トップページ > ドクターエンドーのガッテン講座 > 講座その(2)若さとは
若さとは
「お年のわりにお若いですね」といわれて、熟年になったどなたも悪い気がしません。
とくにご婦人にとりましては!しかしこれはうわべのことでありまして、何が「若さ」かがあらためて気になるところです。
実はひとそれぞれの「若さ」とは、「動脈年齢」といいかえることができましょう。
成長期の動脈が神様からさずかった「動脈年齢」ということができましょう。
かって理想的な最高血圧は100プラス年齢といわれましたが、これはあやまりであることがわかってきました。
どのようなお年でも、理想的な血圧は成長期の 120/80という血圧であり、これが理想的な「動脈年齢」といえるでしょう。
ですから「若さ」とは、この血圧を維持している「動脈年齢」ということになります。
「動脈年齢」とは、「動脈という管」のしなやかさといいかえることができます。
動脈のしなやかさは、血圧と中を通る血液の内容によって時々刻々変化します。
動脈は三層構造であり、内膜、中層の平滑筋層そして外膜からなります。
とくに内膜細胞と中層の平滑筋層の状態は、動脈のしなやかさの維持にとって大変重要です。
動脈が硬くなるか否かは、これらふたつの層に顕微鏡レベルの変化がおきるかどうかにかかっています。
ひとつは、脂っこいものを食べ過ぎておこる粥状硬化は内膜変化であります。
第二は、中膜平滑筋細胞が高い血圧に耐えかねて萎縮し、線維でおきかわる中膜の動脈硬化であります。
高い血糖値のブドウ糖は内膜細胞を傷つけ、その場所に炎症を起こさせるために、糖尿病では動脈硬化を起こしやすくなります。
肺から血液に吸収されたタバコは内膜細胞を傷つけて、全身の動脈内膜に炎症を起こさせえましょう。
最近の研究では、動脈硬化は炎症から起こってくることが証明されつつあります。
ブドウ糖もタバコのニコチン以外の毒性物質も、活性酸素という悪玉酸素として細胞に危害を与えることになります。
動脈の内壁では、炎症にともなう血栓形成が起こりやすくなり、中層の平滑筋層のしなやかさをおびやかします。
動脈という管の中で、細動脈という細い部分が血圧の調節に重要な場所であり、いいかえますと細動脈が高血圧で一番やられやすい場所といえましょう。
ここの部分の調節異常が、前回講座でふれました最低血圧の上昇に反映されます。
細動脈は、ストレスのときに反応するような交感神経によって調節されており、リラックスさせるように調節されてはいません。
したがって細動脈は常に緊張する傾向がありますので、高血圧の治療の標的のひとつは細動脈のリラックスをいかにするかということになります。
この方面の画期的な薬は、カルシウム拮抗剤といわれているもので、これは正式にはカルシウムチャンネル拮抗剤であります。
平滑筋にはカルシウム チャンネルのはたらきで収縮します。薬でカルシウム チャンネルの働きをストップさせると、平滑筋の収縮がゆるみ、細動脈が拡張して血圧が下がることが期待されます。
したがって、「若さ」を保つということは、動脈年齢の若さを保つことであり、ほどほどのカロリー、低脂肪、塩分少なめの食事、理想的な血圧の維持、悪いストレスを避けることなど、現代人にとってあたりまえに近い結論となるわけです。
ここで強調しておきたいことは、動脈が硬くなってもある程度あともどりできるということです。
「わたしは長いこと高血圧だったから、動脈硬化はあともどりできるわけない」とあきらめないことです。
硬くなった動脈でも、時々刻々物の出し入れがおきているわけで、動脈の壁を形作っている物質はゆっくりゆっくり置きかわっているはずですから。
「若さとは」 補遺
「若さ」を考えるうえで、見すごせない注目すべき現象があります。それは「男女の平均寿命の差」です。
寿命をきめているものは何かということはいまだにわかっておりません。
動物の種ごとに寿命限界というものがあり、とんでもない長寿ということはありえません。
長寿遺伝子をさがしもとめている研究者がいるようですが、いまだにこれといったきめてになる遺伝子は見つかってはいません。人間の寿命限界は125歳といわれています。
説得力のある説として、悪玉酸素の処理能力が、寿命をきめているというものです。
日本人では最新の男女平均寿命差は約7歳です。
世界的には男女の平均寿命差は20世紀初頭では約2歳でありました。
抗生物質が普及する前は、女性は分娩にともなう感染症死が平均寿命を低くしていたと考えます。
その後、男女の平均寿命差は徐々に広がっていきます。
男女の生活習慣上の大きな差異は、喫煙率差、飲酒歴差、性ホルモン差、食事内容差、社会生活上のストレス差ではないかと考えます。
宗教上の戒律で喫煙、飲酒を禁じている集団での調査では、男女の平均寿命の差は狭まります。
したがって、とくに喫煙は寿命に及ぼす影響は大きいものと判断されます。
それでも女性の平均寿命は男性に比して長く、性ホルモンの作用差の重要性も考慮すべきでしょう。