家族同士で話し合いができる場へ足を運んでみるなど、視野を広げるようにしましょう。
そうなるまでには時間がかかるかもしれませんが、自分は自分であって、誰の人生でもなく、自分の人生であるということを忘れないようにしましょう。
- 病気のことを理解し、共感します。
患者本人と分裂病
患者本人にとって、病気と共に生きていくことは、きわめて重要な課題です。
病気を持つ家族や本人は、再発というものを一番恐れていることでしょう。
再発をいかに防ぎ、よりよい生活ができるかを考えていかなければなりません。
- 患者自身の病気の接し方
- 自分が病気であることを認識します。
- 自分が発病した時には、どのような徴候が現れるかを知ることが大切です。
また、それを書き出して、家族や友人に見せ、知ってもらうこともよいでしょう。 - どのようなことが再発後の症状を悪化させるのか、例えば社会的なストレスなどを明確にし、それらを極力避けるようにします。
- 自分の調子が悪い時には無理をせず、一人で過ごす時間を増やす、仕事量を減らす、運動量を増やすなど、自分に合ったストレス発散方をみつけましょう。
- 薬をきちんと飲んでいないことが、再発原因になっています。それは、殆どの人に共通しています。
しっかりと通院、服薬を行い、不安な点や不明な点があれば主治医に相談し、体の調子に合わせて、薬の調整をしてもらうようにしましょう。 - 日常生活を規則正しくするように心がけましょう。分裂病と共に生きていくための一般的な戦略は、運動、栄養のある食事、余暇活動などですが、それは人によってまちまちですので、自分にあった戦略を見つけてみるのもよいでしょう。
- 分裂病には、その症状に波があることを忘れないようにしましょう。
再発は、病気の一過程であると理解する必要があります。多くの患者にとって、再発の回数を減らすことは可能ですが、再発そのものをなくしてしまうことは不可能なことです。
さいごに
これで2回にわたる分裂病についての説明を終わりますが、病気の内容、家族、本人の病気の接し方、考え方など、ここで説明した内容がすべて正しいという訳ではありません。
それぞれのご意見もあるかと思いますが、少しでもこれを目にした方々のお役にたてればと考えております。
- 参考文献
- 「E・フラ-・ト-リ-著、分裂病がわかる本」
詳しいことは下記の病院にお問い合わせ下さい。

社団法人八日会 藤元病院 医療相談室
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