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動脈年齢をわかりやすく!(その3)マーガリンの誤解(トランス脂肪酸)
マーガリンの誤解(トランス脂肪酸)
バターの代用品として登場したマーガリンは健康食品として宣伝され、格安さもあり、今や日本の食卓に定着した感があります。
しかし栄養学的ならびに医学的には健康増進に役立つとは必ずしもいえないことが徐々に明らかになっています。
バターは牛乳より分離した脂肪を原料とした食材で、朝の食卓のトーストパンや調理には欠かせない味付けのベースです。
バターの健康に及ぼす悪影響は、それに含まれる豊富なコレステロールや中性脂肪についてです。
ここではコレステロールは有無をいわせずに悪玉です。
これに対して、もともと常温では液状の不飽和脂肪酸を固化させる製法(人工的硬化技術)が開発され、コレステロールを含まないマーガリンが産み出されて、好評となりました。
この技術は欧米で開発されました。マーガリンはパンに塗るとき適度な柔らかさとなり、スプレッド(塗ってひろげる)の役割にはぴったりです。
JAS規格では、マーガリンは「食用油脂に水などを加え乳化した後、急冷、練り合わせ、または練り合わせしないで作られた可塑性、または流動性のもの」と定義されています。
つまり植物油、魚油を原料として、それらの不飽和脂肪酸の不飽和部分に水素が負荷され、シス型に対してトランス型の立体構造のものがマーガリンの主成分であり、トランス脂肪酸あるいは硬化油(還元オイルあるいはハイドロジェネイテド=水素化)と呼ばれています。
天然に存在する脂肪酸の多くはシス型で、細胞膜の構成成分などで生理的な意義をもちます。
トランス脂肪酸は天然に全く存在しないかというと、そうではなく牛や羊などの反芻動物の胃で常在細菌によって産生され、牛乳や乳製品の脂肪酸の3-8%を占めるといわれています。
米国では食事中のトランス脂肪酸の約1/5が天然の肉や乳製品由来とされています。
マーガリンは学校給食、病院の患者食などにも使われ、かつコマーシャルの「植物性油脂100%」という宣伝文句が、健康食品のイメージを呼び起こします。
マーガリンあるいはパン、スナック食品中のショートニングに含まれるトランス脂肪酸は実は健康増進の働きに逆効果であるとする最近の国際的な研究報告がみられるようになっています。
もともとこのトランス脂肪酸は脂肪の酸化(腐敗)防止、製品の日持ちの良さというメーカーや販売側の利点もあります。
他方、ショートニング添加による食感の良さ、つまり微妙な歯ごたえなどの効果やパンに塗ったときの適度な柔らかさは微妙に美味しさを増しています。
これらは消費者にとっても心地よい感触です。
現在ではトランス脂肪酸はマーガリンのみならずパン製品、クッキーなどの菓子類、乾燥インスタント食品のなかにショートニングとして広く使われてきています。
トランス脂肪酸は、シス脂肪酸や飽和脂肪酸よりも血中の悪玉コレステロールを上昇させ、善玉コレステロールを低下させるという研究報告や、トランス脂肪酸と心血管疾患との因果関係についての報告がここ数年間に急増しています。
オランダでは1995年に研究者からの提案がきっかけで、業界は自主規制で製品にトランス脂肪酸含有量表示を義務づけ、またトランス脂肪酸を含むマーガリンの製造は中止されました。
ヨーロッパ共同体(EU)全体の動きも同様です。米国では、米国食品医薬品局(FDA)の指導で、たばこの有害表示と同様に、含有量表示が義務づけられ、トランス脂肪酸を含まないマーガリン製品には大々的な宣伝の包装がほどこされています。
マーガリンを取り巻く動きが活発化する中で、フィンランドでは、コレステロールを低下させるマーガリン(トランス脂肪酸を含まない)が開発されました。
松由来のシトスタノールが、消化管でのコレステロールの吸収を抑え、その結果血中コレステロールを低下させるという臨床研究から、シトスタノール入りの新しいマーガリン商品が開発され、ヨーロッパ各国で市販されています。
しかし、この添加物入りのマーガリンをアメリカで販売するにあたり、米国の食品薬品局(FDA)は食品添加物の審査に慎重で、認可までに紆余曲折が予想されます。
欧米のこのような動きに対して、北米の最新の健康と食品に関する解説書は、トランス脂肪酸入りのマーガリンに厳しい評価を下し、記述はまさに警告的です。
今までのところでは、トランス脂肪酸と心筋梗塞などの心血管系疾患に関する研究が主に報告されていますが、トランス脂肪酸とがんとの関わりが現在研究対象となっています。
乳がん発症とトランス脂肪酸のかかわりについて相反する報告があり、未だ判断できない段階です。
日本でも、現在市場に出回っているマーガリンやショートニングが真に健全な食材といえるのかどうか、学術的な再評価が待たれます。
マーガリンと心臓病
米国での大規模なハーバード看護婦協会の疫学調査報告を読むと、トランス脂肪酸入りのマーガリン使用が大変気になります。
1993年の報告によると、85000名の看護婦について調査され、マーガリンの高い消費者群は低消費者群に比して心臓病のリスクが66%も高かったとあります。
一方で、心臓病とバターの消費量との間にはわずかな相関が見られた程度です。その後トランス脂肪酸入りのマーガリンの脂肪代謝について多数の研究報告が続きます。
マーガリンと他のトランス脂肪酸は、血液中の悪玉コレステロールの低密度リポプロテイン(LDL)コレステロールを上昇させ、善玉コレステロールの高密度リポプロテイン(HDL)を下げてしまうので、心臓や血管に対してダブルに不利ということになります。
ところで、これらの脂肪酸、脂質の話は直接生物の細胞膜にかかわる大問題で、トランス脂肪酸が多くなると細胞膜の脆弱性にかかわり、細胞膜由来のアラキドン酸カスケードに影響し、炎症、抗炎症のバランスが動揺します。
そして血管内皮細胞障害、血栓形成、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞など人間の生活習慣に密接な病気にも深く関わってきます。
また、妊娠中の母親のトランス脂肪酸摂取が胎児に移行することから、世代間に関わる大きな問題でもあります。
人間に都合のよいように便利さを求めて作られてきたこうした人工産品が知らず知らずのうちに人間をじわじわ苦しめていくとは困ったことです。
牛肉には天然のトランス脂肪酸が含まれているから、食べる量を減らした方がよいことになります。
パン、ケーキ、クッキー、インスタントラーメンを食べるときは、その中のショートニングにトランス脂肪酸の含まれていることを覚えておき、トランス脂肪酸の摂取を減らすことができます。
以上のように考えてきますと、食べ物がおいしくなくなってしまいます。
大切なことは、かたよらない食事をかんがえておけばよいわけで、かたくるしくなることはありません。要は、ホドホドで、おいしければ最高ではないでしょう。
かくいう筆者もそのように日々過ごしており、食事のたびに上述のようなことを考えてもおりません。