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分裂病の主な症状、診断基準、病型について

はじめに

『分裂病』は、最もよくみられる精神病性障害の一つであり、有病率は全人口の約1%で、現在、精神科に入院中の患者の約6~8割が、分裂病だといわれています。
また、発病時期は思春期から青年期の間が最も多いのですが希には四十歳代以降にもみられます。

分裂病の症状としては、思考の異常が特徴的で、現実検討能力障害の為、日常生活上何らかの支障をきたしている人が多くいます。気分や認知の障害を伴う事もある為、話し方や話しの内容が異常だったり、幻覚や現実とは矛盾する考え(妄想)に行動が左右されたりもします。
また、錯乱し、見当識が損なわれること(失見当)もあり、病識が欠如していることもしばしばみられます。

精神医学が発達していない昔は、悪霊がとりついて、不可解な現象をひきおこしていると考えられていたため、『とりつかれた人』として霊媒師による悪霊退治や、祈とうが行われていたそうです。
しかし、現代医学の研究により、分裂病は大脳の機能障害であると言われていますが、現在もなおこの病気に関する研究が行われており、その病態は多岐にわたり、病気の定義や原因は、不十分なままにとどまっているのが現状であります。

分裂病という病名は、1911年にスイスの精神科医E・ブロイラーの命名によるものだということですが、それ以前にはドイツのE・クレペリンが、1886年に提唱した早発性痴呆という病名が、一般に使用されていました。

早発性痴呆とは、早期(青年期)に発病し、最後には精神荒廃をきたして痴呆状態になるという意味です。
ところが、この病気は青年期以外の年齢でも発病することがありますし、長い経過中に痴呆状態にならないケースも多く、むしろ快方に向かうケースもあることから、ブロイラーは早発性痴呆という病名は不適当だとし、精神分裂病と呼ぶことを提唱したのです。

精神分裂病は英語でschizophrenia(スキゾフレニア)、ドイツ語でSchizophrenie(シゾフレニー)といいますが、これはギリシャ語に由来し、schizoが「分裂病」を、phrenが「横隔膜」すなわち「心」を意味しています。

この章では、現在一般的に用いられている「分裂病」という用語を使用したいと思います。

症状

分裂病には気分障害と違って、一定の身体症状はみられません。しかし、長期間にわたって強い頭痛、全身のだるさ、不眠などを訴えて、一般診療科で検査や治療をうけることもあるように、きわめて複雑、多彩であります。

精神症状には、主として陽性症状と陰性症状の二つの症候群があります。

  1. 陽性症状というのは、幻覚(精神分裂病では幻聴が多く幻視は少ない)、妄想、思考奪取、思考伝播、させられ体験など、誰が見ても異常だとすぐわかる症状で、興奮、暴力行為、自殺行動などを伴うこともあります。
  2. これに対して、陰性症状とは、無為自閉(何もしないで、自分の殻に閉じこもっている)、感情鈍麻(感情が麻痺してぼんやりと時を過ごす)が主な症状です。

分裂病にみられる唯一の症状というのはありませんが、分裂病以外にはめったにみられないという症状がいくつかあるため、これらが認められると分裂病が強く疑われます。

以下は、ドイツの精神科医クルト・シュナイダ-が症状のリストを提唱したものです。

  1. 自分の考えが聞こえるという幻聴
  2. 二つの声が議論していると聞こえる幻聴
  3. 声がその人の行為をとやかく言うという幻聴
  4. なにか外部からの力が身体的感覚に影響を及ぼしているという、触覚にかかわる幻覚体験
  5. 考えが抜き取られるという体験
  6. 他人から考えを吹き込まれるという体験
  7. ラジオやテレビによって、自分の考えが他人に伝わり、広められているという確信
  8. 他人からある感情を吹き込まれているという体験
  9. 他人から抵抗しがたいある衝動を吹き込まれるという体験
  10. 行動が人形のように他人によって操られているという体験
  11. 普通のことが当人にとっては特別な意味をもっているという確信

この症状リストは、ヨ-ロッパでは分裂病の診断の枠組みとして広く用いられています。
分裂病患者の少なくとも四分の三は、これらの症状の一つ、あるいはそれ以上をもっていることが、数々の研究から示されいるそうですが、この症状があれば、この病気は確信できるというものでもありません。

これまで診断基準が曖昧だったため、各国・各地区で分裂病と診断される患者の数が、大幅に異なるという現象がおこってきました。
そこで、WHO(世界保健機構)が1980年に、DSM-Ⅲ(精神障害の診断および統計マニュアル第三版)という分かりやすい共通の診断基準を作成し、1994年改訂されたDSM-Ⅳが現在採用されています。
この体系のもとでは、分裂病の診断は以下の基準を満たしたときにだけ下されます。

  1. 病気の症状が少なくとも6ヶ月間にわたって存在する。
  2. 仕事の能力や社会的な役割、身の回りの世話などの面で、以前より機能が低下していること。
  3. 気質性精神障害(脳腫瘍や脳炎などはっきりとした脳の障害による精神障害、等)や知的障害による症状とは考えられない。
  4. 躁うつ病を示唆する症状は認められない。

以下、a、b、c、のいずれか一つがなくてはならない。

  1. 以下のうち二つが少なくとも一ヶ月間ほとんどいつも認められる。
    妄想、幻覚、まとまりのない会話(例:頻繁な脱線や支離滅裂)、ひどくまとまりのない行動・緊張病性の行動、陰性症状(例:感情の平板化、極度の無関心など)
  2. 当人が属する分化集団にとって思いもよらない奇抜な妄想。例えば、自分の考えが頭から抜き取られ、ラジオを通して広まっていると信じるなど。
  3. 行動を絶えずあれこれ批評される幻聴、あるいは二人かそれ以上の人の声が会話している幻聴が顕著に見られる。

病型

分裂病には、主に三つの病型があるといわれています。
型(解体型)、緊張型、妄想型といわれるものですが、これに属さない型で分類不能型、残遺型、単純型といわれるものもあります。

破瓜型(解体型)

分裂病の典型的な症状が、ほとんど現れるのがこのタイプで、人格崩壊に至ることが最も多いといわれています。破瓜という言葉は、思春期という意味でありますが、15~25歳の思春期から青年期に発病することが多いように、発病年齢が低いことが特徴です。発病当初は、ほとんど周囲に気付かれることなく、深く静かに潜伏し、症状が慢性的に進んでしまいます。

悲しみや喜びなどの感情に動かされることがなく、表情の無変化などの感情鈍麻や周囲への無関心、やる気のなさ(能動性減退)、不潔、などがみられます。ただ、とても感受性の強い部分が残っているため、些細なことでパニックになることもあります。また、まとまって筋道だった考えができなくなることもあり、はたから見れば、幼稚で馬鹿げた行動や発言をしているように、見えることもあります。

周囲が明らかに病気だと判断するまでに、学校、仕事に行きたがらない、入浴を嫌がる、といった生活面での乱れや、これまでとは少し性格が変わったな、といった程度の変化が見られます。その後、不安を訴えたりする軽い神経症程度の症状を示すこともあります。

緊張型

このタイプは、破瓜型と反対で、急に激しい症状が現れるのが特徴です。
特に理由もなく興奮して、やたらと動き回ったり、逆に周囲の働きかけに、全く答えなくなったりなどの意思発動の障害がみられますが、その症状により、興奮型、昏迷型の二つに分かれています。
これらの型は一見、正反対のようにもみえますが、背後に強い不安や緊張があることは共通しています。

  1. 興奮型
    取り立てて興奮するような刺激もないのに、何かソワソワと落ち着きなく動き回ったり、大声を出したり、しゃべり続けたりします。これらの症状は、周囲の事柄には全く無関係で、だれかの特定の人に襲いかかるとか、特定の条件でパニックに陥るといった一貫性はありません。
  2. 昏迷型
    取り立てて興奮するような刺激もないのに、何かソワソワと落ち着きなく動き回ったり、大声を出したり、しゃべり続けたりします。これらの症状は、周囲の事柄には全く無関係で、だれかの特定の人に襲いかかるとか、特定の条件でパニックに陥るといった一貫性はありません。

緊張型には興奮型や昏迷型にみられる症状以外に以下の特徴的な症状もみられます。

  1. カタレプシ-
    座った姿勢で、誰かに腕を高く持ち上げられても、そのままの姿勢でいつづけます。
  2. 反響動作
    相手の発言や動作をそのままオウム返しに真似します。
  3. 常同
    廊下を何度も行ったり来たりと往復を繰り返したり、同じ事を何度も言うといった、意味のない行為を繰り返します。
  4. 衒奇(げんき)
    つま先立ちで歩くなど、奇妙に見える行動がみられます。
  5. 拒絶
    食べ物を勧められても頑として食べないなど、働きかけに拒否をする態度をとり続けます。

妄想型

妄想型が発病する年齢は、破瓜型、緊張型より遅く、30歳前後が多いようです。
文字通り妄想が病気の中心となるものですが、破瓜型の断続的、一時的な妄想と違い、終始一貫したスト-リ-をもった幻覚や妄想を抱きます。

このタイプには、幻覚・妄想以外の症状はあまり認められず、妄想に関連すること以外での、おかしな行動や発言は見られません。

すれちがった人の咳払いや女子社員のお茶の置き方など、身の回りで起きている日常のことを、すべて被害妄想に結びつけ(関係妄想)、それが嫌がらせや何かの合図だと確信して、「周囲が会社の部下と特別な関係にあるとうわさしている」、「地域ぐるみで嫌がらせをする」、「自分は宇宙の使者だから皆が敵意をもっている」などの誇大妄想に発展することもあります。

分類不能型

破瓜型、緊張型、妄想型のどれにも属さない、混然一体となったもので、一貫した妄想と断続的な妄想が併せて出現したり、破瓜型に特徴的な子供っぽいふるまいと、一貫した誇大妄想が併存したりします。

残遺型

分裂病の症状が強く出て、その後治療の時間の経過とともに、治まった方に見られるものです。幻覚や妄想はほとんど消えていますが、感情の動きや鈍さや考え方はそのまま残っています。

時折おかしな行動をとったり、意味なく声を発したりします。また、連合弛緩といって、思考のつながりが論理的でない為、会話をしてもつながりが明確でなく、まとまりが悪い印象があります。中にはうつ状態を併発することあります。

単純型

破瓜型とよく似ていますが、幻覚や妄想は全くなく、自分の部屋に閉じこもって、人との接触を極端に嫌います。意欲もなく仕事や通学もできなくなってしまことがあります。


以上で分裂病のおおまかな病状、病型、診断基準についての説明を終わります。
病態が極めて多伎にわたるため、学者や研究者の中でも意見の分かれる病気であります。
ここで説明したものが、すべてというわけではありませんが、少しでも何かの参考にしていただけるのではないかと思います。

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参考文献
  • 「精神医学ハンドブック・山下 格 編」
  • 「分裂病がわかる本・E・フラ―・ト-リ-著」
  • 「よくわかる心の病気・遠藤 俊吉・森 隆夫 著」
  • 「精神医学ハンドブック・山下 格 編」
  • 「心の病、その精神病理・大原 健士郎 著」
  • 「レジデントのための精神医学・デビット・A・トム著」

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