トップページ > ドクターエンドーのガッテン講座 > 講座その(8)大豆の効用:①”土からとれるお肉”と牛肉の関係
大豆の効用:①”土からとれるお肉”と牛肉の関係
ガッテン講座が、しばらくとだえてしまい誠にもうしわけありませんでした、恐縮しております。筆者は病理診断専門医の日常業務ならびに医学関係の学生講義にと元気で仕事をしておりました。
拝金主義がこの国をダメにした?
この間に、テレビの健康に関する番組の詐欺事件があり、国内外の食に対する疑惑問題が起こっております。耐震建築基準の問題も信じられない内容でした。
私たちの衣食住はいったい大丈夫なのでしょうか。わたしたちにとって根本的な食と住の問題が、すべて出そろってしまった事態です。
次々おこる教育や家庭の問題もまさに放ってはおけない、きわめてゆゆしいことです。
平和であるがゆえに起こってきた「ゼイタク病」ともいえる出来事であり、不健全な競争をあおるような社会現象の結果ともいえる出来事と考えます。
第二次世界大戦後のどん底からの復興時代は、まず食べなければという時代でした。
いずれは「アメリカのように豊かで幸せな社会を」と国民全体は必死でした。その行きついた先の現状、美しくあるべき日本の平和という現況が生み出した不可思議な逆転現象でもあるわけです。
ひとことでいいますと、拝金主義というのでしょうか。理性や倫理のまえに、「すべては金しだい」と信じてしまう妄想、妄念のひろがりです。生きるために必死だった社会にはありえなかった堕落の世界です。理想や夢の語れない社会は虚の世界です。そうした社会経済、企業、起業はおそらく虚業というものではないでしょうか。
食材や健康食品関係も営利主義に傾きすぎますと、詐欺まがいの誇大宣伝や科学性の全くない誤った健康常識をおしつけることになってしまいます。
「ミラクル商品」「魔法の弾丸」まがいの宣伝文句は誰が見てもおかしいとおもうのですが、「科学もどき」や「医学もどき」の宣伝には要注意です。
こうした広告はかなりうがって確認しないとなかなか「化けの皮」がはがれてきません。
食材や健康食品関係も営利主義に傾きすぎますと、詐欺まがいの誇大宣伝や科学性の全くない誤った健康常識をおしつけることになってしまいます。
「ミラクル商品」「魔法の弾丸」まがいの宣伝文句は誰が見てもおかしいとおもうのですが、「科学もどき」や「医学もどき」の宣伝には要注意です。
こうした広告はかなりうがって確認しないとなかなか「化けの皮」がはがれてきません。
教育や医学、医療という国民の根幹を支える分野といえども現状はかなり危なっかしい状況です。
なにごとも作り上げることは並大抵ではありませんが、ひとたび壊れはじめるといとも簡単に機能不全に陥ってしまいます。
ところでガッテン講座は科学的に正確で中立的な情報を土台にして、地味ながらも斬新な内容でありたいと考えております。
つまり新しければ何でもよいということではなく、温故知新のことば通りでありたいと考えております。
つまり「古きをたずねて、普遍的な新しさを知り」明日にいかしましょう。今後ともよろしくお願いいたします。
大豆タンパクとは?
今回はトマトとともに最もありふれた食材の大豆についてとりあげます。
これは筆者年来の興味の対象です。それは、大豆は「植物の牛肉」である以上に、「植物エストロゲン」をはじめ様々な生理活性物質のかたまりだという事実を知ったときからです。
これらを食べることによって真にからだの中に取り込まれて、試験管レベルで検証されたはたらきが発揮されるのであろうかという興味です。
私どものからだにとってさまざまに役立つ物質がふくまれており、誇大宣伝の雑音とは無関係にその素晴らしさを堪能してみたいところです。
日本人の食の原点ともいえる大豆について、からだとどのようにかかわるのかを考えてみたいとおもいます。
その前に、自然界の有機物質について少し考えてみたいとおもいます。
その代表的なものである食べ物は、炭水化物、脂質、タンパク質であることはほぼ常識といってよいでしょう。
炭水化物とはそのことばどおり「炭酸ガス」と「水」が「化けた物」であります。化学記号ではCO2とH2Oとなり、基本成分はC,H,Oということです。
脂質の基本成分もC,H,Oですが、タンパク質にはこれらにNが加わります。Nとは窒素のことで、空気中の4/5を占めている分子ということになります。
このことは以下に述べますようにきわめて重要な意味をもっているのです。
多くの植物は土中の細菌によって分解された虫や朽ちた植物からのアミノ酸を吸収してタンパク質を合成して育ちます*(註)。
一方、大豆やインゲン豆などのマメ科植物では根に根瘤バクテリアという細菌が寄生しています。
これが空気中の4/5を占める窒素の一部を固定して積極的にアミノ酸をつくり、それらを根に供給して植物の成長に役立ちます。
余ったアミノ酸から合成されたタンパク質は結果として、豆に蓄えられることになります。
この現象は大変重要で、こうした共生現象は牛の胃袋にもみられます。
牛は反芻動物と呼ばれ、4部屋にわかれた胃袋をもっています。食べた牧草は、第一番目の胃でこなれると同時に寄生している細菌とよく混ざります。
口に逆戻りして噛んでいるうちに細菌は空気中の窒素を固定してアミノ酸をつくり、消化管で吸収されます。牛は牧草(C,H,O)だけを食べているのにどうしてタンパク質(C,H,O,N)の塊である立派な筋肉ができるのかというなぞがガッテンできるわけです。
牧草を食べさせないで、人間の勝手な考えにもとづいて動物性のタンパク質を食べさせていくと牛の胃袋はどうなるでしょうか。
第一番目の胃のひだは急速に変化して、胃内の細菌類の内容が変化していくそうです。
いったん変化すると、胃粘膜や細菌類の内容変化を元にもどすのに大変時間がかかるそうです。やはり自然に逆らってはいけないようです。
狂牛病とは?
ここからは大豆のはなしから少しわき道にそれますが、きわめて今日的な問題ですので触れておきます。
それは狂牛病のことです。10年近く前に気がつかれて、こんにちなお問題となっています狂牛病はまさに前述したような人災です。
イギリスで始まったとされる牧畜業者の羊をはじめとする動物性食材の畜産への応用です。より早くに立派なお肉に成長した肉牛を得るための畜産加工業の改革であったのでしょう。
この方法は急速に全世界的に広まりました。
狂牛病とは、もともと羊の病気 スクレーピーと同じものであり、羊の肉や脳脊髄をふくむ臓物ならびに肉骨粉からの伝播です。
ヒトにも同じような病気で、亜急性海綿状脳症(クロイツフェルト-ヤコブ病)というかなりまれな病気があります。
こうした中枢神経系の病気は、神経病理学的に古くは変性疾患といわれて長い間原因不明とされていました。
狂牛病がまさに「現代文明の落とし子」であるがゆえに、国際的な研究体制の強化と研究競争を生み出しました。その結果、現在では原因物質や伝播のしくみはほとんど解明されようとしています。
おどろいたことに、原因物質はウィルスや細菌といった微生物ではなく、ある変異タンパク質だったのです。
その変異タンパク質は、食べ物の中にあった場合には消化管の中から体内に吸収されて、自己増殖します。
それは末梢神経系を伝わって脳や脊髄まで行って神経細胞やグリヤ細胞にとりこまれて、細胞を破壊してしまうというものです。
地球上の生物の根本的な共通点は、自分と同じものを造って増える(増殖)ことです。
増殖にかかわる物質とは、みなさんもおなじみのDNAやRNAといわれている核酸で、自己複製とタンパク合成にかかわります。
これは現代科学信仰の「中心となるドグマ(大前提)」といわれているものです。
これに反するものとして狂牛病の伝播物質の変異タンパク質がみつかり、それゆえに今日的大問題なのです。そしてまた、ノーベル賞に値する研究成果につながったわけです。
ところで、八日会のある都城一帯は畜産が盛んであり、宮崎牛の主産地とききます。豊かな牧草と排気ガスの極力少ない空気に恵まれた地域で産される都城牛の品質のたかさは、この地を訪れるごとにガッテンしている次第です。
大豆タンパクのはたらき
ここで、ふたたび大豆に話をもどして、一回目のおはなしをしめくくります。
ほかの豆に比べて大豆にどうして豊富なタンパク質がふくまれているのかという疑問は、以上でおわかりになったのではないでしょうか。
ポイントは空気中の窒素(N)をとりこむことです。タンパク質の中に様々なからだに良いものがふくまれています。
こうした大豆タンパクは、調理されることによってはじめて消化管内で消化、吸収されて自分自身のからだのタンパク質につくりかえられます。
そればかりではなく、消化管内ではたらく大豆由来の酵素タンパクもあります。また小分子のポリペプチドは吸収されて、生理活性ペプチドにもなるでしょう。
ひとことで大豆といいましても、栽培されている土地の土質によって成分内容が驚くほどにことなります。
特にタンパク質とひとことでいいましても、構成されるアミノ酸は約20種類あります。
食べ物としてとるべきアミノ酸の内容が土質に深くかかわってきます。
ということは、空気中の窒素だけでなく、肥料中のアミノ酸の内容を工夫することで、上質のアミノ酸内容の大豆を作り出すことが出来るのです。大豆タンパクの改良につながることです。
こんにちの大豆と江戸時代の大豆をもし分析できるとしましたら、タンパク質のアミノ酸内容はかなりちがっていることが予想されます。
江戸時代の庶民のタンパク源はおそらく主に大豆だったと考えます。
大豆と主食だけで生活することができたということは驚くべきことです。
江戸時代の人々は平均寿命が短くて体格は貧弱だったと反論される方がおられるかとおもいます。
後者はたしかにそうかもしれません。
しかし、前者は抗生物質の恩恵のあるなしが、大きく左右する要因であって食べ物の内容ではありません。人生50年という平均寿命ということは、ほとんどの人々が50歳で死んだということではありません。
たくさんのこどもが疫病にかかり成人できなかったことが、成人後の平均寿命の数字を引き下げてしまった結果の数字です。
大豆タンパクがいかに大きな力だったかと感ずる次第です。
また、こんにちでも禅宗のお坊さんは肉食されないとききます。お寺の調理をされる典座さんのおはなしですと、タンパク源は大豆だそうです。
数百種類の大豆料理の献立があるくらいに大豆を利用しているようです。それでも皆さん恰幅がよろしく、健康そうにみえます。
今回はタンパク質にしぼっておはなししてきましたが、植物エストロゲン、脂質成分、遺伝子組み換え大豆などについて大豆シリーズとしておはなししていく予定です。
*(註):植物は窒素化合物の栄養素によって硝酸系とアンモニア系とに大別されます。この点でも、大豆は興味深い植物で、窒素化合物を肥料に加えると窒素固定のはたらきがおさえられてしまいします。