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アディクションとは?

アディクション(嗜癖)とは、簡単に言うと「止めよう止めようと思いながらも止めることのできない悪い習慣に耽ってしまうこと」です。
最近の傾向として、病的賭博摂食障害処方薬や市販薬への依存アルコール問題人格障害の併存など、嗜癖問題の多様化や複雑化が多く認められています。

この項では、アディクション(嗜癖)とはどういったものなのかを簡単に説明していきます。

アディクション(嗜癖)の分類
物質嗜癖
アルコール、各種薬物、有機溶剤、砂糖、ニコチン など
行為嗜癖(プロセス嗜癖)
病的賭博、摂食障害、買い物依存、窃盗、放火 など
関係嗜癖
共依存、恋愛依存、セックス依存 など
ICD-10における嗜癖の位置づけ

ICD-10とは、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)の第10版のことで、1990年の第43回世界保健総会で採択されました。
ICD-10は、死因や疾病の統計などに関する情報の国際的な比較や、医療機関における診療記録の管理などに広く活用されています。

アディクション(嗜癖)をこのICD-10に照らし合わせると、下記のような位置づけになります。

F1:精神作用物質による精神および行動の障害
アルコールやその他の物質嗜癖
F5:生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
摂食障害
F6:成人のパーソナリティーおよび行動の障害
病的賭博、病的放火、病的窃盗、抜毛症 など

※関係嗜癖はICD-10において取り上げられていません。

DSM-IVにおける嗜癖の位置づけ

DSM-IVとは、精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)のことで、アメリカ精神医学会が定めた精神科医が患者の精神医学的問題を診断する際の指針を示したものの第4版のことをいいます。
DSM-IVは、精神医学の方面で革命的なアプローチをもたらしたものとして知られていて、DSM-IVにより診断基準が明確になり、今まで医師の主観的な傾向にあった精神疾患の判断に対して客観的な判断を下せるようになったと言われています。

アディクション(嗜癖)をこのDSM-IVに照らし合わせると、下記のような位置づけになります。

4:物質関連障害
物質使用障害と物質誘発性障害
12:摂食障害
14:他のどこにも分類されない衝動行動制御の障害
窃盗癖、放火癖、病的賭博、抜毛症 など

※関係嗜癖はDSM-IVにおいて取り上げられていません。

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アディクションに共通すること

アディクション(嗜癖)には様々な障害がありますが、共通して認められる行動や症状があります。

  • 慢性進行性の行動障害(適切な範囲をはるかに超えている)
  • 身近な家族や他者を巻き込む
  • 気分を劇的に変化させる作用がある
  • 背景に空虚さがある
  • 問題の否認がある
  • 再発が多い

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何を病むのか

アディクション(嗜癖)に陥ると、下記のような状況を生み出していきます。

心が病む
秘密・嘘・自己嫌悪・自己憐憫・自尊心の低下・孤立・怒り・生き甲斐を失う。
身体が病む
アルコールや薬物依存、摂食障害などで身体が病む。
家族が病む
当事者の問題に巻き込まれ、児童虐待や家庭内暴力を生じやすい。また、ストレスに関連した病気が多くなる。

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アディクション(嗜癖)を理解するためのキーワード

アディクション(嗜癖)を理解するには、いくつかのキーワードを理解する必要があります。
日常生活の中での「当たり前」と思っていることが、実はアディクション(嗜癖)を後押ししていることになり兼ねないのです。

この項では、アディクション(嗜癖)を理解するためのキーワードについて説明します。

イネイブラー(enabler)とイネイブリング(enabling)

イネイブラーとは、簡単に言うと「依存者の被害(巻き込まれや暴力など)に遭いながらも依存者を助けるつもりが、間違った支援をしてしまって、結果的に病気の進行に手を貸してしまう人」のこと。
また、イネイブリングとは、イネイブラーがとる援助行為や尻拭い行為のことを言います。

アルコール依存症の例を挙げて、具体的に説明します。
どうにかして飲酒を止めさせようと努力しているのに、結果として悪循環になっているのが分かると思います。

イネイブラーの行動 依存者の行動
依存者が引き起こした問題を処理する(謝罪・弁償など) 周囲(=イネイブラー)が解決してくれるので、いつまで経っても問題点に気付かない

飲酒を止めようとしない
飲酒を止めさせようとして、酒を隠す・捨てる・お金を持たせない・飲んでいるかどうか見張る
自分は信用されていないと思い込み、嫌な気持ちになる

不快感を消すために再飲酒してしまう
酒を止めるようにとしつこく説教する
「今度飲んだら離婚する」などと言って脅す
内心では飲酒は良くないことだと判っているので、しつこく言われると嫌な気持ちになる

不快感を消すために再飲酒してしまう

底つき体験

ハリー・ティーボウ(Harry M. Tiebout)はAAに参加している人々を観察して、彼らに共通する4つの実際驚くべき臨床的な現象を明らかにした。それらは、底つき(hitting bottom)、謙虚さ(humility)、委ねること(surrender)、自我の縮小(ego reduction)であり、ここから底つき体験の概念が生まれた。

底つき体験とは、簡単に言うと「自分自身の努力ではどうにもならなくなった」という意識が芽生えることです。自分の努力だけではにっちもさっちもいかなくなり、自分が置かれた現状に少しずつでも危機感を感じ始めると、問題に向かい合って回復していこうという意識が生まれてくるという考え方です。

しかし最近ではこの底つきを待つという考え方に代わって「動機づけ面接法」という、「否認」という抵抗にうまく付き合いながら、クライエントがこうありたいという理想と現実の考え方や行動の矛盾にやんわりと気づかさせていくという技法が主流になってきています。

否認

否認の病」と言われるほど、アディクション(嗜癖)は「自分の心が病んでいる」という意識の欠如あるいは強い否認が大きな特徴です。
否認とは、依存者が自分が何かに依存している現状を認めようとしないことです。

例えば、「誰にも迷惑をかけていないんだし、自分の好きに行動してもいいじゃないか」と周囲が勧める治療を拒否したり、自分の心を守るために、敢えて問題を直視しないようにしたりします。

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多重嗜癖と併発病

他の病気でもみられるように、アディクション(嗜癖)にも合併症のようなケースや、障害を併発するケーがあります。
大きく分けると多重嗜癖併発病に分類されます。

多重嗜癖(Cross-Addiction)

人生に対する虚無感や空虚感といった虚しさをベースにした嗜癖が2つ以上同時に存在してみたり、あるいは、AからBへ、AからCへと変化していくことはよくみられます。

例えば、アルコール依存症と薬物問題摂食障害やギャンブル依存症アルコール依存症とニコチン依存症(喫煙)などがあります。
また、酒にのめりこみ、アルコール依存症になった人が、酒からギャンブルへと対象を変えて嗜癖が続くことも良くみられます。

これらの症状を「クロス・アディクション(多重嗜癖)」と呼びます。

さらにまた、嗜癖問題は家族内にはびこることがあり、父親がアルコール依存症、母親が依存症、娘が摂食障害、息子が薬物乱用、というのは嗜癖家族において極めてよく見られるパターンです。

かつて、男の道楽として「飲む・打つ・買う」ということが言われていました。
いまでは褒められたことではないとの理解が一般的ですが、当時からクロス・アディクション(多重嗜癖)というのは存在していて、人間の生き方と関連していると考えられます。

併発病(Co-morbidity)

嗜癖と精神疾患の合併を重複障害と呼びます。
例えば、アルコールや薬物依存症とうつ病、アルコール依存症と統合失調症、アルコール依存症とパニック障害、薬物依存症、摂食障害、強迫性障害や恐怖症、嗜癖問題と人格障害や境界例などがあり、嗜癖問題を抱えた人の治療ではよく遭遇することです。

完全に回復するためには、これらに同時に対処していかないと、回復は困難です。

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嗜癖と関連する問題

児童虐待やドメスティックバイオレンス(DV)など、様々な社会問題がニュースになっていますが、これらの諸問題とアディクション(嗜癖)には、関連性があります。

関連性が高いと思われる問題として、次のものが挙げられます。

機能不全家庭 共依存、AC、児童虐待、DV

世代間連鎖

高い自殺率(アルコール依存症、薬物依存、病的賭博、摂食障害 など)

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機能不全家族(非養育的家庭 : non-nurturing family)

本来、家族とは「子どもを守り、慈しみ、肉体的にも精神的にも健康に育てる」という目的を持ち、愛情を土台とした人間同士の繋がりであるものです。
しかし何らかの理由でその繋がりの機能が正しく働かず、子どもに不安を感じさせたり、傷つけたり、健やかな成長を阻んだり、ときには子どもの命さえ危険にさらすような状態にあるとすれば、その家庭は「機能不全」を起こしていると言うことができます。

このように、本来あるべき機能を果たさず、子どもにとって養育的でないばかりか危険ですらあり、かえって子どもの心身の成長を妨げるような仕打ちをする家族のことを「機能不全家族」と呼んでいます。

機能不全家族には、次のような特徴があります。

  1. よく怒りが爆発する家族
  2. つめたい、愛のない家族
  3. 性的・身体的・精神的虐待のある家族
  4. 他人や兄弟姉妹と比較する家族
  5. あれこれ批判する家族
  6. 期待が大きすぎて、何をやっても期待に添えない家族
  7. 親が思い通りになるように支配する家族
  8. お金や仕事、学歴だけを重視する家族
  9. 他人の目だけを気にする、表面上は幸せそうな家族
  10. 親が病気がち、留守がちな家族
  11. 親と子の関係が反対になっている家族
  12. 両親の仲が悪い家族
  13. 嫁姑の仲が悪い家族
  14. 多くの秘密や隠し事がある家族
児童虐待

児童虐待の問題が深刻化して、ニュース番組でも毎日のように報道されていますが、このことは子どもを持つ親たちばかりでなく、大人や社会がしっかりと認識して、共に考えていかなければならない問題だと思います。
「児童虐待防止法」では、保護者によって行われる以下の4つの行為を「児童虐待」と定義しています。

身体的虐待
児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること。例えば、一方的に暴力を振るう、食事を与えない、冬は戸外に締め出す、部屋に閉じ込める。
性的虐待
児童に猥褻行為をすること、または児童を性的対象にさせたり、見せること。例えば、子どもへの性的暴力。自らの性器を見せたり、性交を見せ付けたり、強要する。
ネグレクト(育児放棄、監護放棄)
児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、もしくは長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。例えば、病気になっても病院に受診させない、乳幼児を暑い日差しの当たる車内への放置、食事を与えない、下着など不潔なまま放置するなど。
心理的虐待
児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。心理的外傷は、児童の健全な発育を阻害し、場合によっては心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの症状を生ぜしめるため禁じられている。例えば、言葉による暴力、一方的な恫喝、無視や拒否、自尊心を踏みにじる。
アダルト・チルドレン(AC:Adult Children of Alcoholics)

アダルトチルドレンとは、機能不全家庭で成長し、その影響を強く受け、大人になってから何らかの不全感や生きづらさを抱えている人のことです。

もともとは「Adult Children of Alcoholics(アルコール依存症の親のもとで育ち、成人した人々)」という意味で、その後アルコール依存症の親のもとで育った子どもだけでなく、機能不全家庭で育つ子どもが特徴的な行動や考えを持つとされ、現在では「Adult Children of Dysfunctional Family(子どもの成育に悪影響を与える親のもとで育ち、成長してもなお精神的影響を受けつづける人々)」という考え方が広く支持されています。

アダルト・チルドレンには、次のような特徴があります。

情緒面の特徴
見捨てられ感
良い子の自分でいないと、好きな人から嫌われてしまい、愛してもらえない(=見捨てられる)と思い込む
恐怖
むしろ相手との関係が親密になってゆく過程で出てくる問題で、表面的な関係では極度な対人緊張として感じる
怒り・痛み
怒りの感情と、その表現の仕方(伝え方)の問題
恨み・不信・寂しさ
寂しさの感情と、その感情とのつきあい方の問題
恥・罪悪感
罪悪感を持ちやすく、自罰的、自虐的である
感情鈍麻
感情の起伏がなくなる。喜怒哀楽全般にわたって、感情の表現が乏しくなる状態
思考面の特徴
黒白思考
オール・オア・ナッシングで、自分の中にいつも二者択一の選択肢しかない。灰色(中間)の選択肢もあると考えられない
生きるための情報不足
まだ起きていない悪い未来への不安に縛られてしまう。また「自分の将来に待っているのは悪い未来ばかり」としか思えない
強迫思考
自分の意思に反し、無意味で現実に関係のない考えが繰り返し頭に浮かび、その考えを払いのけようとしても、払いのけることができなくなる
優柔不断
自分の判断に自信が持てない
学習障害(読字障害など)
学習障害とは、聞き、話し、書き、推理する能力、算数の能力を取得したりするのが著しく困難な、さまざまな問題群の呼び名である。そのような問題は、生まれつきの中枢神経の働きの障害によるものと考えられる。学習障害は、他のハンディキャップ(たとえば、感覚の障害、精神遅滞、社会性や情緒の障害など)や不適切な環境(文化的な違い、望ましくない教育など)からも生じるが、そのようなハンディキャップや環境から直接生じるものではない。(1981年 学習障害に関する連邦合同委員会報告)
思考の混乱
警戒心過剰
自分の周囲で起こっていることに敏感で警戒心が過剰になってしまう
身体面の特徴
肩こり
腰痛
性機能障害(性的虐待との関連など)
胃腸障害
ストレス関連障害
アレルギー
行動面の特徴
危機志向的な生き方
例えば、アルコール問題家族では次から次へと危機が襲ってくるため、そういう生活に慣れてしまい、日常的に危機が起こることを想定して生きていく
操作的振る舞い
人・物事・仕事・状況など、支配したがる
親密性の問題
他者との関係が、くっつき過ぎか離れ過ぎかのどちらかになってしまい、適度な距離感が実感できず、維持出来ない
生真面目
親と一緒に楽しく遊んだ経験がないため、生真面目で楽しみ方を知らない
過剰適応
目立つことは身の危険に繋がると思い、自分がたまたま居合わせた集団がどんなものであろうとその集団に適応しようとする
強迫的行動
酒・薬物・食物・喫煙・人間関係・セックス・スポーツ・完璧を求めることなど
共依存

共依存とは、自分のことより他人の世話に夢中になり、他人がとるべき責任を自分がとってしまい、他人をコントロールしようとする行動のことです。
一般的に、共依存者は自己愛・自尊心が低いため、相手から依存されることに対し、無意識に存在価値を見出し共依存関係を形成することが多いがあります。

共依存の特徴
自分を卑下する(自尊心が低い)
必要とされることを必要とする
相手を管理し、変えたいという強い衝動がある
苦しむのをいとわない
DV(ドメスティック・バイオレンス)

ドメスティック・バイオレンスとは、同居関係にある配偶者や内縁関係や両親・子・兄弟・親戚などの家族から受ける家庭内暴力のことで、近年では同居の有無を問わず、元夫婦や恋人など近親者間に起こる暴力全般のことを指す場合が多くなっています。

ドメスティック・バイオレンスの特徴
身体的暴力
殴る・蹴る・突き飛ばす・髪を引っ張る・押さえつける・首を絞める・物をぶつける・物を使って殴る・物を壊す・熱湯や水をかける・煙草の火を押しつける・唾を吐きかける・部屋に閉じ込める・怪我をしているのに病院へ行かせない、などといった一方的な暴力行為
精神的暴力
無視する・友人と会わせない・終始行動を監視する・別れるなら死ぬと狂言自殺する・子どもや身内を殺すなどと脅す・ペットを虐待してみせる など、ストレスとなる行為を繰り返し行う
性的暴力
性交の強要・避妊をしない・特別な行為を強要する・異常な嫉妬をする、など一方的な行為で、近親間強姦とも呼べる。中絶賛成派は中絶をさせないこともこの中に含まれるとしている
社会的暴力
近親者を実家や友人から隔離したがる・電話や手紙をチェックする・外出を妨害する など
経済的暴力
仕事を制限する・生活費を入れない・支出した内容を細かくチェックする・家の金を持ち出す・無計画な借金を繰り返す・買い物の指図をする など
言葉による暴力
恫喝したり日常的に罵る・無能役立たずと蔑む・他人の前で欠点をあげつらう・出て行けと脅す など

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自助グループ

自助グループ(Self Help Group)とは、なんらかの困難や問題、悩みを抱えた人が同様な問題を抱えている個人や家族と共に当事者同士の自発的なつながりで結びついた集団のことで、その問題の専門家の手にグループの運営を委ねず、あくまで当事者たちが独立しているというのが特徴的です。

その役割は、このかかわりの中で自ずから問題への取り組みの姿勢や理解の仕方の上で、自己変容的な成長が期待されること、また彼らを取り巻く地域社会との関わり方、受け入れられ方にも変化が出てくることなどがあります。

当院で行っている自助グループには、次のようなものがあります。

断酒会(アルコール依存症者)

AA(アルコール依存症者)

GA(ギャンブラー)

NA(薬物依存者)

MABA(摂食障害者)

自助グループの効用

回復の希望が得られる

ネガティブな感情の軽減

自己評価のアップ

対人関係能力のアップ

問題の再確認(否認の再発を防ぐ)

しらふの維持

アディクションには定休日や治癒がないので、油断大敵です。

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アディクション(嗜癖)についてのご相談・お問い合わせ先

大悟病院 精神科

住 所 : 宮崎県北諸県郡三股町大字長田1270

電 話 : 0986-52-5800

FAX : 0986-52-5573