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肝臓病について 3

はじめに

前回は、肝臓病の中でも圧倒的に多い「肝炎」、特にその殆どを占めるウイルス性肝炎を中心にアルコール性肝炎・中毒性肝炎・アレルギー性肝炎・ 脂肪肝についてお話しました。肝炎イコール酒の飲みすぎが一番の原因と思われていた方、以外だったのではないでしょうか。

さて、今回は前回予告いたしました「肝硬変」についてお届けします。皆さまがこの病気を正しく理解され、前向きに、より健康に過ごしていただければ幸いです。

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肝硬変とは?

本症は様々の慢性疾患の終末像です。つまり、原因のいかんにかかわらず、様々の慢性疾患のなれの果ては共通だということです。では、本症に至るのはどんな病気が多いのでしょう。前回、読まれた方はお気づきかと思います。そうです・・・欧米諸国では大半がアルコール性ですが、わが国では、ウイルス性の慢性肝炎に起因するものが最多で、80%前後を示しています。ウイルス性の慢性肝炎といえばB型・C型です。中でもC型の増加が目立ちます。その結果、80%の内訳はB型が約20%,C型が約60%となっております。C型肝炎の発見以前は、多くの肝硬変患者さんは不当に酒飲み扱いされることが多かったと聞きます。ここで、肝硬変=アルコール性という見方は謝りであることが理解されたでしょうか。

そうはいうものの、わが国に少ないとされているアルコール性肝硬変が、最近増加傾向ということも事実です。理由は簡単でアルコール摂取量が増えているからです。特に、ジュースと同じような値段で手に入るようになり、安易に飲まれるようになりました。若年のアルコール依存症者も増加傾向にあり、肝疾患の臨床では避けては通れない問題となっています。

最近、お酒を飲みすぎているなあとお思いの方・・・ウイルス性の肝炎が殆どとはいえやはり、たくさんのアルコールは、私達の身体にとって歓迎されるお客様ではないようです。肝臓になったつもりで労わりながら、楽しく飲みたいものですね。

その他肝硬変の原因となる病気として、自己免疫性肝炎、梅毒、薬物性、うっ血性、胆汁うっ滞性など多岐にわたっています。

ポイント
  1. 肝硬変はさまざまな慢性肝疾患のなれの果て
  2. わが国では、ウィルス性(C型・B型)肝炎が多い
  3. 欧米では大半がアルコール性肝炎、最近わが国でも増加傾向

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肝硬変はどんな病気?

日本語からは、肝臓が硬くなって変化した病気だなというイメージが湧きますね。横文字cirrhosisは、ギリシャ語の「オレンジ色」という言葉に由来しているので、肝臓がみかんの皮みたいになった病気と考えればよいでしょう。

つまり、肝細胞の壊死(組織が死ぬ)が進み、その変わりに繊維組織が増えて、肝臓が硬くなってしまい、その機能が衰えてしまう病気です。まずは簡単に説明しましょう。

硬くなってしまった肝臓の内部は、その構造を変えてしまいます。肝小葉という肝細胞の集団が破壊されてしまい、そのかわりに「偽小葉」という結節(こぶのようなもの)がどんどんできあがっていきます。そして、外見上もなめらかさがなくなり、結節が浮いて見えてでこぼこになります。

偽小葉は、もはや解毒などの肝臓本来の機能をはたせないので、食欲不振虚脱感吐き気黄疸などの症状がでてきます。

また、硬くなった肝臓は血液を流れにくくするので、門脈によって導かれていた胃や腸からの血液が行き場をなくし、門脈圧が亢進します。その結果、血液が門脈以外の静脈に流れ込むと体のあちこちに静脈瘤をつくってしまうのです。なかでも、おへそのまわりや食道のまわりの静脈に血液がたまりやすくなっています。

食道にできた静脈瘤は、ときには破裂することがあり、これが大量の出血をひきおこすと死に至ってしまいます(静脈瘤破裂)。その他、門脈から逆流してきた血液の血漿が、腹膜のほうへ染み出し腹水貯留をおこすこともあります。こうなると、医師による適切な処理を怠るとついには昏睡状態(肝臓で解毒されなかったアンモニアが血中にたまり、脳に神経毒として働くと肝性昏睡をおこす)となり、死亡することもあるのです。


ここまで聞くと、本当に恐ろしい病気と感じてしまいがちですが・・・ごめんなさい。

でもここからまた、気持ちをとりなおして聞いてください。


「死に至る病」からの脱却

以前は、吐血や腹水などの非代償期の症状がでてから初めて医療機関を訪れ、肝硬変と診断されることが多かったようです。また、静脈瘤や肝性脳症などの肝硬変特有の症状に対する治療も未発達であったため、診断後は予後不良であったことは事実です。そのためか「肝硬変といわれたら数ヶ月で死んでしまうものだ」というイメージは根強いものがあることも否めません。

実際に、昔ながらに突然血を吐いたり、昏睡に陥ってから救急外来を訪れる患者さんがいないわけではないです。また、進行した肝細胞癌を合併してから初めて医療機関を訪れることも残念ながら少なくはないようです。
しかし、現在では肝機能検査や画像診断が進歩し、また検診などを受ける機会が増えたため、無症状のうちに(代償がきくうちに)肝硬変と診断されることが多くなっており、必ずしも死に直結する診断名ではなくなりました。

また、いったん肝硬変となってしまえば完全に治癒することはありませんが、アルコール性の肝硬変で完全に禁酒ができる例や、ウイルス性の肝硬変でウイルスが消失する例のように、肝臓を傷害する原因を排除できる場合には、長期間にわたって安定した経過を示すこともあります。
もう少し詳しくお話しますと、B型肝炎が原因のものでは、HBVが消失すると肝機能は正常化し肉眼的な結節は消失します。また、C型肝炎が原因の肝硬変においても、インターフェロンが著効した症例で、組織学的に肝硬変が改善するかどうかが検討されています。さらに、アルコール性のものでは、禁酒により腹水の減少などの効果がみられています。


どうでしょうか?死と直結するという過剰な不安が、すこし薄らいでくださいましたでしょうか。

ここで、補足として前述の「代償」ということについて、お話しさせていただきましょう。


「代償性肝硬変と非代償静肝硬変」について

肝硬変は慢性肝疾患のなれの果てですから、ある日突然出現することはありません。肝硬変となった肝臓は、組織学的な変化に伴い機能も低下してきます。
しかし、正常な肝臓の機能はかなり余裕があるので、肝臓に残った力が身体の需要をみたしていれば(代償がきく状態であれば)、特別な症状は出ません。
このような肝硬変を「代償性肝硬変」といいます。腹部のもたれ感や倦怠感を訴えることもありますが、疾患に気づかないまま通常の社会生活を送っている場合もあります。
残っている肝機能が身体の需要に応じきれなくなったときに、肝硬変特有のさまざまな症状が出現します。このような状態を「非代償性肝硬変」といいます。典型的なものは、黄疸・腹水・肝性脳症・食道静脈瘤・発熱などです。次にこれらの症状についてお話ししましょう。

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肝硬変の症状について

まず「3つの肝硬変の基本的な病態」について説明します。

肝機能の低下

肝細胞が破壊されることにより、肝臓の機能的な大きさが減少します。働く部分が小さくなるために、アルブミンや血液凝固因子などの合成能力が低下し、アンモニアの処理などの解毒機能が低下します。これは、工場に例えれば、最大生産能力が減った状態です。注文が少なければ何とか間に合いますが、それ以上のものを要求されると応じきれなくなって破錠してしまいます。

肝血流の変化

肝臓に流入する重要な血管である門脈の血管がわるくなり、圧が高くなります。その結果、肝臓にいくべき物質が肝臓を迂回して素通りしたり、余分な血行路が生じたりと諸々の傷害がおこるわけです。工場に例えれば、工場をめぐる物の流通が悪くなっている状態です。分解・加工の過程が混んでいるために原料が製品にならないまま出荷されたり、本来なら製品の運搬に使わない通路にまで製品があふれだし危険が生じている状態なのです。

網内系機能の低下

網内系とは、大型の貪食細胞が体内の特定の場所に分布し、細菌や異物を処理するしくみを指します。肝臓にある貪食細胞は、腸管から門脈を経由して、肝臓に進入する細菌などの異物をとらえる働きをします。大変重要なフィルターなのです。肝硬変ではこの働きが低下するために、感染症がおきやすくなります。工場のたとえを続ければ、守衛がいなくなったので外部の人間が勝手に工場にはいってくるようになり、仕事に重大な支障をきたすような状況です。


以上の3つの病態が、肝硬変の諸症状と関係してくるのです。
次に諸症状についてお話ししましょう。


黄疸

老廃赤血球は処理されてビリルビンという物質になりますが、それが過剰に蓄積された状態をいいます。通常は軽度の黄疸のみです。急に増悪したり、いよいよどうにもならなくなったときには、黄疸は高度になってきます。つまり、黄疸の増強・急速な進行は急性増悪劇症化のサインともいえます。

浮腫・腹水

殆ど必発の症状です。主な原因として、肝臓の合成力が低下することによって血漿浸透圧が低下し、血管内に水分を保持できなくなった結果、血管外への水分の浸出が増えてしまいます。2つめには、門脈圧や肝表面リンパ流の圧が高くなって、リンパ液がリンパ外に露出することがあげられます。

肝性脳症

肝機能の低下に伴って起こる意識障害で、肝機能が回復したり誘因が除かれれば意識はもどります。原因としては、正常な状態ではたんぱく質の代謝産物であるアンモニアなどの有毒物質は、肝臓で最終的に処理されるのですが、肝硬変では処理速度が低下しており、体内に過剰となった有毒物質が中枢神経を侵すからだといわれています。

消化管出血

門脈圧亢進―――食道静脈瘤の形成―――破裂という筋書きです。ただし、肝硬変患者さんの吐血下血がすべて静脈瘤の破裂とはかぎらず、消化性潰瘍からの出血も多いとされます。

腹壁皮下静脈怒張

門脈圧亢進によって肝臓に入れなかった血液が、腹壁の皮下静脈にたむろするための症状です。

肝脾腫

肝臓は硬く腫大し、指で押してをふれることができます。門脈圧亢進によって脾臓も腫大します。

クモ状血管腫

門脈圧亢進を反映する症状といわれ、中心がややもりあがっており、そこから放射状にクモが足を広げたような血管による模様です。殆ど、顔面・頸部・前胸部に効発します。アルコール性肝硬変では特に目立つといわれます。

手掌紅斑

てのひらにみられる発赤です。特に親指と小指の付け根が赤くなります

女性化乳房

肝硬変の男性(あくまでも女性ではありません)で、両側もしくは片側の乳房が腫大し、しばしば張った感じや痛みがでます。原因は、男性でも少量産生される女性ホルモンが、肝機能低下によって分解されなくなり、血中の濃度があがるためといわれています。

肝腎症候群

肝不全はしばしば急性腎不全を合併します。詳細はまだ不明なのですが、肝硬変に関連した機能的変化が原因と考えられています。残念ながら、末期の肝硬変に合併することが多く、予後はきわめて不良といわれています。
なお、本症の3大死因は肝不全・消化管出血・肝臓癌の合併とされています。


以上3つの基本的病態からでてくる主な症状10個をお話ししました。
前々回に、肝臓そのものの働きについてのべました。それを思い返すと、なるほど肝臓の働きを果たせなくなった結果が、これらの症状なのだと実感できます。みなさまどのようにお感じになられたでしょうか。

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肝硬変の診断

以下、主なものをあげましょう。

肝機能検査

GOTとGPTはある程度上昇しますが、それほど高値にはなりません。肝細胞がどんどんぶちこわれていくわけではないからです。ビリルビンも通常軽度上昇します。高度のビリルビン血症を来たした場合予後不良といわれます。他に、コレステロールは肝臓の合成能が低下するので低値。また、アルブミンの合成低下によって低アルブミン血症となります。血液凝固因子の産生が低下しプロトロンビン時間が延長します。

血液検査

脾臓機能亢進によって特に、血小板の減少が著明です。臨床的にはC型肝炎が原因の場合、13万/mm3以下に血小板が低下すると肝硬変の始まりであり、10万以下になると肝硬変は確実といわれます。ただし、B型肝炎やアルコール性肝硬変の場合は適用されないようです。

色素排泄試験

色素を静脈注射し、肝臓へのとりこみと排泄を調べる検査です。本症では、肝機能障害と肝血流量低下を反映し、色素はいつまでも血中に停滞しています。

画像診断

肝シンチグラフィ : 肝硬変では肝臓及び脾臓がこうもりが羽を広げたような形にみえます。

超音波エコー・CTスキャン

辺縁の不整や肝臓中の繊維化による斑点上の高エコーがみられます

腹腔鏡検査

肝臓の表面を直接みます。肝臓の表面は本来つやつやであるべきですが、本症では凹凸でたくさんの結節を認めます。しかし、この検査は多少なりとも苦痛を伴い、入院も必要となってくるために、すべての患者さんに施行できるものではありません。


以上、主な検査内容を列記いたしましたが、決してひとつの情報があてはまったからといって、自己判断なされないことをお願いいたします。あくまでも専門医の診察をお受けになってください。

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肝硬変の治療は?

肝硬変の治療は、臨床的に代償性と非代償性に分けられます。

代償性肝硬変

肝硬変症の進展を阻止、抑制することを目的とします。一般に社会生活を続けながら治療を行います。

  1. 疲れすぎない程度の運動、筋肉労働以外の就労を可能とする<医師に相談>
  2. 一日8時間以上の睡眠をとり規則正しい生活を心がけ疲れを翌日に残さない
  3. 食事は特殊な場合を除いてバランスのよい食事とする(減塩に心掛け高蛋白質とする)。鶏肉や魚がよく、豚肉や牛肉は避けたほうがよい。食後に休息をとる。30分から1時間は静かに休み、できれば臥床する。
    安静をとる意味 : 安静により肝機能の低下を防ぎ、血液中の栄養分が肝臓に届けられ傷ついた肝臓の修復や本来の働きができるのです。
  4. アルコールは原則として禁止する
  5. 便通を整える
    便秘を恐れる意味 : 便秘になると、腸内で腐敗・発酵した有毒成分<アンモニア>が余分に吸収され、血液によって肝臓に運ばれ、肝臓に負担となってしまうのです。一日1~2回の便通を心掛けられることをお勧めします。
  6. 薬物療法
  7. 定期的受診、検査、服薬などが継続できるようにする
非代償性肝硬変

基本的には肝血流量をふやし、障害された肝細胞の修復を促すことを目的とします。一般に入院をして治療します。

  1. 体の安静を障害の程度に応じて行う
  2. 薬物療法
  3. 食事療法(確実な減塩、蛋白制限食。時に、水分制限)

黄疸、吐血、下血、肝性昏睡などがみられる非代償性では、それぞれの病態に合わせて治療がなされます。そのため、食事をはじめ一人一人異なるかと思います。今回は、上記のように概説でご了承いただきますようお願いします。

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最後に

本症は、慢性肝疾患のなれの果てです。除々に進行し、やがて死に至る病気であることに違いありません。といっても、5年生存率は50%以上なので、肝硬変と診断されても先はあります。またご存知のように1997年わが国も漸く臓器移植法が試行されました。この件については、まだまだ難題があるかと考えますが、生命を維持できなくなってしまった方の「希望」になっているのではないでしょうか。

なにはともあれ、今ある命を大事に、今この時間を大切にしたいものです。そして、皆さん、体にやさしい、「肝臓さん」にもやさしい暮しをしていきましょう。

(藤元メディカルシステム付属医療専門学校)

引用・参考文献
  • 池田 健次、飯田 裕子:JJNスペシャル肝疾患ナーシング、医学書院、1997
  • 千代 豪昭、黒田 研二:学生のための医学概論、医学書院、1999
  • 竹下 俊隆、成島 克彦:内科5消化器・アレルギー膠原病、医学評論社、1995
  • 高橋 健一:体のしくみ全書病気編、東陽出版、1998
  • 青木 萩子、延近久子:EN看護学生版、4巻、6号、1995

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