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肝臓病について 2

はじめに

シリーズその1で、肝臓についておおかた知っていただけたでしょうか?
「肝心かなめ」の臓器である肝臓は、「沈黙の臓器」であるということで、ちょっとした症状でも感じたら、検査一つでもしていただきたいという思いで、みなさんにお話しました。そして、それが肝臓病の予防、早期発見・治療につながります。
今回より、その肝臓病について、一つ一つ丁寧にわかりやすく、ひもといていきたいと思います。肝臓の病気に悩む人やその家族、肝臓の予防に関心のある人など少しでもお役に立てれば幸いです。

肝臓病には、肝炎肝硬変肝癌が多くを占めます。この中で圧倒的に多いのは、肝臓の炎症つまり「肝炎」です。
酒の飲み過ぎが原因だと思われる人も多いようですが、アルコールが肝臓病の直接的原因であることは、実は、それほど多くはないのです。
現在、慢性肝炎の8割の人が、肝炎ウイルスをもっているということが、明らかになっています。「ウイルス肝炎」を患う人が多いということです。
そこで主な肝炎を占める「ウイルス肝炎」と、それ以外に肝臓の機能を衰えさせる原因となっている、アルコールによる肝臓病、薬剤による肝臓病などをとりあげてみたいと思います。その前に、肝臓病の経過をお話しましょう。

肝臓病の原因は、先程あげたウイルス、アルコール、薬剤等ですが、経過としてまず急性肝炎をおこします。これは主にウイルス肝炎の場合をさし、他の原因の場合には、肝障害と呼びます。

これはウイルスが感染したときに、ウイルスという異物を体内から追い出そうとする働き(免疫機構)により、肝細胞そのものを破壊するために、炎症がおこります。
この時の症状は、一般的には、熱が出る、からだがだるい、下痢をする、食欲がない、吐き気がする、尿の色が濃い茶褐色になるなどがあります。

治療のポイントは、とにかく安静にすることです。
そして急性肝炎については、基本的には治る病気ですが、ごく一部に肝細胞の破壊が広範囲に及び、肝機能が営めなくなる「劇症肝炎」に移行することがあります。

劇症肝炎は、意識障害(時、場所、状況がわからなくなったり、眠ってばかりいるなどの症状から始まる)を伴うもので、急性肝炎になって、皮膚や白目が黄色くなる黄疸の症状がでた後も、発熱、からだのだるさなどの症状が進み食欲がもどらない場合、注意が必要となります。
専門の治療のできる医療機関の入院が必要です。というのも、劇症肝炎になると、いろいろ病気を併発(胃や腸など消化管の出血・肺炎)し、予後(生存率)がよいとはいえないからです。
ただし、生存率はあがってきていますので、恐れず劇症肝炎が疑われる場合、早急に治療を受けましょう。治癒後は普通の生活にもどれます。

急性肝炎の後、ごくまれに劇症肝炎に移行する話をしましたが、ウイルスの種類によっては、次に慢性肝炎に進行する場合があります。
慢性肝炎は、6ヶ月以上の肝機能異常とウイルス感染が持続している状態です。症状は、軽く肝臓の機能もほとんど保たれ、ダメージは少ないように思われますが、大きな問題は、慢性肝炎は将来癌になる可能性があるということです。
慢性肝炎から肝硬変に進み、それを基礎として肝癌が生じるという過程が明らかになってきています。

ですから、急性肝炎の時、慢性化させないよう、また慢性肝炎になっても肝硬変にならないよう、治療、注意が必要となってきています。
ただし、肝硬変が必ず肝癌へつながるわけではありませんので、恐れすぎる必要はありません。
このように、ウイルスの種類によっても経過が違います。ここでそれぞれのウイルス肝炎をみていきましょう。

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ウイルス肝炎

肝細胞が肝炎ウイルスに感染すると、体内の病気を排除しようとする働き(免疫機構)によって、肝細胞自体も傷害されます。これがウイルス性肝炎です。
ウイルス性肝炎の原因となる肝炎ウイルスは、現在A型、B型、C型、D型、E型、G型の6種類が知られています。その中でも日本に多いのは,A型,B型,C型で、各肝炎ウイルスはそれぞれ特徴がありますが、慢性肝炎をおこすのは、ほとんどB型、C型です。
ここでは、日本に多いA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎について述べたいと思います。

A型肝炎

A型肝炎ウイルスは、飲料水(井戸水など)や食物(主に生ガキ、貝類)からの経口感染でおこります。
感染者の便が、また新たな感染源となります。上・下水道の完備したわが国では、流行発症はほとんどみられません。東南アジア、アフリカ、中近東への旅行者、あるいは長期滞在者は、感染の危険が非常に高いといえます。そのため、手洗いの励行や、生水を飲まない、野菜・魚介類を生で食べないなどの注意が必要です。
A型肝炎は、広範囲の肝細胞が壊れ、重症の肝機能不全になること(劇症化)はまれで、積極的に治療しなくても、慢性化(6か月以上の肝機能異常とウイルス感染が持続)することはありません。
症状が出現した場合は安静にして、栄養摂取に障害がある時は、輸液など行うこともあります。治癒後は、A型肝炎ウイルスに対し、無毒化し排除する物質(抗体)を得るため、二度と感染しません。
また、予防としては、γ―グロブリンやA型肝炎ワクチンの投与があります。

B型肝炎

B型肝炎は血液を介して感染し、分娩時あるいは、出産直後にウイルスをもった母親から感染 する母子感染(垂直感染)と、それ以外からの感染(水平感染)の二つに分けられます。
水平感染の中には、血液または血液製剤の注射や、汚染した針などによる刺傷、また性交渉での感染なども含まれます。水平感染では急性肝炎を発症しますが、慢性化することはほとんどありません。
垂直感染の患者、3歳以下での感染した患者が、キャリア(肝炎を発症せずに持続的にHBウイルスを体内にもつ個人)となります。
このキャリアのうち90%は、肝炎ウイルスが体内に存在しながらも、肝障害を起こしません。
残り10%のうち20%が慢性肝炎に移行します。それ以外は急性肝炎を経て、抗体(HBウイルスに対し、無毒化し排除する物質)を獲得することにより、肝炎の進行は終了するというわけです。

血液中にウイルス量の多い場合は、注意が必要なので、キャリアのいる家庭では、剃刀や歯ブラシの共有はさけるようにしましょう。
また、医療従事者による針刺し事故など、血液汚染が明らかな場合は、48時間以内に抗体(HBs抗体)を含んだHBグロブリン投与を行います。
また、同居者にキャリアのいる場合や感染の機会が多いと考えられる人は、3~4回のHBワクチン投与を行う方法もあります。

C型肝炎

B型と同様、血液を介して感染します。しかし、B型に比べて血液中のウイルス量は少なく、現状では、性交渉などによる水平感染は確認されていません。
以前は、輸血後に発症しましたが、現在は、輸血用血液のHCV抗体の検査をしますので、ほとんどおこっていません。
C型肝炎の場合、患者のうち約40%が急性肝炎のみで治癒し、残り60%が慢性化しますので経過観察が必要になります。現在、慢性肝炎患者に対してインターフェロンによる治療が行われており、そのうち20~30%治癒しています。
C型肝炎の予防については、現在確率された方法はありません。

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アルコールによる肝障害

大量の飲酒を続けると肝臓が障害されることは、従来からいわれています。実際、世界でもワインの産地で、ワインの飲用が習慣化されている国々(フランス、スペイン、ドイツ、イタリアなど)では、肝硬変による死亡率も高くなっています。
一方、アルコール消費量の少ない国は、肝硬変による死亡率が低いというわけです。日本でも、アルコール消費量の増加に伴い、アルコールによる肝障害も増加しています。

アルコール性肝炎とは、常習飲酒者がなんらかのきっかけで、さらに飲酒量が増えると、重い肝障害をおこすことをいいます。
すでに常習飲酒によって、脂肪肝(肝細胞に脂肪が過剰にたまった状態)や肝線維症(肝細胞の周囲や血管の周辺に線維が多くなった状態)などの、なんらかの肝障害をおこしています。
なかには、非常に重症で、ほかの臓器にも障害を起こすなど、1か月以内に死亡する率が高い「重症型アルコール性肝炎」を起こすこともあります。また肝障害が長く続くとアルコール性の肝硬変となります。

治療としては、断酒が不可欠です。断酒以外の治療法はないといわれるほど、断酒が重要です。
とくにC型肝炎ウイルスの感染者は、常習飲酒に注意してください。従来アルコール性の肝障害とみられていた患者さんの中に、C型肝炎ウイルス・マーカー陽性者が多く見つかっています。

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薬剤による肝臓病

薬剤によって肝臓に障害が起こるということですが、薬剤そのものの毒性が原因でおこる「中毒性肝障害」と、薬剤に対するアレルギー反応によって起こる「アレルギー性肝障害」の2つに分けられます。

中毒性障害は、薬剤そのものに毒性があるものは少なく一般には処方されませんので、一般の薬を大量に内服したり、長期間の服用で現れることがあります。しかし、薬剤による肝障害のほとんどがアレルギー性肝障害であると考えられます。

アレルギー性肝障害は、身体を守るはずの働きが過剰に反応したもの、例えば花粉症、アトピー性皮膚炎などのようなアレルギー性の病気と同様の反応です。
ある薬剤の服用により肝機能が障害されるという事で、人によって違ってきますので、どんな薬でもアレルギー性肝障害の起こる可能性はあるということになります。内服してから24~48時間後以降、時には1ヶ月以上たって症状が現れる時もあります。
症状には、食欲低下、吐き気、身体のだるさなどです。

また、アレルギー性の場合は、発熱、発疹、皮膚のかゆみなども起こりやすいものです。
治療としては、薬物が原因として疑わしい場合は、服用をただちに中止することです。しだいに肝機能が正常にもどります。
よって、日常の薬剤の内服には、医師に相談したり服用の量、方法を守り、内服後異変、違和感のある時はご注意ください。
また、現在飲んでいる薬剤や以前薬にアレルギー症状を起こしたことのある人は医師に告げる事も必要です。

これで、今回は終わりとします。さて、3月、4月、12月は、別れ、出会いの時期。“酒は百薬の長”といいます。ほどほどにしておきたいものです。次回、いよいよ肝硬変、肝癌へと話は進んでいきます。
尚、入院・外来治療のこと、分からないこと、疑問に思うこと、何でも結構です。下記の病院にお問い合わせ下さい。専門医が優しくご説明申し上げます。

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最後に

今回、肝臓の病気ということで、原因別に主なものをとりあげ、できるだけわかりやすく、日常生活に関連して説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?今まで、耳にされた病気ではなかったと思いますが、少しは興味とご理解をいただけたでしょうか?

今回とりあげていないもので「脂肪肝」という病気があります。健康診断等で、チェックされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?脂肪肝は、病名通り、肝細胞に脂肪(中性脂肪)がたまる病気です。通常1/3以上の肝細胞に脂肪がみられた場合をいいます。原因として、肥満、アルコールの過剰摂取、糖尿病などがあります。アルコール性の場合、長い経過のうち肝硬変となることもあります。また、脂肪肝は時には劇症肝炎になることもあります。治療としては原因を取り除くようにしましょう。肥満の人は体重を減らし、糖尿病の人は糖尿病の治療をします。もちろん、アルコール過剰摂取の時は、節酒、禁酒が大事です。

これで、今回は終わりとします。さて、3月、4月、12月は、別れ、出会いの時期。“酒は百薬の長”といいます。ほどほどにしておきたいものです。
次回、いよいよ肝硬変、肝癌へと話は進んでいきます。
尚、入院・外来治療のこと、分からないこと、疑問に思うこと、何でも結構です。下記の病院にお問い合わせ下さい。専門医が優しくご説明申し上げます。

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引用・参考文献
  • 池田健次、飯田裕子:JNNスペシャル肝疾患ナーシング、医学書院、1997年
  • 大久保忠成:成人看護学〔4〕消化器疾患、医学書院、1999年
  • 鈴木宏:これだけは知っておきたい肝臓病、日本放送出版会、1999年

詳しいことは下記の病院にお問い合わせ下さい。専門医が判りやすく回答申し上げます。

  • アルコール性以外の方
    一般社団法人藤元メディカルシステム 藤元総合病院
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