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薬物依存について

依存性のある薬物

シンナー、覚せい剤、睡眠薬、咳どめ薬、マリファナ、コカインなどを対象とするアディクションが「薬物依存症」です。
シンナーや覚せい剤などの違法薬物だけでなく、本来は処方薬である睡眠薬や精神安定剤、合法的に使用されるアルコールやタバコも、同じように依存性をもった「薬物」であることには替わりはありません。

主な依存性薬物を、下の表にまとめてあります。

抑制作用 アルコール、アヘン、モルヒネ、シンナー、マリファナ、睡眠薬、精神安定剤、咳どめ薬 など
興奮作用 コカイン、覚せい剤、タバコ、咳どめ薬 など
幻覚作用 LSD、シンナー、マリファナ、PCP など

こうした薬物は中枢神経系に作用して、人工的に“気分を変える”働きをします。この働きを大別すると、抑制作用・興奮作用・幻覚作用の3つです。

抑制作用のある薬物はボーッと酔ったような気持ちよさを感じさせ、興奮作用のある薬物は高揚感やスカッとした気持ちを味わわせ、幻覚作用のある薬物は文字通り幻覚を生み出します。

「気分」が変化する

薬物依存症とは、一般的に次のような状態のことです。

  • その薬物を使用したいという抑えがたい欲求がある
  • いつ使用するか、どの程度使用するかなどのコントロールがきかない
  • 薬物によっては、使用をやめたり量を減らしたりすると身体的な離脱症状が出現する
  • 多くの薬物は、使用を続けるうちに耐性が生じ、量を増やさないと同じ効果が得られなくなる
  • その薬物を使用することが、生活上の他のことより優先することになる
  • その薬物を使用することで自分にとって有害な結果が起きていても、使用をやめることができない

どの薬物の依存症でも、依存に陥るプロセスはアルコール依存症の場合とほぼ共通ですが、薬物が「気分を変化させる」という面からあらためて説明しておきます。

ふつうの気分→多幸状態→ふつうの気分

薬物を使うことで、その人がもともと感じていた「ふつうの気分」を抜け出して、ハイになるなどの「多幸状態」を体験します。
効果が切れれば再び「ふつうの気分」に戻ります。

落ち込み状態→多幸状態→落ち込み状態

使用が習慣化するにつれ耐性が生じ、「多幸状態」になるための使用量が増えていきます。
この頃になると薬物なしでは「ふつうの状態」でもいられず、不安・イライラ・抑うつなど「落ち込み状態」を経験します。
そのため、どうやって薬物を手に入れ、使用するかということにとらわれるようになります。
こうして落ち込みと多幸との間を行きつ戻りつする生活になります。

ひどい落ち込み状態→ふつうの気分→ひどい落ち込み状態

さらに状態が進行すると、ハイな気分を味わうことは少なくなり、薬物の使用によってやっと「ふつうの気分」が維持できます。
薬物がないとひどい「落ち込み状態」に悩まされるだけでなく、薬物の種類によっては全身の震えや発汗・幻覚・嘔吐などさまざまな離脱症状が出現するため、もはや薬物なしの生活は考えられない状態となります。

違法薬物をやめられない場合、刑を受けるなど違法行為の責任を問われることになりますが、同時に、回復への治療・援助が欠かせません。しかし現在のところ、援助の体制はまだまだ不十分です。

薬物の種類

現在問題となっている主な薬物について、かんたんに説明しておきます。

シンナー

いわゆるシンナー、トルエン、ボンドなどをひとまとめにして「有機溶剤」と呼びます。
依存性のある主成分はトルエンです。ブームの始まりからおよそ20年が経過し、現在では小・中学生で使用が開始されるなど低年齢化が進んでいます。
他の違法薬物に比べ入手が比較的容易ですが、薬物としての危険性は非常に高く、吸飲中の事故死や自殺も多くみられます。
また、10代の遊びというイメージがありますが、30~40代の依存症者もいます。
シンナーから覚せい剤など他の薬物に移行していくケースも多いため、〈ゲイトウェイ・ドラッグ〉とも言われます。

シンナー依存症のもっとも大きな問題は、若年から使用が始まるため、人間関係の能力や問題に対処する能力を身につけるべき時期を“ラリッた”状態で過ごしてしまうことです。
回復のためには、生活の土台をひとつずつ作っていく作業が必要となります。
ごく最近になって回復者が増え始め、回復者を核とした援助のネットワークが広がりつつあります。

シンナー使用を早期に見分けるサインとして、息や衣服のシンナー臭、口の周囲が白く荒れる、部屋にビニール袋などやシンナーの容器・トルエンを入れるドリンク剤のビンなどがある、ろれつが回らなかったり妙にはしゃいでいることがある、行き先を言わない外出や一人で部屋にこもる時間が増える、成績が急に低下するなどがあげられます。
しかし、シンナーを取り上げたり行動を監視するのは逆効果になることが多く、むしろ使用の背景となっている家族関係の調整やコミュニケーションの建て直しなどがカギになる場合がしばしばあります。

高校の時、友だちに「おもしろいものがある」と言われて、やりたくもなかったけど、断る理由がなかった。
シンナーは……ぼうっとする感じ。至福感。どこかでカンカンと警笛がなっているような、今までに味わったことのない感じでした。

ヤバイ、と思った。それで、シンナーやらずにまじめに高校も大学も出て、就職して半年。そこで初めて挫折しました。人間関係がうまく行かなくて、出社拒否です。まわりは励ますんですよ。みんな通る道だからがんばれとか…… 励まされるほど「おれはダメだ」と落ち込みました。体調もひどいし。

結局、心身症と診断されて、3ヶ月の病休をもらいました。復職しかけた頃がつらくて・・・…ふとシンナーをやってみたんです。「これだ」と思いましたね。楽になれた。自分を受け入れてくれる世界がそこにあった。現実の世界とは別の、シンナーの世界が開けたんです。
シンナーは、他のドラッグとそこが違う。覚せい剤でも何でも、現実をうまくやるために使ったりするでしょ。「これがあればうまくいく」みたいな。シンナーは現実じゃない。実際、シンナー吸ってる間は何にもできませんよ。数ヶ月で幻覚が出て、吸い始めたとたんに人が現われる。天皇陛下が会いにきたりね。最後はブラックアウトして、気づくと1日たってる。時間が悠久という感じ。

でもいったん頂点を味わったら、あとは求めても得られない。ただブラックアウトしてるだけで、使っても苦しい、やめても苦しい。現実だけじゃなく、シンナーの世界もダメになった。やめて3年です。

イヤなことからは今も逃げたくなるけど、現実から逃げ出すことは考えなくなった。自分が対処できないことから逃げたっていいと思う。これから対処できる力をつけていけばいいんだから』

覚せい剤

戦後に「ヒロポン」の名で流行し、乱用が社会問題化したため法律で使用が禁止されました。
その後、何度かのブームを経て、現在では女性や若者に使用が広がっているのが特徴です。
「疲れがとれてスッキリする薬」「勉強や仕事の効率があがる」「やせる」などと使用を誘われるケースが増えています。
習慣化すると幻覚などの精神症状を起こしやすく、使用をやめても使用時のような幻覚が起こることがあります(フラッシュバック)。

高校中退して、新宿でヤクザの事務所に出入りしてた。
17 歳ぐらいかな。そして、シンナーの密売をやるようになって、ある時「ちょっと来い」と幹部の人に呼ばれた。そしたら目の前で粉を溶かしてるんだよね。「お前、やったことあるんだろ」。覚せい剤でしょ、まずいよ。「昔ちょっとやったことあるけど、今やめてるからいいです」なんて、やったことなかったのにウソついた。「そんなこと言ってないでイケよー。作っちゃったんだから」。あれは、今までの人生の中で一番ハイになった瞬間だったなぁ。髪の毛が逆立って、もう、あの気持ちよさは言葉にならない。

幻覚が出るようになったのは、逮捕されてからです。3回逮捕されたけど、全然やめる気はなかった。幻覚は、全部「警察関係」。ノックの音が聞こえて、覗くと警察が立ってる。友だちに電話しまくって「警察だ!」って騒ぐんで、アイツは危ないぞと言われるようになった。「今日は幻覚出ないでくれよ」と、祈るような気持ちで打ってた。友だちには、「オレは幻覚も出ない、食事もできるし、眠れる」とか言ってるわけ。なのに1人になると毛布かぶって、震えてる。ちょっとしたことに過敏になって、人間関係どんどん壊した。1ヶ月に5分間ぐらい「やめたい」と思うけど、思うそばから使ってるんだ。新聞でも、「警察」とか「麻薬」とかの文字だけパッと目に入ってくる。親が置いといたダルクのパンフも、見たら負けだと思うんだけど、どうしても目がいく。

ダルクのミーティングで、「こいつらも本当は薬使いたいんだ」ってわかって、安心したよ。すぐ逃げ帰って薬漬けだったけど、2度目にダルクにいったときは、「あの人たちに会いにいこう」って思った。それから何度かスリップしたけど、今は薬が止まってる。』

マリファナ・コカインなど

海外の薬物の流入が増え、若者を中心に使用が広がりつつあります。
一部の地域では、取締が厳しくなったシンナーに代わってマリファナなどが出回るようになったといわれます。
マリファナは比較的無害なイメージがありますが、依存症薬物であることに変わりはありません。
コカインは、効果が出現するのも消えるのも早いため、依存症へと至りやすいのが特徴です。

きっかけ?バンドの仲間からすすめられて。ハイになれる、楽しくなる・・・あの頃はそう思ってたよ。
今考えてみると、それまでがしんどかったんじゃないかな。心がギチギチになっていたんだ。そこへ、マリファナが「心地よいすきま」を作ってくれた。どう言ったらいいのかなー、脳細胞が溶かされて、ゆるむ感じ。マリファナは軽いドラッグだって言われるけど、僕はそう思わない。とくにヘビーでもないけど、そうだなぁ・・・…ドラッグの中でも特殊って感じ。フワッとして、「抜けられる」んだ。地面から足が離れるみたいな。僕はマリファナやって、それまで考えもしなかったことを考えるようになったよ。違う回路でものが見える。きれいだと思わなかったものがきれいに見える。とくに自然が、今までとは違って見えた。ものの見方は、ひとつだけじゃない。それがわかった。薬を使わなくても、そのことがわかる方法は他にもあるんだと思うけど、僕はマリファナやるまで、ひとつの見方しかなかったから。

だけど1度捕まってから、効き方が変わってきたね。隠れて吸うようになったし、バッド・トリップするようになった。いいトリップは、ふだん閉じているチャンネルが開く感じ。バッド・トリップは、開いたところから何か入ってきて、とらわれてしまう。楽しめなくなったんだ。それで次の薬を探した。またその次。自分の力とは違う何かで自分をコントロールできるという錯覚というか、妄想を抱いてた。

昔は、シンナーとか覚せい剤はダサイと思ってた。シャブ中なんかダサイからマリファナやヘロイン使ったのに、その僕が気づいてみたら、トイレで隠れて覚せい剤を打ってたんだ。』

睡眠薬・精神安定剤・鎮痛剤など

「ハイミナール」の流行に始まり、さまざまな向精神薬や鎮痛剤がブームを繰り返しています。
現在は「ハルシオン」などを中心に、処方薬を違法に入手しての使用が問題になっています。
向精神薬は副作用を少なくするため改良を重ねられていますが、乱用すれば依存症へのプロセスをたどります。
ことにアルコールとの併用はきわめて危険です。

酒をやめて6年目に父親が亡くなったのがきっかけで、精神的に不安定になって、母が使っていた抗不安剤をもらって飲んだんです。
それが薬物中毒の始まりでした。1回2錠のところを、ちょっと多く飲むと酔うんですよ。たとえば6錠とか。眠る薬のはずだけど、私の場合は眠くならなかった。アルコールと同じように感情がハイになって、心配事も忘れて、愉快でいられるんです。

同じ酔いがほしくなって、精神科にいって「寝られない」と訴えました。「アルコール依存症で、7年やめている。父がなくなってからよく眠れない」と、半分は本当のことですが、実は薬で酔いたかった。

医者は平気でくれましたよ。最初はベンゾジアゼピン系の薬、それからバルビツール系。「きかない」と言っては量を増やしてもらい、最後は2週間分を3日で飲んでました。

酒の時と同じで、夕方になると薬を飲みたくて落ち着かない。違いは酒ほど簡単に手に入らないこと。

飲んだ量をノートにつけていました。7時に安定剤3錠、8時に眠剤2日分…ある日、11時半まで書いてあって、あとは判読できない。気づいたのが翌日の夕方です。ガラスは割れてる、カレーはぶちまけてある……。半日以上ブラックアウトしてたんです。

妻の訴えで先生もおかしいと気づいて、薬がもらえなくなりました。1 週間、離脱症状で苦しみました。熱が出て、心臓がドクドク、体がガタガタ震えました。アル中の誰もが眠剤でこんなふうになるわけじゃないはず。自分は依存性が強いのかなと思います。今でも、鎮痛剤や風邪薬など、なるべく飲まないようにしています。心のどこかに「もう少し飲めば酔うかな」という気持ちがあるんです。あれから、自助グループに一生懸命になりました。仲間といるのが一番楽だとわかったから。』

咳どめ薬

一般の薬局で入手でき、しかもハイな効果が得られる薬物として、大学生や社会人を中心にシロップが流行しました。
覚せい剤の原料になるエフェドリンや抑制作用をもつコデインが含まれるため、成分改良が試みられていますが、現在でもシロップあるいは咳どめ錠剤の依存症者がかなりの数いるといわれています。

高校の修学旅行で、友だちと一緒に買いました。
2、3本飲んで、気づいたら違う場所にいる、次に気づいたら帰りの新幹線の中……。わけがわからなくて、こわかった。

それがなぜかくせになって、薬代がほしくて友だちと部屋あらしをやった。みつかって退学です。
このままじゃヤバイ、とりあえず大検にパスして大学行かなきゃと思いました。薬で徹夜して勉強しました。集中できるし、頭が冴えまくって、こんな便利なものないなーって。

大検に受かって1年浪人。昼間は万引きや、置き引きで薬代を稼ぐ。夜はずっと勉強です。「大学入ったら薬はやめよう。でも今は勉強しないと」と思ってました。
大学で、環境を変えるためにアメフトを始めたけど、ブロン飲んで勉強だったのが、ブロン飲んでアメフトやるのに変わっただけ。進級できなくて1年生を5回やりました。

薬が楽しいのは、20歳までだったなぁ。あとは、生きるため。ないと動けない。トイレにも行けない。頭痛がして、だるくて動けない。盗みで警察に捕まって、親にダルク連れてこられたんですけど、やめる気なかったです。やめようと百回ぐらい思ったけど、そのつど失敗しましたから。もう夢も希望もない、一生この薬で生きてくのかと。

精神病院で退学届けを書き、2度目の入院で初めて薬を切りました。格子の中で2週間。どうあがいても使えないです。6年ぶりに切ったから、一気に症状が襲って、ひどい状態で意識はもうろうとしてました。

気づいたら、自分にはもう何も残っていなかった。友人はいない、親の信頼はとっくにない、彼女にも見限られた。ゲロ吐きながら、うんこもらしながら、みじめな自分が悲しかった。薬がないから逃げ場がない、あとは泣くしかない。1週間泣きっぱなしでした。もうあんな思いは2度とゴメンです。』

シンナーから覚せい剤、覚せい剤をやめたあとは睡眠薬というように、依存する薬物の対象が移っていくケースはしばしば見られます。
ひとつの薬物への耐性ができていると、他の薬物にもきわめて耐性が生じやすいため、依存の進行は急ピッチです。
中には身体症状などの治療のために処方された薬に依存していくケースもあります。
アルコール依存症・薬物依存症・摂食障害などの可能性がある患者に対し、薬の投与に関する注意が広まることが期待されます。

自分をふりかえるための質問―薬物へのアディクション

いくつチェックがつけば問題を抱えているという基準はありません。あくまで自分をふりかえる助けとして使ってください。

  • 仲間と一緒にではなく、ひとりで薬物を使うことがありますか?
  • 睡眠薬や鎮痛剤などの処方薬物を余分に手に入れるために、医師に嘘を言ったりごまかしたことがありますか?
  • 薬物を使うと、不安や恐さが消えて勇気が出たり、他の人と対等になったように思いますか?
  • 気分を楽にしたり、ストレスを忘れたり、楽しむためには薬物が必要ですか?
  • 朝起きるため、あるいは夜眠るために、薬物が必要ですか?
  • 薬物なしで生活するのは不可能だと思いますか?
  • あなたが薬物を使うことで、家族関係がまずくなっていますか?
  • 薬物を使うことで、仕事や学校生活に支障が出ていますか?
  • 薬物が、パートナーとの関係になんらかの影響を与えていますか?
  • 薬物を盗んだり、薬物を入手するためのお金を盗んだことがありますか?
  • 薬物のために逮捕されたり、入院したことがありますか?
  • 薬物のために、睡眠や食事に支障が出ていますか?
  • どんな薬物をどのぐらい使っているか、嘘をついたことがありますか?
  • 薬物をやめようとしたり、使うのを制限しようとしたことがありますか?
  • 薬物が手元になくなることを考えると不安になりますか?
  • 自分の正気を疑ったことがありますか?
  • 薬物のことでしじゅう頭が一杯ですか?
  • よくわからない漠然とした恐れを感じますか?
  • 本当はやりたくないのに、薬物を使ったことがありますか?
  • まざまな悪影響が出ているにもかかわらず、薬物をやめられませんか?

詳しいことは下記の病院にお問い合わせ下さい。


一般社団法人藤元メディカルシステム 大悟病院
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